裏切りの扉 非公開にしていましたが再upしました。11/4

" 私の気持ち1-52 "

52.




　私は気付いていた。

　今際の際に夫が……中琉が私の本心がどこにあるのかを、ずっと
最期の最後まで探っていたのを。

　自分を裏切ったり、あるいは罵倒したり粗略に扱ったりした人を
あなた(方)は愛せますか?

　もしそんな人間がいるとしたらそれはもう神の領域に
片足突っ込んでる人だと思う。

　それほどに、難しいことなのよ。

　最期の最後、今際の際いまわのきわで虫の息の時
「俺のこと……を、オレのこと……」と彼は二度、私に聞いてきた。

「えっ?　なに?」って私はとぼけた返事を返したけど、判ってた。


　夫の精一杯の私への確認の言葉、それは

『俺のことを許してくれる?　
　まだ愛してくれている?
　 アイシテル?　俺のこと?』

なのだと。


　あのことがあったから、直截的な言葉で私に問い掛ける
ことが出来なかった夫……の最期の問いかけ。

　そして私が彼に掛けた最後の言葉は……中琉さん、アタルさん……
だった。

　涙がポロリとひとつぶ私の目から零れ落ちた。
　なんて寂しくて悲しい別れなんだろう。

　さよなら中琉さん。
 

　

　　　　　　　　　　　◇　◇　◇　◇




世の中には1度のみならず、2度も3度も相手を替えて
浮気を繰り返す夫を……それでもまだ好きだから別れられない
んですと言う女性の話しは、結構その辺に転がっているけれど
何なんだろう? 


　
　私には全く理解出来ない。


　
　経済的に子供を育てる自信がないからというのは、理解
出来るんだけどね。



　それでもまだ好きウンヌンって……なんじゃぁそりゃぁ～っ
ていう話だよね。




　もしや私の気持ちを最後まで探っていた夫は、そんな私の理解の範疇を
超える女と同様、まだ私が夫を愛していると思っていたのか!



　思いたかったのか?
　そういうことだよね。


　ほんとに人の気持ちっていうものに、疎い人間だったンだね。



　そして相手の立場になって物事を考えるという、そんな考える力も
不足していた人間だったんだ。



　ストンと腑に落ちると、私は力が抜けてしまった。
　あまりの人を見る目のなさに。



　ここまで夫が人間力の低い人だったとは!



　私は夫のどこが良くて結婚したのか、結婚したことそのものの後悔と
人を見抜く己の能力のなさを改めて実感。
　


　そして凹んだわさっと!　



　ふざけてでもみないと、どうにかなりそうだった。