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" 申し出 61 " 最終話
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61. 番外編
プロポーズされて、神波と結婚を決めたのだけれど
実はどうしても聞いてみたくて私はこんな質問を彼にしたのだ。
「なんで私なの?」
と、なるべく卑下して聞こえないように問うてみた。
「俺の母親は不倫して、まだ小学生だった俺と親父を捨てて
男と駆け落ちしたんです。それから俺はそのことがトラウマ
になって女性不信。付き合うことはあっても、一生結婚はしないと
思って生きてきました。
スイミングでは、たくさんの奥さんたちや独身女性からも
粉を掛けられたりして、ますます結婚というものに引いて
いきました。だけどそんな中、あなたは俺に一切粉を掛けて
こなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
俺たちはずっと抱き合ってきたけれど、それはあなたの
ご主人が不誠実なことをした後からのことで。
正直に言います。
俺、何もなかった頃からあなたのことが気になってました。
好意を持ってました。あぁ、でもだからって略奪してとか、
ちょっかい出そうとかはぜんぜん考えたこともなくて。
なので、あなたと親しくなれた時はすごくうれしくて……
でも、セフレという関係のままでは、いつか終わりが来るのだろうと
寂しい気持ちにもなったり。
なので、ご主人が亡くなられたという話は、これまでのいろいろな想いが
交錯して衝撃的でした。
夢のようなチャンスが転がり込んできたような……。
だからって、決してご主人が死んで良かったなどとは思ってません
けども。
大好きな萌枝さんと、一生、共に暮らしていきたいと思ってるんです。
母親が男を選んで出て行ってからずっと父親とふたり暮らし
でした。きょうだいはいません。親父は俺が大学4年の時に
病死してます。
肉親と縁が薄くきょうだいもいませんし、もう両祖父母も鬼籍で
俺は天涯孤独の身の上ってわけ。俺ひとり……ぼっちなんですよ。
かわいそうでしょ? 俺を拾ってください」
私は見た目と性格からは想像もつかないすごい強烈な
プロポーズを受けた。
私が断る理由はない。
神波はプー太郎の身では私の両親に挨拶できないから
就職するまで結婚はもう少し待って欲しいと言った。
彼は電気系の技術者で以前勤めていた会社は、やたらと東南アジアへの
出張が多く、残業もすごくてブラックだった為辞め、小さな頃から好きで
得意だった泳ぎを生かせるスイミングスクールでバイトしていた
のだと言う。
そんな中、私との出会いがあって元の職種での就職活動を様子見
と称して、ズルズルと見送ってたみたい。
なので、ここは一念発起してこちらの市役所にTryしようと思ってるって
告げられた。
えっ? Tryするのは自由だけど、そんなに簡単に公務員ってなれるの?
って懐疑的だったことは、内緒。
7月の1次試験、そして8月の2次試験も合格し。
晴れて翌年から正規雇用される地方公務員となった。
今は電気や土木職といった部門は、人手が足らずwelcome状態のようだ。
だからって受験した者が全員受かるわけではないが。
神波のように元々その職種で何年か勤めていた実績のある人間は
役所からするとすごく欲しい人材であるのは間違いなさそうだ。
とにかく一般の公務員のイメージからはほど遠く、むちゃくちゃ
忙しい職場らしい。
これは大学の同期生で新卒で役所に入所した彼の友人情報だった。
ほぼ、内定が決まった後、すぐに両親に挨拶に来てくれて私と神波は
まだ寒さの残る翌年の3月に挙式した。
―――――――― おしまい。 ―――――――
今回も最後までお付き合いいただき本当に
ありがとうございました。
プロポーズされて、神波と結婚を決めたのだけれど
実はどうしても聞いてみたくて私はこんな質問を彼にしたのだ。
「なんで私なの?」
と、なるべく卑下して聞こえないように問うてみた。
「俺の母親は不倫して、まだ小学生だった俺と親父を捨てて
男と駆け落ちしたんです。それから俺はそのことがトラウマ
になって女性不信。付き合うことはあっても、一生結婚はしないと
思って生きてきました。
スイミングでは、たくさんの奥さんたちや独身女性からも
粉を掛けられたりして、ますます結婚というものに引いて
いきました。だけどそんな中、あなたは俺に一切粉を掛けて
こなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
俺たちはずっと抱き合ってきたけれど、それはあなたの
ご主人が不誠実なことをした後からのことで。
正直に言います。
俺、何もなかった頃からあなたのことが気になってました。
好意を持ってました。あぁ、でもだからって略奪してとか、
ちょっかい出そうとかはぜんぜん考えたこともなくて。
なので、あなたと親しくなれた時はすごくうれしくて……
でも、セフレという関係のままでは、いつか終わりが来るのだろうと
寂しい気持ちにもなったり。
なので、ご主人が亡くなられたという話は、これまでのいろいろな想いが
交錯して衝撃的でした。
夢のようなチャンスが転がり込んできたような……。
だからって、決してご主人が死んで良かったなどとは思ってません
けども。
大好きな萌枝さんと、一生、共に暮らしていきたいと思ってるんです。
母親が男を選んで出て行ってからずっと父親とふたり暮らし
でした。きょうだいはいません。親父は俺が大学4年の時に
病死してます。
肉親と縁が薄くきょうだいもいませんし、もう両祖父母も鬼籍で
俺は天涯孤独の身の上ってわけ。俺ひとり……ぼっちなんですよ。
かわいそうでしょ? 俺を拾ってください」
私は見た目と性格からは想像もつかないすごい強烈な
プロポーズを受けた。
私が断る理由はない。
神波はプー太郎の身では私の両親に挨拶できないから
就職するまで結婚はもう少し待って欲しいと言った。
彼は電気系の技術者で以前勤めていた会社は、やたらと東南アジアへの
出張が多く、残業もすごくてブラックだった為辞め、小さな頃から好きで
得意だった泳ぎを生かせるスイミングスクールでバイトしていた
のだと言う。
そんな中、私との出会いがあって元の職種での就職活動を様子見
と称して、ズルズルと見送ってたみたい。
なので、ここは一念発起してこちらの市役所にTryしようと思ってるって
告げられた。
えっ? Tryするのは自由だけど、そんなに簡単に公務員ってなれるの?
って懐疑的だったことは、内緒。
7月の1次試験、そして8月の2次試験も合格し。
晴れて翌年から正規雇用される地方公務員となった。
今は電気や土木職といった部門は、人手が足らずwelcome状態のようだ。
だからって受験した者が全員受かるわけではないが。
神波のように元々その職種で何年か勤めていた実績のある人間は
役所からするとすごく欲しい人材であるのは間違いなさそうだ。
とにかく一般の公務員のイメージからはほど遠く、むちゃくちゃ
忙しい職場らしい。
これは大学の同期生で新卒で役所に入所した彼の友人情報だった。
ほぼ、内定が決まった後、すぐに両親に挨拶に来てくれて私と神波は
まだ寒さの残る翌年の3月に挙式した。
―――――――― おしまい。 ―――――――
今回も最後までお付き合いいただき本当に
ありがとうございました。
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