73 / 108
72 ◇知らなかった真実
しおりを挟む
72
◇知らなかった真実
あの傷害事件から3年が過ぎた頃のある日のこと。
桃は近所のスーパーでチェッカーとして時短勤務していて、籍は抜かず
俊から毎月の婚費を振り込んでもらいつつの生活を続けている。
ちゃんと離婚して籍を抜くつもりだったのだが、別居して婚費をもらいながらの
生活に落ち着いていた。
その理由として一番に娘の奈々子の存在が大きかった。
両親からの、離婚はいつでもできるのだから別に好きな男性でも
できればその時に考えればいいという意見と、奈々子にはできれば父親は
必要だよと言われたことが大きかった。
それと実際悔しいけれど、毎月の婚費は有難かった。
時短で働けるので身体も楽だし、また何より娘との時間が多く取れることは
大きな救いだった。
この日は午後から桃が休みの日で、勤めているスーパーで買い出しをして帰り、
母親と一緒に晩御飯の準備をしていた時のこと。
「ねぇ、桃ぉ~、毎月婚費がいただけて有難いよね」
「うん、そう……だね」
「そろそろ、俊くんとやり直してみてもいいんじゃない?
めちゃくちゃいい人じゃない。
自分を許しもしないあんたにさぁ、毎月きちんきちんとそれなりの額を
振り込んでくれて。
まぁ、自身の娘の為でもあるとは思うけど。
浮気してもこれっぽっちも反省しないヤツとか、別居してても婚費出さない人の方が
多いって聞くもの」
「何言っちゃってるの、止めてよそういうの」
「俊くんはちゃんと反省もしてるし、誠意も見せてくれてるじゃないの。
あの時のことだってあんたの思い過ごしで、俊くんは恵子に嫌々呼び出されて
会ってただけなのにあんたに刺されちゃって。
でも悪いのは元々自分だからって訴えなくて、あんたは刑事罰免れてるじゃない。
いくら桃が錯乱状態で精神不安定だったからって、訴えられてたら
ややこしいことになってたかもしれないんだよ?
十分桃は俊くんに大事にされてると思うわよ。
そろそろ考え直したほうがいいんじゃないのかなぁ~」
◇知らなかった真実
あの傷害事件から3年が過ぎた頃のある日のこと。
桃は近所のスーパーでチェッカーとして時短勤務していて、籍は抜かず
俊から毎月の婚費を振り込んでもらいつつの生活を続けている。
ちゃんと離婚して籍を抜くつもりだったのだが、別居して婚費をもらいながらの
生活に落ち着いていた。
その理由として一番に娘の奈々子の存在が大きかった。
両親からの、離婚はいつでもできるのだから別に好きな男性でも
できればその時に考えればいいという意見と、奈々子にはできれば父親は
必要だよと言われたことが大きかった。
それと実際悔しいけれど、毎月の婚費は有難かった。
時短で働けるので身体も楽だし、また何より娘との時間が多く取れることは
大きな救いだった。
この日は午後から桃が休みの日で、勤めているスーパーで買い出しをして帰り、
母親と一緒に晩御飯の準備をしていた時のこと。
「ねぇ、桃ぉ~、毎月婚費がいただけて有難いよね」
「うん、そう……だね」
「そろそろ、俊くんとやり直してみてもいいんじゃない?
めちゃくちゃいい人じゃない。
自分を許しもしないあんたにさぁ、毎月きちんきちんとそれなりの額を
振り込んでくれて。
まぁ、自身の娘の為でもあるとは思うけど。
浮気してもこれっぽっちも反省しないヤツとか、別居してても婚費出さない人の方が
多いって聞くもの」
「何言っちゃってるの、止めてよそういうの」
「俊くんはちゃんと反省もしてるし、誠意も見せてくれてるじゃないの。
あの時のことだってあんたの思い過ごしで、俊くんは恵子に嫌々呼び出されて
会ってただけなのにあんたに刺されちゃって。
でも悪いのは元々自分だからって訴えなくて、あんたは刑事罰免れてるじゃない。
いくら桃が錯乱状態で精神不安定だったからって、訴えられてたら
ややこしいことになってたかもしれないんだよ?
十分桃は俊くんに大事にされてると思うわよ。
そろそろ考え直したほうがいいんじゃないのかなぁ~」
10
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる