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"神波芙緒《こうなみふみお》の想い1-26 "
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26.
"神波芙緒の想い1 "
私と神波コーチの交際が、ようやく実のある一齣として
進められたのは1ヶ月も過ぎた頃のことだった。
後半月もすると盛夏を迎えようという季節になっていた。
それは神波コーチの部屋でだった。
もう私たちふたり、お互いの欲望には気付いていた。
後はそれをどうおしゃれにスムースに進めていくかだけの
状況だったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
とうとう彼の部屋に来た。
電話やメール越しの話ではなく実体のある本人を目の前にして、
今日こそ、自分は望みを叶えるのだと密かに? 心に誓っていた。
そして私はそういう同じような気持ちを相手からも感じ取っていた。
「はじめての密会? で緊張しますね」と彼がちゃかして言い放ち、
そう言いながらコーヒーを淹れてくれる。
2LDKらしい彼の部屋は薄い茶系色で、家具なども同じような
色合いで揃えられている。
配置されているテーブルから見える壁にはこれまた全体的に見ると
茶系の絵が飾られている。
おとぎ話の中に入り込んだような絵だった。
描かれているのは半裸の少年と馬。
絵画の下に壁いっぱいに並ぶ備え付けの棚は2段で統一されており
書籍やオブジェ、時計、観葉植物がほどよい間隔で置かれている。
この面の壁だけ無色の周りの壁とは違い、濃い茶色の縦じまが
入っている。
キッチンも、後ろに適度な幅のカウンターがあり、作業の後、
テーブルに運ぶ配膳までの導線が素晴らしい。
カウンターのすぐ前に配置されているテーブルは円形のもので
二人掛けのテーブルセットになっている。
🦋
彼の部屋に一歩足を踏み入れた瞬間から、そこにはほっと寛げる
空気感があった。
私は、淹れてくれたテーブルの上のコーヒーを一口飲んだ。
彼はこちらには来ず、キッチンのシンクを背に立ったまま淹れた
コーヒーを一口飲んだ。
彼と私の距離は1.5mそこそこ。
そしてカップを手にしたまま彼は言った。
「恥ずかしいからこのままで話すね。ちょっと自分語りが入るかなぁ~。
俺の母親は俺がまだ小学生だった頃外に男を作り、俺を置いて家を
出て行きました。
だからT Vドラマ(昼顔)なんかで持て囃されてる主婦のように、
夫がいながら色目を使ってくる女が一番嫌いなんですよ」
はぁ~、彼の第一声を聞いて私は怯んだ。
彼も私と同じ気持ちだと勝手に思い込んでいたようだ。
とんでもないことになってない? 私。
もしかしたら、ピエロになっちゃうかも。
しかしことここに至って、逃げも隠れもできない。
今、私にできることは彼の話の続きを聞くだけだ。
「ご存じの通り、俺はスイミングスクールのコーチをやってます。
大人のクラスを受け持つこともあります。
そんな中、いろんなことがありました。
その中でも特に印象深かったことを話ます」
彼はモテるだろうから、きっと色恋の話だなって思った。
"神波芙緒の想い1 "
私と神波コーチの交際が、ようやく実のある一齣として
進められたのは1ヶ月も過ぎた頃のことだった。
後半月もすると盛夏を迎えようという季節になっていた。
それは神波コーチの部屋でだった。
もう私たちふたり、お互いの欲望には気付いていた。
後はそれをどうおしゃれにスムースに進めていくかだけの
状況だったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
とうとう彼の部屋に来た。
電話やメール越しの話ではなく実体のある本人を目の前にして、
今日こそ、自分は望みを叶えるのだと密かに? 心に誓っていた。
そして私はそういう同じような気持ちを相手からも感じ取っていた。
「はじめての密会? で緊張しますね」と彼がちゃかして言い放ち、
そう言いながらコーヒーを淹れてくれる。
2LDKらしい彼の部屋は薄い茶系色で、家具なども同じような
色合いで揃えられている。
配置されているテーブルから見える壁にはこれまた全体的に見ると
茶系の絵が飾られている。
おとぎ話の中に入り込んだような絵だった。
描かれているのは半裸の少年と馬。
絵画の下に壁いっぱいに並ぶ備え付けの棚は2段で統一されており
書籍やオブジェ、時計、観葉植物がほどよい間隔で置かれている。
この面の壁だけ無色の周りの壁とは違い、濃い茶色の縦じまが
入っている。
キッチンも、後ろに適度な幅のカウンターがあり、作業の後、
テーブルに運ぶ配膳までの導線が素晴らしい。
カウンターのすぐ前に配置されているテーブルは円形のもので
二人掛けのテーブルセットになっている。
🦋
彼の部屋に一歩足を踏み入れた瞬間から、そこにはほっと寛げる
空気感があった。
私は、淹れてくれたテーブルの上のコーヒーを一口飲んだ。
彼はこちらには来ず、キッチンのシンクを背に立ったまま淹れた
コーヒーを一口飲んだ。
彼と私の距離は1.5mそこそこ。
そしてカップを手にしたまま彼は言った。
「恥ずかしいからこのままで話すね。ちょっと自分語りが入るかなぁ~。
俺の母親は俺がまだ小学生だった頃外に男を作り、俺を置いて家を
出て行きました。
だからT Vドラマ(昼顔)なんかで持て囃されてる主婦のように、
夫がいながら色目を使ってくる女が一番嫌いなんですよ」
はぁ~、彼の第一声を聞いて私は怯んだ。
彼も私と同じ気持ちだと勝手に思い込んでいたようだ。
とんでもないことになってない? 私。
もしかしたら、ピエロになっちゃうかも。
しかしことここに至って、逃げも隠れもできない。
今、私にできることは彼の話の続きを聞くだけだ。
「ご存じの通り、俺はスイミングスクールのコーチをやってます。
大人のクラスを受け持つこともあります。
そんな中、いろんなことがありました。
その中でも特に印象深かったことを話ます」
彼はモテるだろうから、きっと色恋の話だなって思った。
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