So long! さようなら!

So long! さようなら! 60

60.


　「おいしかった、すごく。ごちそうさま!　又食べさせて
貰えるように頑張るよ。しばらく放っておいてごめん。
仕事もメドがついたし、今度こそ不安にさせないよ」


　『おそまつさま。　孝則さん、私の手料理は今日が最後に
なると思う。私、あなたとの復縁のことはほんとに悩んで
迷って真剣に考えたわ。でも、どうしても100%信頼が出来
なくて苦しかった。

　そんな時、親しい人からアドバイスされてあなたの素行調査
した。ごめんなさい。　こう言ったら、判るよね? 』


　「ナ、何言ってるンだ、素行調査って。信じてくれって
言ったろ?　そんな誰が経営してるか判らない胡散臭い調査
会社なんて・・・」


　『いろいろと写真、ビデオなんかで調査結果出てるから。
それに使った調査会社はトある大企業がよく使ってる信用
のおける会社なの』



「　うっ、、俺は諦めないから!」


　俺は証拠を突きつけられ、上ずった声で最後の捨て台詞を
ようよう吐き出し、順子の家を後にした。途中で息苦しく
なり、コンビニの駐車場へ入った。


　妻のふるまう心の籠もった手料理をずっと食べ続けることの
出来るのは、ずっとずっと妻子を大切に守っている夫のみ
の、特権なのだ。

　10年前に妻子をボロ雑巾のように捨てた俺じゃないか!
　とっくに、そんな資格なんてなかったのさ。

　そう戒めることでしか、自分を慰める方法が見つからな
かった。



・・・

　孝則にとって順子のお家ごはんは、思った以上の破壊力が
あった。



"古女房の手料理に勝るものなし。"
　
　　　　　　　　　　　　　By 設樂理沙(著)