裏切りの扉  

設樂理沙

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" おちゃめ? いやいや……いじましい復讐1-44 "

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44.



 
 夫はきたるべき手術に向けて入院した。
 3日後に手術を受ける。
 
 執刀医から私だけに話しておきたいことがあると連絡を受け
病院に向かった。

 夫の病気は進行が早い為、今回の手術は回復を見込んでのものではなく、
延命措置としての手術であると説明を受けた。


「残念ながら…………」

「判りました」沈痛な面持ちで聞いた。

 帰り道、何故かマックでチキンバーガーが食べたくなり
ドライブするーで買い求め、車の中で食べた。


 ふふっ、今となっては夫と北原栄子のことはこんな日を迎えた私の為に
あったのかなぁなんて思いながら。

 あきらかに浮気を知る前と知った後とでは、私の気持ちに
天と地ほどの差が産まれていたからだ。

 何もなかった仲睦まじく暮らしていた頃に、もし夫の病気と手術、
そして助からないと聞かされていたら、私は絶望して
泣き暮らしていたかもしれない。


 自分でも人の気持ち? 心情? ってすごいっ、すご過ぎるって思う。

 



          ◇ ◇ ◇ ◇



 他に心を寄せる人がいるからか、いや私の場合は身体を寄せるって
なるか?  とにかく夫から驚く位気持ちが離れてしまってるから
ちっとも悲観することもない。

 だからって死ねばいいなんて露ほども思ってはいない、これだけは
断言できる。

 息子の父親なんだし一度は好いた相手だもの。

 それどころか 夫はこのまま死んでしまうのか? このまま?
 私に酷い仕打ちをしたまま?

 夫の死を身近に感じるまではこんなこと考えもつかなかったのに。

 いけないことっていうのは判っているけど、私はどうしても
夫にプチトラップを仕掛けたくてたまらなくなった。

 私ってこんなにいじましく捩じれた性格だったのか?

 酷く自分のことがつまらない人間に思えたけれど、私は自分で
そのいじましい欲望を抑えられなかった。


 術後、経過も良好で回復に向けて頑張っている夫を励ましつつ
私はとんでもないことを仕掛けた。

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