上 下
155 / 194

155

しおりを挟む
155



「よさないか、美佐江」


「でもあなた、離婚だなんて眞奈もいるっていうのに」



「そっか、美佐江の発言を聞いて安心したよ。
心の広い女性だということがわかったからね」



「実は私も英介くんと同じようなことが昔あったんだ。
私はバレるようなへまはしなかったがね。



 でもずっと良心の呵責があってね、ちょうどよかった。


 美佐江に知れたら絶対許してもらえないと思ってたから、まぁあれだ、
便乗した形になったけど告白できてすっきりしたよ」




 父親の昔の浮気の告白を聞いてた母親の顔が先ほどまで目を潤ませて

ウルウルしていたのが嘘のように般若の形相で身体をブルブル震わせて

椅子から立ち上がり、父を睨みつけている。





 そしてそんな母に反して穏やかで何の疚しさも持たない風情の父親が
問いかけた。



「どうしてそんなに怖い顔をしているのだ? とうの昔のことじゃないか。
それにたった今、苺佳には許してやれと言ってたじゃないか」



「それとこれとは違います。実家に帰らせていただきます」



「困ったもんだ。言ってることが無茶苦茶だ。

美佐江、お前が言ってることはだね、自分が同じ立場なら許せないと言い、
その一方で同じように辛い思いをしている娘の苺佳には許してやれという
わけだ。


 おかしいじゃないか、そうは思わないか。辛いのは苺佳だって同じだよ。

 苺佳だって実家へ帰って来たいはずだ。

 何故母親のお前がそう言ってやらない。

英介くんに肩入れし過ぎだ、全く」




「あなたと英介くんじゃ訳が違うわよ」


しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

裏切りの扉

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:170pt お気に入り:16

愛の交差

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:5

傍観者

現代文学 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:3

やらかし婚約者様の引き取り先

恋愛 / 完結 24h.ポイント:31,624pt お気に入り:306

不倫愛-星空の下で

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:0

処理中です...