桜の華 ― *艶やかに舞う* ―

設樂理沙

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72 ◇知らなかった真実

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  ◇知らなかった真実

あの傷害事件から3年が過ぎた頃のある日のこと。


桃は近所のスーパーでチェッカーとして時短勤務していて、籍は抜かず
俊から毎月の婚費を振り込んでもらいつつの生活を続けている。


ちゃんと離婚して籍を抜くつもりだったのだが、別居して婚費をもらいながらの
生活に落ち着いていた。

その理由として一番に娘の奈々子の存在が大きかった。


両親からの、離婚はいつでもできるのだから別に好きな男性ひとでも
できればその時に考えればいいという意見と、奈々子にはできれば父親は
必要だよと言われたことが大きかった。


それと実際悔しいけれど、毎月の婚費は有難かった。

時短で働けるので身体も楽だし、また何より娘との時間が多く取れることは
大きな救いだった。

  この日は午後から桃が休みの日で、勤めているスーパーで買い出しをして帰り、
母親と一緒に晩御飯の準備をしていた時のこと。


「ねぇ、桃ぉ~、毎月婚費がいただけて有難いよね」

「うん、そう……だね」

「そろそろ、俊くんとやり直してみてもいいんじゃない? 
めちゃくちゃいい人じゃない。
自分を許しもしないあんたにさぁ、毎月きちんきちんとそれなりの額を
振り込んでくれて。

まぁ、自身の娘の為でもあるとは思うけど。
浮気してもこれっぽっちも反省しないヤツとか、別居してても婚費出さない人の方が
多いって聞くもの」


「何言っちゃってるの、止めてよそういうの」

「俊くんはちゃんと反省もしてるし、誠意も見せてくれてるじゃないの。
あの時のことだってあんたの思い過ごしで、俊くんは恵子に嫌々呼び出されて
会ってただけなのにあんたに刺されちゃって。

でも悪いのは元々自分だからって訴えなくて、あんたは刑事罰免れてるじゃない。

いくら桃が錯乱状態で精神不安定だったからって、訴えられてたら
ややこしいことになってたかもしれないんだよ? 
十分桃は俊くんに大事にされてると思うわよ。

そろそろ考え直したほうがいいんじゃないのかなぁ~」
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