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" 愚かな娘19 "
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19.
「紗栄子、ちっともお前は学習しないし、反省してなかったんだな。
また同じようなことを仕出かして。
お前はどうしてそう、人のモノを欲しがるんだ?」
「うるさいっ、関係ないでしょ私が誰を好きになろうと」
「そうもいかないから私も困ってるんじゃないか。
関係ないというなら、この先何があっても身元引き受けなどしないぞ!」
「何それ! 親なんだからそんなの義務じゃないの」
「あー言えばこう言う。
ほんとにお前は箸にも棒にも引っかからんヤツだなぁ。
お前と関わると碌なことにならんな。
そんなことばかりしていると誰も寄り付かなくなるぞ」
「私だけが悪いんじゃないわよ。
誰も私の気持ちなんて判りゃぁしないのよ」
「あぁ判らんな。判りたいとも思わんしな。
お前のせいで姉さんがどんなつらい思いをしたか。
何もわざわざ姉の婚約者に手を出さんでもいいものを。
しかも初美はやさしい子で泣く泣く婚約者を諦めてお前に
譲ったというのにお前ときたら、他の男と付き合い始めて、姉さんは
泣いてたぞ」
「喜んだ……の間違いじゃないのぉ~? 私が他の男に走って
あげたんだから、婚約者とヨリが戻せてよかったはずよ」
「はぁ、たまらんなぁその馬鹿な発想。皆がみなお前じゃないんだから、
そうそう子供の喧嘩みたいに上手くいくはずないだろうよ。
姉さんはあれから誰とも結婚せずひとりだ」
「そんなの知ったこっちゃあないわ」
◇ ◇ ◇ ◇
「お前、あの男《ひと》にさっき慰謝料くれって叫んでた
けど、慰謝料払わないといけないのは怪我をさせた
お前の方だよ。
いや無理心中謀ったんだから殺人罪でお詫びの慰謝料になるか!
それと姉さんにも慰謝料払わないとな。
お前はあの男《ひと》を散々困らせてたんだろうなぁ。
最初に病室に入って来て私を見た時の彼の顔、表情を
強張らせていたよ。
お前は気がつかなかったのか?
私はお前の父親だからね、お前と同じような人間でお金でも
毟り取られるんじゃないか……くらいの心持で今日私に会いに
来たんだろうな、気の毒に」
「ねぇ、もう帰ってくんない。私疲れたから寝るわ」
ほんとに我が子ながらなさけなくなる。
なんでこうもどうしようもない爛《ただれ》た人間に
なってしまったのか。
娘が退院したら、財産のほとんどを長女に生前贈与し、紗栄子とは
絶縁しようかと考えている。
もうこの子の性根は治りそうもないし、長女もこの子のせいで
薹《とう》が立ってしまって。
姉の初美には持参金をたくさん持たせていい所への嫁入りを
気張ってやろうと、今回のことでちょっと気持ちを奮い立たせる
ことができそうだ。
実の娘ではあるが、紗栄子への未練はもう断ち切ろうと、
俺は今度こそ決心した。
「紗栄子、ちっともお前は学習しないし、反省してなかったんだな。
また同じようなことを仕出かして。
お前はどうしてそう、人のモノを欲しがるんだ?」
「うるさいっ、関係ないでしょ私が誰を好きになろうと」
「そうもいかないから私も困ってるんじゃないか。
関係ないというなら、この先何があっても身元引き受けなどしないぞ!」
「何それ! 親なんだからそんなの義務じゃないの」
「あー言えばこう言う。
ほんとにお前は箸にも棒にも引っかからんヤツだなぁ。
お前と関わると碌なことにならんな。
そんなことばかりしていると誰も寄り付かなくなるぞ」
「私だけが悪いんじゃないわよ。
誰も私の気持ちなんて判りゃぁしないのよ」
「あぁ判らんな。判りたいとも思わんしな。
お前のせいで姉さんがどんなつらい思いをしたか。
何もわざわざ姉の婚約者に手を出さんでもいいものを。
しかも初美はやさしい子で泣く泣く婚約者を諦めてお前に
譲ったというのにお前ときたら、他の男と付き合い始めて、姉さんは
泣いてたぞ」
「喜んだ……の間違いじゃないのぉ~? 私が他の男に走って
あげたんだから、婚約者とヨリが戻せてよかったはずよ」
「はぁ、たまらんなぁその馬鹿な発想。皆がみなお前じゃないんだから、
そうそう子供の喧嘩みたいに上手くいくはずないだろうよ。
姉さんはあれから誰とも結婚せずひとりだ」
「そんなの知ったこっちゃあないわ」
◇ ◇ ◇ ◇
「お前、あの男《ひと》にさっき慰謝料くれって叫んでた
けど、慰謝料払わないといけないのは怪我をさせた
お前の方だよ。
いや無理心中謀ったんだから殺人罪でお詫びの慰謝料になるか!
それと姉さんにも慰謝料払わないとな。
お前はあの男《ひと》を散々困らせてたんだろうなぁ。
最初に病室に入って来て私を見た時の彼の顔、表情を
強張らせていたよ。
お前は気がつかなかったのか?
私はお前の父親だからね、お前と同じような人間でお金でも
毟り取られるんじゃないか……くらいの心持で今日私に会いに
来たんだろうな、気の毒に」
「ねぇ、もう帰ってくんない。私疲れたから寝るわ」
ほんとに我が子ながらなさけなくなる。
なんでこうもどうしようもない爛《ただれ》た人間に
なってしまったのか。
娘が退院したら、財産のほとんどを長女に生前贈与し、紗栄子とは
絶縁しようかと考えている。
もうこの子の性根は治りそうもないし、長女もこの子のせいで
薹《とう》が立ってしまって。
姉の初美には持参金をたくさん持たせていい所への嫁入りを
気張ってやろうと、今回のことでちょっと気持ちを奮い立たせる
ことができそうだ。
実の娘ではあるが、紗栄子への未練はもう断ち切ろうと、
俺は今度こそ決心した。
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