裏切りの扉  

設樂理沙

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" 私の気持ち2-53 "

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53.




 夫を見送ったのは、北原紗栄子との浮気問題からたったの
10ヶ月足らずの後のことだった。怒涛の一年だった。
 息子のことを考えて郷里に帰る決心をした。



 私の両親はまだまだ若く、私が働きに出ている間、翔琉に目を
かけてもらい世話も頼めるからだ。




 義両親は寂しがったけれど大黒柱を失くした以上、どうしようもないのだ。   
 義母が翔琉のことは私が見てあげるからと言ってくれたのだけれど、
ねぇ~何もなくてもなさぬ仲は気を遣って大変なことが多いのに、浮気を
いたした夫の母親ってどうなの?



 もちろん義母に責任なんてないのは判ってるけど
どう考えても長い目で見たら、郷里に帰り実の両親を頼る道を
選んだ方がいいような気がする。



 翔琉にとっては、祖父母がいつも側で見守ってくれる田舎暮らしも
案外いいものかもしれない。

 自然が豊かだしね。家は余裕ができたら別に実家の近くで借りようかと
思っている。



 翔琉がすぐに祖父母の家へ行ける範囲でいい所があれば。



 なんだかんだで実際に引っ越す為の重い腰を上げたのは更に
1年経過した後のことだった。

 


          ◇ ◇ ◇ ◇




 
  神波芙緒とは、その後もずっと逢っている。


 夫が病気になったことも、そして亡くなったことも、伝えていない。
 どうしてかな?
 たぶん、不確かなあやふやな関係だから、かな?



 そんな私事を言ってそれで?
 どうすんの? みたいな、感じかな。


 息子も私もスイミングを止めることになるので、そのタイミングで
神波コーチにお別れを言わないとと、考えている。



 私が郷里に帰ってもたまには逢いに来てくれるだろうか、そう思わなくも
ないけど、それを自分から言うのは止めようと思ってる。

 未練がましいのは嫌いだからかな……フッ!



 しかし神波と私、よく1年半以上続いたよね。



 私に家庭があったこともあって結局普通のカップルがするように
大っぴらにデートしたり、どちらかの部屋でまったり一緒にDVDで
映画を観たりってこともない、ただ身体を重ねるだけの付き合いだった。
 
 それは夫が亡くなった後も。



 身体の相性はいわずもがなのこと、性格的にも相性は
いいんじゃないかな。


 嫌な気持ちになったことが一度もなかったから。



 マァ、イヤニナルホド...イッショニハ...スゴシテナイ...ッテ、コトナンダケレドモ...
  

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