裏切りの扉  

設樂理沙

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" 偶然か、必然か? 2-34 "

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34.



  今度は小学5年生の時のこと。
 私の通う小学校は毎年はクラス替えしない学校だった。

 
持ち上がりで2年間同じクラスになるのだ。
クラスに酷い女子がいた。



 ひとりずつターゲットを変えながらいじめを繰り返していた。
 忘れもしない山田尚美という名前だった。



 彼女は常に4~5人取り巻きを連れていて、ターゲットを決めると
いじめを始めるのだ。


 私も何度もやられた。


 その頃父親が交通事故に遭ったりしたことも拍車をかけて我が家は
貧困家庭になっていた。



 なので、例えばお正月が来るから新しい洋服に靴下に下着……と
揃えるなんてことは無理だったのだ。


 そう、イベントに併せて何かを買ってもらうことは無理が
あった。

 だから買える時に必要なものを買ってもらっていた。




 ある日、やっと真新しい運動靴を買ってもらえたので
新品の運動靴で登校したら、案の定、山田はいじわるを言ってきた。



『遠足でもないし、運動会でもないのにちゃらちゃら新しい
靴履いてきて、馬鹿じゃないの? 』と。



 みんなが掃除している放課後に4~5人に囲まれて苛められた。




『ちょっと、アンタ……私たちのこと見下してるんちがう?
 私らのこと貧乏人やと思ってるんやろ』と。




          ◇ ◇ ◇ ◇



『はぁ~? そんなこと思うはずない。私こそが貧乏なんだよぉ』


 彼女の言いがかりは子供だといえども、むちゃくちゃ過ぎた。
 本当に山田尚美は性根の腐った子供だった。




 その子と連れ立って私を囲んでいた子の中に、つい先日
隣同士の席になって

「萌枝ちゃん、仲ようしてね」と言ってやさしく笑い、鉛筆まで
くれた女子もいて、私はひどく絶望的になったものだ。



 ついこの間まで仲良くしていた子が……喧嘩したわけでもなく
その子にいじわるしたわけでもないのに、自分を山田尚美と一緒に
同調して攻めてくるのだ。



 人間不信になるよねぇ、全くぅ。



 訳が判らなかったけれど、それでも私は半泣きながらも
「用事はそれだけなん? じゃっ、私帰るわ」
 と言い捨てて走って泣きながら家に帰った。



 酷いヤツらだ……酷すぎる。


 私だけじゃなくて他の子たちも苛めてる山田尚美。



『あんな悪魔のような存在がこの世にいて良いわけがない。
 天罰が下るといいのに』



 そんな風に思っていた記憶がある。


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