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" 嵐は突然に3-32 "
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32.
我が家は家を買ったばかりで手持ちがあまりない。
なので義父にいくらか借りたり、残金はどうやって
工面しようかと、夫はずっと金策に走り回っていたのだけれど
ちょうどそんな折、少し前に夫が会社で受けた健康診断の
結果が送られてきた。
頭部に嫌な影が見受けられるので再検査するよう指導が入った。
まさか、という気持ちのほうが夫婦共に強くあった。
というのも、過去にも夫の同僚たちが割りとよく検査に引っかかっており、
気を揉んだわりに最終結果はなんともなかったっていうことがあった為。
夫の会社の検診を推奨している部は待ったなしで厳しい。
会社にとって社員の体調管理は即業績に響くものとして
真摯に受け止められているからだった。
それで北原への入金は後回しになり、夫は指定された日
に再度検査に行った。
検査結果は驚く程早かった。
その道の権威あるドクターから頭部の影は病巣であると告げられ
即日夫は入院、手術することとなった。
「あはははっ、すごいなぁ~。俺バチがあたったんだ
萌枝に酷いことしたから」
そう言い、病院からの帰り道、車の中で夫は泣いた。
◇ ◇ ◇ ◇
「北原には子を流産するっていうバチ、それで俺には病気だ。
ひゃははっ、笑うしかないよな?」
そんなことをいきなり言われても……私は何て言って
いいのか言葉が出てこない。
あなたは悪くないって言ってあげられればいいのだ
けれど、それは嘘になるよね?
嘘はつけないし……。
「手術したら直るわよ、きっと。大丈夫!
幸い権威ある実力のあるドクターに診てもらえてるんだし。
あなたは運が強いと思うよ?」
「ありがとう。萌枝にそう言ってもらえて少し気持ちが落ち着いてきた」
「そっか、なら良かった」
入院は少し先になるので、この日は私が運転をして夫と自宅に戻った。
結婚してからは優しい義両親と夫、可愛い息子に囲まれて暮らしてて、
私に辛くあたる人間のいない空間で暮らしてきたから、すっかり忘れてた。
あのことを!
我が家は家を買ったばかりで手持ちがあまりない。
なので義父にいくらか借りたり、残金はどうやって
工面しようかと、夫はずっと金策に走り回っていたのだけれど
ちょうどそんな折、少し前に夫が会社で受けた健康診断の
結果が送られてきた。
頭部に嫌な影が見受けられるので再検査するよう指導が入った。
まさか、という気持ちのほうが夫婦共に強くあった。
というのも、過去にも夫の同僚たちが割りとよく検査に引っかかっており、
気を揉んだわりに最終結果はなんともなかったっていうことがあった為。
夫の会社の検診を推奨している部は待ったなしで厳しい。
会社にとって社員の体調管理は即業績に響くものとして
真摯に受け止められているからだった。
それで北原への入金は後回しになり、夫は指定された日
に再度検査に行った。
検査結果は驚く程早かった。
その道の権威あるドクターから頭部の影は病巣であると告げられ
即日夫は入院、手術することとなった。
「あはははっ、すごいなぁ~。俺バチがあたったんだ
萌枝に酷いことしたから」
そう言い、病院からの帰り道、車の中で夫は泣いた。
◇ ◇ ◇ ◇
「北原には子を流産するっていうバチ、それで俺には病気だ。
ひゃははっ、笑うしかないよな?」
そんなことをいきなり言われても……私は何て言って
いいのか言葉が出てこない。
あなたは悪くないって言ってあげられればいいのだ
けれど、それは嘘になるよね?
嘘はつけないし……。
「手術したら直るわよ、きっと。大丈夫!
幸い権威ある実力のあるドクターに診てもらえてるんだし。
あなたは運が強いと思うよ?」
「ありがとう。萌枝にそう言ってもらえて少し気持ちが落ち着いてきた」
「そっか、なら良かった」
入院は少し先になるので、この日は私が運転をして夫と自宅に戻った。
結婚してからは優しい義両親と夫、可愛い息子に囲まれて暮らしてて、
私に辛くあたる人間のいない空間で暮らしてきたから、すっかり忘れてた。
あのことを!
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