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『こんばんは。
 もし週末予定がなければ子供たちを連れて近場の公園でも行かない?』


『ヤッター』嬉し過ぎてつい言葉が口をついて出てしまった。


 比奈も絶対喜ぶだろうな。



 瑤ちゃんが『土、日どっちでもいいよ』と言ってくれたんだけど、
月曜から仕事のある彼女のことを考えて土曜日に会うことにした。


 現地集合、各々お弁当持参で10時に集合ってことで。



 翌日保育園へ行く前に眞奈に話したらものすごく喜んじゃって、
園に着くまではしゃいでた。


 何着て行こうかな、お弁当はどんなのにしようか。
 いろいろと考えるのも楽しくて土曜が楽しみだ。


          ◇ ◇ ◇ ◇


 不思議なもので同じようなことが2度起きた。


 最近めったに会えないでいた瑤ちゃんに会いたくなかったから
ちょうどいいや、と思った日に会ってしまったり、いつもなら週末は
忙しくて家族サービスしない英介さんから珍しく『久しぶりに眞奈を連れて
水族館でも行ってみない?』と誘われたり。



 どうして他の予定が入った時に限ってそんなことになるのだろう。

 ちょっと、人生の? 人間の? 不思議を物思うっていう感じ? に
なっちゃった。



 21時過ぎに帰って来た夫が、まだ起きていた眞奈に訊いた。

「眞奈、明日水族館行くか? イルカ見に」

 眞奈が一度私のほうを見てすぐに返事した。

 迷いの一切ない声音で淀みなく答えた。

「明日は保育園の友達と公園で遊ぶ約束してるから、ごめんなさい」

「えっ? そうなのか、苺佳」

「うん、9時過ぎには家を出るかな。眞奈のお友達のお母さん、
お仕事してる人だから日曜に変更してもらうのはちょっと難しいかな」


 ほんとは瑤ちゃん、どっちでもいいって言ってくれたんだけど。

 瑤ちゃん優先でいくわー。

 もう今までのように英介さんを一番に考えて優先したりしないよ。

 私は『だから、日曜に行きましょうか?』とは提案しなかった。



「そっか、先約があるならしようがないな」



 そう言って英介さんも翌日に行くという話はしてこなかったので、
水族館行きの話はそこで立ち消えになった。



 おまけに眞奈も水族館に行きたいとは言わなかった。



 あまりにも長期間娘と関わることのなかった父親の末路が
見えたような気がした。

 娘は私のように夫の裏切りを知っているわけではなく、嫌う理由は
ないはずだけど、甘えられる対象から少しずつ少しずつ外されて
いるのかもしれない。



 そう心の距離が離れていってるのかもしれない。


 同じ屋根の下に住んでいてもほとんど会話もなきゃ必然的に
そうなるよね。



          ◇ ◇ ◇ ◇


 現に英介さん自身、私や娘に関心が全く向いてなかったのだし。



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