裏切りの扉  

設樂理沙

文字の大きさ
上 下
39 / 61

" 偶然か、必然か? 7-39 "

しおりを挟む
39.




 私が彼女に対して"酷い事をしたヤツなんか死ねばいいのに"
みたいな? 悪感情を出さなかった為か、卒業まで小澤一代の身には
コレまでの人達のように何も事故は起きなかった。

 自分の負の感情を押さえ込むのは、とても辛いことだったけれど
でも、何も彼女の身に災いが起こらなくってよかったのだと思った。




          ◇ ◇ ◇ ◇




 それから4~5年後、私は親友と一緒に歌を聞くために大阪に向かう
バスの中で、あろうことか小澤一代に遭遇した。



 私は挨拶はしたものの、とても普通の同級生に対するような親しみを
込めて彼女を見つめることもできなかったし、会話もできず……っていうか
寧ろ過去のことがフラッシュバックしてしまい、恨めし気な視線で
彼女を見てしまった。



 彼女が先にバスから降りた。

 彼女は私たちの乗っているバスを一度も振り返りはしなかった。



 私は昔あんたが私にしたこと気付いてるんだからねって思いを
彼女に向けつつ、彼女が歩いていくのをバスの中から眺めてた。


 隣にいる親友が何か話しかけてきた。



 私はそれに相槌を打ちながら小澤一代をずっと見ていた。

 彼女が最寄の電車の駅の側まで辿りついた時、彼女の姿がフっと消えた。





          ◇ ◇ ◇ ◇



 えっ?  地上から居なくなった。


 どうして? 自分の目の錯覚だったのかな?
 くらいの気持ちでそれから私は親友と目的地に向かった。



 好きな歌手の歌を堪能して幸せ一杯気分で帰宅。



 何気にTVでニュースを聞いていたら、小澤一代が地上から
一瞬にして消えた理由が判った。


 折からの異常気象の大雨で地盤が緩んでいた為、駅周辺の
かなり広い面積の道路が数メートルに亘り陥没したらしい。


 被害に遭った人は3名いた。軽傷2名、重症1名。
 重症が彼女、小澤一代だった。




 私は恐ろしくなった。

 今頃? 何故?



  昔を思い出して嫌悪感が復活したけれど、小澤に災いが起こればいい
なんて、ちっとも願ってなかったじゃない。


 それでもやはり私の法則は生きていた。
 無意識のうちに私は彼女の不幸を願っていたのだろうか。



 私は途方に暮れた。



 それと共に……今までに起きた事象はやっぱり偶然なんかじゃあないと、
この時改めて自分の身に、見えないパワーを感じた。



 そして私は普通じゃない人間なのだと自覚したのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

じれったい夜の残像

ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、 ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。 そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。 再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。 再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、 美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...