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 裁判をするとまでは言われていない。
 これはもう相殺にしてもらえるだけでも有難いと思わなければいけないな。



「社長、申し訳ありません。ご指示の通り退職致します。
改めて後日お詫びに参ります」



「折角だが、娘はもう君とは会わずに別れたいと希望しているので、
このまま何もせず退職してください。



 娘の父親として私も思うところはあるが、君を非難することは
娘の望むところではないのでね、この場をもって私も君と言葉を交わすのは
最後にしたいと思う」



「・・・」
 
          ◇ ◇ ◇ ◇




 古家氏と村元さんが退室した後で残された俺たち3人は・・。

「お父さん、この度のことはすみません」



「英介、何故なんだ。
愚息の俊介が古家さんに泥を塗った時、お前が代わりに古家に
入ってくれると言ってくれて本当に私はうれしかった。




 だけど今頃になって、家業が潰れるかどうかのここ一番の瀬戸際で
よもやお前に梯子を外されるとはな」



「お父さん、何とか古家さんに謝って合併してもらえるよう
お願いしてみては?」



 
「恵介、もう私たちにはそんなチャンスはないよ。


 私たちが、私の息子たちが揃いも揃って古家さんと苺佳ちゃんに
2度も道理に反することをしてきたんだ。


 私たちはあの人達を2度にわたり侮辱したのだよ。


 もう一度お願いするということは3度目の侮辱そのものだよ。



 英介、私はね、利発なお前のことだから古家の家に養子に入るということが
どういうことなのか、判ってのことだと思ってたんだが、ま、残念だ」


 
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