48 / 74
47
しおりを挟む
47
別にあの時の場面を見られていたからといって焦る必要はないのだが、
桃は夫の言葉に戸惑いを隠せなかった。
それは夫が現場を見ていないと言い出せない内容だったからだ。
仕事を終えた後のことだから、窓側の厚めの遮光カーテンは植木たちが
開けていたのかもしれない。
いつもは生徒たちと同じように割合すぐに教室から退室するので
気にしたことがなく、当日は植木に意識がいっていたこともあり
記憶が曖昧なのだ。
でも……レースのカーテンは閉まっているはずなので、中の様子が
見えるだろうかなどと、そこが気になってしようがなかった。
けれど何度夫の言葉を検証してみてもやはり、キスしているところを
見られていたということなんだろうと思うしかなかった。
考えがそこに落ち着いたので、どんなふうな言葉を夫に返そうかと考えていると、
何か言葉を掛ける前に彼の方からのリアクションが先にあった。
椅子から離れ突っ立っている私の両肩に手をかけ、
「桃、頼むからあそこを辞めてくれないか。頼むよ~」
そう泣いて縋りながら夫が私に辞めてほしいと懇願してきたので、ほんと、
私ビックリ仰天しましたとも。
『泣いてるぅ~、泣くんだ~あーいやぁ~、どうしようかなぁ~』
ひとまずヨシヨシして、この話を穏便にすませたほうがいっか、なんて
思っていたのに……なのに私ったら。
「いいよ、辞めたげる」
「桃、ありがと。
俺、浮気のことはちゃんと反省してるから」
別にあの時の場面を見られていたからといって焦る必要はないのだが、
桃は夫の言葉に戸惑いを隠せなかった。
それは夫が現場を見ていないと言い出せない内容だったからだ。
仕事を終えた後のことだから、窓側の厚めの遮光カーテンは植木たちが
開けていたのかもしれない。
いつもは生徒たちと同じように割合すぐに教室から退室するので
気にしたことがなく、当日は植木に意識がいっていたこともあり
記憶が曖昧なのだ。
でも……レースのカーテンは閉まっているはずなので、中の様子が
見えるだろうかなどと、そこが気になってしようがなかった。
けれど何度夫の言葉を検証してみてもやはり、キスしているところを
見られていたということなんだろうと思うしかなかった。
考えがそこに落ち着いたので、どんなふうな言葉を夫に返そうかと考えていると、
何か言葉を掛ける前に彼の方からのリアクションが先にあった。
椅子から離れ突っ立っている私の両肩に手をかけ、
「桃、頼むからあそこを辞めてくれないか。頼むよ~」
そう泣いて縋りながら夫が私に辞めてほしいと懇願してきたので、ほんと、
私ビックリ仰天しましたとも。
『泣いてるぅ~、泣くんだ~あーいやぁ~、どうしようかなぁ~』
ひとまずヨシヨシして、この話を穏便にすませたほうがいっか、なんて
思っていたのに……なのに私ったら。
「いいよ、辞めたげる」
「桃、ありがと。
俺、浮気のことはちゃんと反省してるから」
3
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
Husband's secret (夫の秘密)
設樂理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
夫のカノジョ / 垣谷 美雨 さま(著) を読んで
Another Storyを考えてみました。
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
『 ゆりかご 』
設樂理沙
ライト文芸
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作
『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと -
設樂理沙
ライト文芸
♡~好きになった人はクールビューティーなお医者様~♡
やさしくなくて、そっけなくて。なのに時々やさしくて♡
――――― まただ、胸が締め付けられるような・・
そうか、この気持ちは恋しいってことなんだ ―――――
ヤブ医者で不愛想なアイッは年下のクールビューティー。
絶対仲良くなんてなれないって思っていたのに、
遠く遠く、限りなく遠い人だったのに、
わたしにだけ意地悪で・・なのに、
気がつけば、一番近くにいたYO。
幸せあふれる瞬間・・いつもそばで感じていたい
◇ ◇ ◇ ◇
💛画像はAI生成画像 自作
女騎士と文官男子は婚約して10年の月日が流れた
宮野 楓
恋愛
幼馴染のエリック・リウェンとの婚約が家同士に整えられて早10年。 リサは25の誕生日である日に誕生日プレゼントも届かず、婚約に終わりを告げる事決める。 だがエリックはリサの事を……
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
『プロポーズされてません♡』 12月19日頃よりしばらくの間非公開とさせていただきます。
設樂理沙
恋愛
2024.1.25 再開いたしました。
『プロポーズされてません♡』に←表題変更『Broken Heart & Passing』
もしかして、もうあいつにプロポーズされました? 好きな人からそう訊かれた。
ここでどうしてそんな話になるのかさっぱり??
☆.。.:* この恋は、果たして成就するのだろうか? 焦れ焦れ恋のお話?.。.:*☆
互いに思い合っている同僚同志の焦れ焦れな恋のお話。
♥*❦ イラスト-はAI生成画像 自作♡*♥
2023.6.10 加筆修正済
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる