裏切りの扉 非公開にしていましたが再upしました。11/4

" 忸怩たる想い-57 "

57.




　『逢いに行くよ……俺も萌枝さんたちと一緒に暮らそうと思う』
　この話しはこの台詞のみで終了したので、これで完結なんだなっ。

　それっきり彼からそれ以上の詳細が語られることはなく、私も
語らなかった。

　まっ、いいじゃないの!
　会いにわざわざ来てくれるんだし、楽しい時間を一緒に過ごせればって
思った。

　一緒に住めるかどうかは期待しないことにしよう。
　彼だって仕事をどうするのかとか、身辺整理のこともあるだろうから
そう簡単には彼の思う通りにはなかなかいかないだろうし。

　でも今はそんな気持ちでいてくれることが素直にうれしくて
心がほっこりした。

　とにかく私はこの先、神波とどんな形にせよ拗こじれた関係で
終わりにはしたくなかった。

　拗れた関係は夫だけで充分だ。

　夫のせいで私と夫との絆は、どこかへぶっ飛んで行き、粉々に
砕け散ってしまった。

　拗らせた張本人はそれに気付かない振りを
一生懸命装ってて、死ぬまで気付かない振りにしがみ付いてたけど。

　人というものはね、一方が裏切ったらその2人の関係は拗れずには
終わらないものなのよ。

　そして拗れた関係は誰も幸せにはしないの。


　夫は臨終の時、「俺のこと……を、オレのこと……」と彼は何度も
私に聞いてきて「えっ? なに?」って私はとぼけてて……

　そして私の名前を掠れた声で虫の息のなかずっと呼び続け
『次産まれ代わっても一緒になろう』って言った。

　私は泣いてずっと夫の顔も目も見えなかった?(ﾐﾅｶｯﾀ ﾉ ｶﾓ ﾈ...)
　夫が手を出してきたのでそっと手を握りしめて俯いてただけ。

　そして……夫は息を引きとった。

　産まれ代わっても一緒にってLove Callされたけれど、
それだけは遠慮させてもらいます、今生だけで充分でございます。

　『申し出お受け出来なくてすみません』と墓前で謝罪した。
　心の狭量な女でごめんなさい、と。