裏切りの扉  

設樂理沙

文字の大きさ
上 下
42 / 61

" 心ばえ2-42 "

しおりを挟む
42.




「別の部署に異動になってもまた頑張ればいいじゃない。
 解雇にならなくてよかったわよ。

 元気になることを一番に考えてあまり職場のことは……
今は考えなくていいと思うよ?」


  私はポジティブな言葉で夫を元気づけ、更に言葉を続けた。



「あのね、困難に遭遇した時の対処方法についてなんだけど
これって、実は私が実体験した中で自分なりに気付いたものっていうか、
会得したっていうか。

 ふふっ、だから何の根拠もないんだけどね、私はオオバーに言うと
信念を持ってこの私の対処方法を信じてるの」
 

「へぇ~、そんなの今までに君から聞いたことなかったよね?
 それじゃあ、困難に直面しているわたくしめにぜひとも伝授して
くれませんか?  先生!」


「いいですよぉ~。
 耳の穴かっぽじってよく聞いてね。
 まっ、ちょっとはずいけど」


「スキーで山頂から滑り降りるシーンを想像してみてね。
 そして眼下には果てしなく続くすごい急斜面……とても麓まで
たどり着けそうもない状況。

 さっ、どうする?
  自分で滑る以外麓まで行けないの。

 こんな状況だと誰でも意を決して駄目もとで滑るよね? 

 例え転んでも立ち上がればいいのだし、運が悪くてコースから飛び出して
大怪我するかもしれないけど、誰も助けてくれない以上選択肢は自分で…… 
す・べ・る・しかないから。

 スキーの中級、上級者ならこの話は当て嵌まらないわ。

 私は初めてスキー場に行った日に、ほんの15分ほど前進の仕方と
コケた時の立ち方を習った程度で、リフトで山頂まで登らされて
これをやらされたの。

 先輩たち鬼だよね、全く。

 新入社員で何も文句言えず私は滑ったの。
 そしてその時感じたことこそがあなたに伝授することなの」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

じれったい夜の残像

ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、 ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。 そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。 再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。 再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、 美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...