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◇大切な人


「苺佳、覚えといて。私が苺佳のことを大切に思ってるっていうこと」

「うん、記憶喪失になったって忘れないよ」


「「あっ!」」


「私ったら・・」


「それはちょっと無理があるよね」



「そ、それくらい忘れずに覚えておきますっていう強い気持ちが
あるっていうことで」

思わずしどろもどろ言い訳した私・・に。



「分かってる」の言葉をくれた瑤ちゃん。




 私たちはこの後もぷちLOVEな会話をしばらく続け、やっぱり
瑤ちゃんはトイレへと向かった。




 戻って来た瑤ちゃんに汗してるだろうから身体拭こうかって訊いたら

シャワーするよってことで、シャワーを浴びて着替えた瑤ちゃんは、

体力使ってまだいっぱいいっぱいだから食事は一度寝てからにすると言い、

すぐに寝てしまった。





 ごめんね、瑤ちゃん。
 私を慰めるのに余計な体力使わせちゃったんだよね。





 申し訳ないと思いつつ、ベッドの側にコンパクトなミニスモールテーブルが
付いているのでそこにスプーンだけ追加して口に入れられるものを
並べておいて私も自分用に買ってきてたサンドイッチと紙パックの
コーヒー牛乳をお腹に入れてからシャワーを浴びた。





 それから瑤ちゃんと同じ部屋で瑤ちゃんのベッドに対してL字型に
寝袋を敷いて私も横になった。



 さきほどの余韻にしばらく浸っていたくて、私は天井を眺めた。


 優しい人に包み込まれ、泣きたいほどうれしくなった。



 泣きそうな状況を幸せあふれる瞬間に変えてくれたかけがえのない人。

 私は瞼を閉じて、瑤ちゃんに相応しい人間になろうって想いを込めた。



          ◇ ◇ ◇ ◇


 そして私は自分にあることを確認した。



『瑤ちゃんが男の人だったらもっと良かった?』
 答えはどちらでもいい、だった。


 今現実に側にいてくれる瑤ちゃんが、人としての瑤ちゃんが好きだから。



 私は生まれてはじめて性別を越えて人を好きになれたことにある意味、
最高に感動していた。



 女性が男性ではなく女性しか好きになれないっていうのとは、少し
違う気がする。


 それを否定するわけではないけれど、自分の場合は違うような気が
するのだ。



 私の場合は女性が好きなのではなくて瑤ちゃんだから好きなのだ。



 なんていうんだろう、異性を好きにならないといけないとか
同性しか好きにならないとか、いろいろあると思うけどシンプルが
一番じゃないのかな。


 好きになった人が異性でした。
 好きになった人が同性でした。



 恋愛は自由だよ。好きになるのに理由なんかないのよ。


 だって『恋は落ちるもの』っていうでしょ。



 しかし、私と瑤ちゃんの出会いって考えてみればみるほど不思議だよね。



 微塵も好きになれる要素なかった? のに。



 睡魔に襲われ夢の世界に入ろうとした直後
そんなことを頭に浮かべながら、私は眠りについた。




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