裏切りの扉  

設樂理沙

文字の大きさ
上 下
59 / 61

" お願い1-59 "

しおりを挟む
59.




「萌枝さん、ひとつお願いがあるんだ。俺たちのこと……。
今までのようなあやふやな関係じゃなくて……その……
俺を萌枝さんの恋人にしてくれない?」


「えぇっ~、もしかして私たち恋人じゃなかったの?」

 自分でもふたりの関係が恋人だなんて思ってもなかったのに
何でか、こんな風に私は彼に言ってしまった。

 他に言葉が見つからなかったからなのか!

 夫も子もいながらっていうのもあるけれど、それ以前に
気持ちの上で恋人同士とは言いがたい関係だったと思う。

 何故なら彼に対して、まず私は彼の身体が欲しいという
欲望から彼との付き合いを始めてしまったから。

 そして彼からも好きだと言われたことはこれまで一度もなかったし。


「ごめんなさい、今の私の返しすごい変よね? 私ったら
何言っちゃってるんだろう。訂正します。
ほんと、私たちは恋人同士っていう関係じゃなかったと思う」

 私は焦る気持ちを何とか宥めて、彼に自分の発言の訂正を
試みた。


「俺たちはセフレだったんだよ、今まで」

 なかなか私が口にできなかった言葉を彼があっさりと吐いた。

 私は少し吃驚した。

 今まで神波は私たちの関係について一度も触れてきた事がなかったから。

「セフレって……何か恥ずかしい響きがするね。そうよね、私たち
ってセフレっていうこじゃれた関係だったのよね……。恋人って
いいわね、うん私たち恋人同士になりましょう」


「ほんと?」


「ええ、ほんと。いいんじゃないかな」

毎日一緒にいられないから……
     いられないけど……

 「新鮮でいいと思う、うん」



「そういう意見を聞いた後で何なんですけどぉ~
駄目元で、ひとつお願いしてもいいかな?」



「何でしょう?」





       
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

じれったい夜の残像

ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、 ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。 そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。 再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。 再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、 美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...