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13 ◇家族会議
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◇家族会議
残念なことに翌日は金曜だったため、一日我慢をし、翌々日の土曜に
両家の親たちに招集をかけた。
集合場所は比較的広い家の桃の実家になった。
俊には予め義両親にどういう理由で来てもらうのかということを
説明してもらい、桃は桃で簡単に母親にあらましを伝えておいた。
父親には母親が伝えてくれるだろうと敢えてわざわざ父親にまでは
直接話はしなかった。
その時、母親には離婚するつもりであることは仄めかしてあった。
自分の両親は勿論のこと、俊の両親、特に女親である義母は自分の味方を
してくれるのではと考えていた。それなのに……。
確かに義母は息子である俊の非を認めはしたけれど、私の意志を
尊重してくれることはなかった。
-
私が問い詰めた時も俊は私にすまないと謝罪してきたけれど、両家の人たちが
集ったところでも『誘惑に負けた弱い自分が悪いんです。
本当に桃さんには申し訳ないことをしました。
桃、そして桃のご両親、どうか私を許してください』
と、謝罪して見せた。
そして……
『今桃は僕のことを許せないと思うだろうけど、これからの自分を
見てほしいと思ってる。
桃や奈々子を大切にしていくから離婚なんて言わないでこれからも
一緒にいてほしい』
と私に向けて言った俊の言い分に、その場にいた者たちは皆、賛同したのだ。
あぁ、なんということ!
私は援護射撃してほしくて母親の方を見た。
「桃、あなたの気持ちも分かるけど奈々子もいるし、何より俊くんは
ただの過ちだったと言ってるし、恵子さんとは切れていて今は桃だけを
見てくれているでしょ?
これがね、例えば俊くんが恵子さんと一緒になるとか、隠れて付き合いが
続いているっていうのならお母さんも離婚に反対しない。
でも違うでしょ?
俊くんは謝ってるのだし、桃と一緒にいたいって言ってくれてるんだから、
お母さんも離婚には反対だわ」
お父さんの顔を見た。
私から視線を逸らした。……ということはお母さんと同意なんだ。
私ったらすっかり肉親に背中を撃たれたのだ。
娘の一大事に背中を平気で撃つような真似をするんだ。
失望が襲う。誰も彼もが私に辛抱をしろと言う。
子供や夫のために家庭を壊してはいけないと言う。
母に抱かれていた奈々子が俊の膝に乗ろうとした瞬間、私の中の鬼が
火を吹いた。
「やめて!
恵子の身体に触れたその薄汚れた汚らしい手で娘に触らないで、お願い……」
桃が憤怒の形相で自分にピシャリと言い放ったものだから俊は差し出した手を
どうしていいか分からず娘に触れることなく、弱弱しく
「奈々ちゃん、おばあちゃんのところへ行ってね」
というのがやっとだった。
そこにいた誰もが、何も言えず気まずい空気だけが流れた。
桃は泣いていた。
こんなに惨めな思いをするなんて、今日という日もこんな目に合わせた
俊のことも薄情な実両親のことも、桃は酷く憎んだ。
◇家族会議
残念なことに翌日は金曜だったため、一日我慢をし、翌々日の土曜に
両家の親たちに招集をかけた。
集合場所は比較的広い家の桃の実家になった。
俊には予め義両親にどういう理由で来てもらうのかということを
説明してもらい、桃は桃で簡単に母親にあらましを伝えておいた。
父親には母親が伝えてくれるだろうと敢えてわざわざ父親にまでは
直接話はしなかった。
その時、母親には離婚するつもりであることは仄めかしてあった。
自分の両親は勿論のこと、俊の両親、特に女親である義母は自分の味方を
してくれるのではと考えていた。それなのに……。
確かに義母は息子である俊の非を認めはしたけれど、私の意志を
尊重してくれることはなかった。
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私が問い詰めた時も俊は私にすまないと謝罪してきたけれど、両家の人たちが
集ったところでも『誘惑に負けた弱い自分が悪いんです。
本当に桃さんには申し訳ないことをしました。
桃、そして桃のご両親、どうか私を許してください』
と、謝罪して見せた。
そして……
『今桃は僕のことを許せないと思うだろうけど、これからの自分を
見てほしいと思ってる。
桃や奈々子を大切にしていくから離婚なんて言わないでこれからも
一緒にいてほしい』
と私に向けて言った俊の言い分に、その場にいた者たちは皆、賛同したのだ。
あぁ、なんということ!
私は援護射撃してほしくて母親の方を見た。
「桃、あなたの気持ちも分かるけど奈々子もいるし、何より俊くんは
ただの過ちだったと言ってるし、恵子さんとは切れていて今は桃だけを
見てくれているでしょ?
これがね、例えば俊くんが恵子さんと一緒になるとか、隠れて付き合いが
続いているっていうのならお母さんも離婚に反対しない。
でも違うでしょ?
俊くんは謝ってるのだし、桃と一緒にいたいって言ってくれてるんだから、
お母さんも離婚には反対だわ」
お父さんの顔を見た。
私から視線を逸らした。……ということはお母さんと同意なんだ。
私ったらすっかり肉親に背中を撃たれたのだ。
娘の一大事に背中を平気で撃つような真似をするんだ。
失望が襲う。誰も彼もが私に辛抱をしろと言う。
子供や夫のために家庭を壊してはいけないと言う。
母に抱かれていた奈々子が俊の膝に乗ろうとした瞬間、私の中の鬼が
火を吹いた。
「やめて!
恵子の身体に触れたその薄汚れた汚らしい手で娘に触らないで、お願い……」
桃が憤怒の形相で自分にピシャリと言い放ったものだから俊は差し出した手を
どうしていいか分からず娘に触れることなく、弱弱しく
「奈々ちゃん、おばあちゃんのところへ行ってね」
というのがやっとだった。
そこにいた誰もが、何も言えず気まずい空気だけが流れた。
桃は泣いていた。
こんなに惨めな思いをするなんて、今日という日もこんな目に合わせた
俊のことも薄情な実両親のことも、桃は酷く憎んだ。
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