裏切りの扉  

設樂理沙

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" 見えない後ろにいるお方40 "

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40.

  "見えない後ろにいるお方"


 自分は少し普通の人と違っていると自覚してから半年後
よく行く商店街へ買い物に出かけた時のこと。

 あるSHOPの一角を間借りして、姓名判断と手相併せて見ている
おばあさんがいた。

 彼女が前からそこで商売しているのは 知っていた。

 気持ちはあったけれど、今のいままで一度も見てもらったことは
なかったのだが、その日はなんだか見てもらいたくなった。

 鑑定料金を聞いてみるとこちらのお任せ料金でいいと言う。


 見てもらうと、過去の事柄や私の性分が随分とあっていて驚いた。

 だけど肝心の未来のことは何も言われなかった。


 普通、当たっていても過去は自分に何の恩恵ももたらさないよね?
  役に立たないよぉ~、なんて心の中でごねていたらおばあさんが言った。



「私はね、ほとんど霊能力なんてものはないんだけど、あなたのは
すごい。

 とってもすごいの。私にも視えるくらいに。
 
 あなたの後ろには、すごい強い力を持っておられるお方が
付いてらっしゃるの。

 これからもあなたをしっかりと守ってくれるわ。

 それとあなたはとても素直で良い女性ひと

 だけどご本人の気持ち云々うんぬんではなくて、性質って
いうのかな、元々備わっているって言うべきか……あなた生霊を
飛ばすんですよ。

 あなたを苦しめたりするとね、その人に生霊が飛んで行ってやっつける。

 その上あなたには強力な守護神がついているから、狙われた人は
ひとたまりもないわね」


 

          ◇ ◇ ◇ ◇



 すごい、この人おばあさん本物かも。


 最初はほんとに気持ちだけの500円を払おうと思っていたのだけれど
これだけ当てる人にそれはあまりに失礼だよね……ってことで
2000円支払って帰った。



 すでに小澤一代の時に、自分には何かそういう力があるのだと
確信にも近いモノを感じてはいたのだけれど、このおばあさんの
言葉で確信から更に絶対的確信へと変わっていった。


 あ~あ、結婚前にはこうしていろいろあったのに、結婚してから
あんまり幸せで、この重大な記憶が抜け落ちていたみたい。

 何か知らないけど、ちょくちよくあるの。


 後から思い起こすとどうしてあんなに大事なことをうっかりだか
すっかりだか判んないけど忘れきってるってことが。

 何なのだろう。
 自分でもあきれるばかりだ。



 とにかく、夫が難しい病気になって手術もしなくてはいけない。
 恐らく義両親も夫も北原からの無理難題な請求を取り止めることだろう。

 だって自分の……息子の……命が掛かっているのだから。




 お人好しよろしく大枚たいまいはたいていたら、手術費用がなくなって
手術受けられずに死んじゃうかもしれないんだから。


 北原紗栄子、ご愁傷様ぁ~

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