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 ◇瑤

 比奈ちゃんの預かりをしなくなってからほとんどと言っていいくらい
瑤ちゃんの姿を見かけなくなったのに、会いたくない時に限って会うんだな、
これが。


 保育園へお迎えに行って眞奈と手を繋いで門の前まで来た時に、苺佳は
入って来る瑤と鉢合わせしてしまった。

 苺佳は無言で通り過ぎた。


「苺佳、どうした?」
苺佳は少しだけ振り向き、首を横に振った。

「苺佳、駐車場で待ってて、すぐ追いかけるから」
一応は立ち止まり瑤の呼びかけは聞いたけれど返事は返さずに
ズンズン歩き出す苺佳。


 駐車場に着きドアを開けようとすると
「ね、苺佳ちゃん瑤ちゃんが待っててって言ってたよ」
そう言って眞奈が私の行動を止める。


「待とうよ、私、比奈ちゃんとここで遊んで帰りたい」

「眞奈、今日はね、お母さん急ぎのご用があるんだ。
比奈ちゃんとはまた今度遊ぼ」

「お母さん、お願い少しだけ」

 困った、早く車に乗らないと瑤ちゃんが来ちゃう。
 まさかここで眞奈からの邪魔が入ろうとは。
 言いくるめることもできそうになくて焦る。


「分かった、すこしだけね。約束だよ」

「わぁ~い、ありがとう」


私はこんな日の為にと準備しておいたモノ《ブツ》を
上着のポケットに入れた。

 今逃げてもいつか瑤ちゃんと向かい合わなければならない。
 先延ばしにしても辛いのは同じ。
 そう思うことで私は腹を決めた。

 視線を娘から外し、瑤ちゃんたちがやって来る方向に向けると、
ちょうど彼女が比奈ちゃんの手を引っぱり小走りにこちらに来るのが見えた。
 

「眞奈、比奈ちゃんが来たよ。
いつものようにここの敷地から外には絶対出ないって約束して」

「うん、約束する。今日は比奈ちゃんとブランコ乗るっ!」

「眞奈ちゃぁ~ん」

「比奈ちゃん、今日遊べる?」
比奈ちゃんが返事をする前に瑤ちゃんが言った。

「比奈、眞奈と遊んどいで」

「うんっ、眞奈ちゃん行こっ」


「苺佳、お待たせ・・って、今日の苺佳おかしい。何かあった?」

「瑤ちゃんって意地悪な人だよね」

「ごめん、否定はできない。・・けど許してくれたんじゃなかったのか?」


「その上嘘つきでドロボー猫だったなんて」

私が辛辣な言葉を投げつけると瑤ちゃんがギョっとしてる。
やっぱり脛に疵持ってるんだ。



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