桜の華 ― *艶やかに舞う* ―

設樂理沙

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5.       

◇ 幸せな結婚生活

4年前に、滝谷桃は想いを実らせた相手水野俊と結婚をし、その2年後には
娘にも恵まれ順風満帆で幸せな暮らしを謳歌していた。

ちょうど娘が1才になったばかりの頃、孫の顔見たさに遊びに来ていた
母親に娘を預けて桃は駅前に出掛けた。桃の実家はすぐ近所だ。




          ◇ ◇ ◇ ◇


平日に身ひとつで出掛けるのは久しぶりのことだった。
『お母さんも来てくれてるし、買い物帰りはショートケーキでも
買って帰ろうかなっ』

 そんなことを思いながら駅近くに居並ぶ店をプラプラと歩いていた時の
ことだった。



「桃、ひさしぶり~」と声を掛けられた。


「ひゃあ~、おひさー」

「なんとなく噂で聞いてたけど、子供産まれたんだって?」

「うんっ、そうなの」

「今何か月?」

「それがもう1才よぉ」

「子供の成長は早いね」

「「特に他所の子は……はははっ」」

「でも、桃はえらいね。ちゃんと元の体形に戻してるじゃない」

「旦那様に嫌われたくないからね」

「ごちそうさまぁ~。いつまでもお熱いことで」

気さくに声を掛けてくれたのは結婚式にも出てくれた私と同じく地元に暮らす
高校時代の同級性だった。


浅木舞とは久しぶりだった為、お互い懐かしく近況などを語り合った。

長引きそうな話に、往来の激しい場所から少し逸れて私と舞は書店の
前付近に移動した。

そのまま続けて日常のことなどを話していたのだが、途中で舞から
思い出したかのように別の話題が出た。


「あのね、今桃が切迫流産で入院してた時の話を聞いて思い出したんだけどさぁ。
ちょっと待ってよ。えーっとあれっていつ頃だっけ……。

桃、奈々子ちゃん産んだの4月って言ったよね。
え~っと私ね、二人を見かけたのよ。

10月じゃなかったかな、確か」




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