上 下
71 / 82

醒めない夢 71 ☑

しおりを挟む
71.
~果歩が消えた日から 22


  すごいことが起こった。

 俺はとうとう果歩を見つけた。

 18年間見つけられなかった妻を。
 碧と会えなかったのは残念だが。


 ただ果歩が俺のことを忘れてしまっている風なのが
腑に落ちない。


 あの様子を見ているとやっぱりどこかで事故に巻き込まれて
記憶喪失とか、その類で今まで帰って来なかったのでは?
 と思えて仕方ない。


 名刺交換したあの男は誰なんだ?
  疑問が次から次へと浮かび、いてもたってもいられない。

 鍋を買いに行ったのに名刺交換した後、鍋のことなんて頭の中から
吹っ飛んでしまっていた。


 家に着いてから買い忘れたことに気付いた。

 果歩は帰ってくるだろうか?
  帰って来るだろ、帰る家はここしかないのだから。


 果歩とあの溝口とかいう男と会うまでの間、俺は
グルグルそんなことばかりを考えて過ごした。



 アラフィフのひとり暮らしのやもめ生活にこれからは
妻と娘という彩りが添えられるのだという可能性が俺の心を躍らせた。


          ◇ ◇ ◇ ◇


「今の人、旦那さんだよね? 」


「元よ。今の旦那さんはあなただもん」

 
「彼に見つかって返ってよかったのかもな。

 ここではっきりと、俺たち戸籍上もちゃんとした夫婦だと知らしめた上で
縁を切ればすっきりするだろうし。

 彼にはすまないが」




「あなたにはすごく迷惑かけちゃうけど、私もそう思う。

 元夫はなかなかわかってくれないかもしれないけれど
法律上なんの問題もなく私たちはれっきとした夫婦なのだし。

 気にしないようにしてたけれど、やっぱり元夫は私の喉元に
突き刺さった小さなちいさな小骨のようなものだったのかも
しれないわ。

 これでスパッと抜けると思うとほっとするというか……」


「大丈夫さ。
 それに君とあの人が暮らした年数よりも俺たちは長い年月、夫婦なのだし」


「うん、そうよね。大丈夫よね」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初恋の終わり~私の大切なソフィア

あやむろ詩織
恋愛
「もう初恋の夢は見ない」「初恋の残滓」に続く、カレナ様視点です。 リクエストをいただき、書いてみました。 もしかしたら前作までのイメージを崩す可能性もありますので、ご注意ください。 *小説家になろう様にも投稿しております。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

処理中です...