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190 番外編🍌瑤視点 [72と73の間]

 [七夕の夜]



 可愛い苺佳の寝顔を前に、つい願いが口について出てくるのを
止められない。



 マシュマロのような唇《くちびる》いつもプルンプルンしていて
可愛い・・苺佳。



 『いつか私のものにならないかなぁ~。
 いつか私のものになればいいのに』




 産まれて初めて自分のものにならないかと思えた人は男《ひと》の
ものだった。

 出会った時にはすでに人妻だなんてなんという反則技なんじゃ。




 背中の後ろでこちらを向いていて、ものすごい近くにいる苺佳には
聞こえないよう、小さく諦念のため息を吐いた。


 
 そして翌日になると昨日妻子を送って来た英介のことと、お泊りの時の
苺佳の可愛い顔を思い出し、瑤はムクムクと嫉妬と意趣遺恨の感情が
渦巻くのであった。





          ◇ ◇ ◇ ◇





[七夕の翌日の言動]



 今日の自分の取った行動に一番驚いているのは自分かもしれない。



 苺佳が荷物を持たせた旦那に送られてきた様子を見て、仲睦まじさを
見せつけられたような気がして嫉妬心に火が付いてしまった。




 ――――― 苺佳を好きになる気持ちを止められず、言い寄ってくる

3人組の母親たちと親し気に振舞って苺佳に見せつけるという意地悪を

してしまった。いろんな人と交流を持つことはいいことなんだからと、

嫉妬心を原動力にして好きな子に意地悪をするという・・

瑤は完全に幼稚園児脳でおバカになりさがってしまう。



 それほどこの時の瑤は苺佳のことが好き過ぎてどうしようもなかったのである。――――





 
バカだな自分。旦那相手に何かするならともかく、好いている苺佳に
意地悪をしかけるなんてな、間抜け。


 これくらいなら・・ちょっとしたこと・・って思いつつも、席に戻ったら
言い訳くらいはして、そのついでに『一人にしてごめん』って言うつもり
だったのに。

 口から出たのは『女が3人も寄ると姦しいわ』だよ。

 怒ってる風ではなかったけど、心なしか苺佳の反応がそっけなかったな。
 ろくすっぽ話もしないで片付けに席を離れてしまったし、あれから今日は
ほとんど会話してない。

 比奈のこともまかせっきりで。しみじみ、自分の至らなさを実感する。


 友だち、仲良しさん、恋人にはなれない自分と苺佳の関係性。


 誰にも興味を持てなかった自分が、振り向かせたくて自分を意識して
もらいたくてガラにもなく意地悪までした相手に出会えたことに感謝だな、
と思う。

          ◇ ◇ ◇ ◇

 たとえ、自分だけのものにならなくとも。


 


 




 

 
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