17 / 61
" 対面17 "
しおりを挟む
17.
翌日会社に行き、北原紗栄子の勤める支店に連絡を
取り、彼女が事故に遭って入院したことを知らせておいた。
恐らく親族であろう緊急連絡先へ支店の社員が
伝言してくれるだろう。
その内、北原と親族から呼び出しがあるに違いない。
憂鬱だ……だが仕方のないことだ。
案の定……
この翌日、北原紗栄子の父親から電話があった。
「娘は今錯乱状態で何を聞いてもあなたにお腹の子を
殺された、騙されたというばかり。
だが運転していたのも娘で、事故を引き起こしたのも娘だという
ことは警察のほうの調書ではっきりしています。
娘の言ってる事は辻褄の合わないことだらけでして、娘の言い分を
鵜呑みにはできません……がお腹の中の子の父親があなただと言うことは
確かなんですよね?」
「はい、その通りです。
娘さんの側にずっとついていられなくて申し訳ありませんでした。
お腹の子のことについてもそれと私たちの関係についても、1度お話
させていただかなければ、と思っています」
何もこちらの理由など聞く耳など持たない、娘を弄んだ不埒者と、
そしられることも覚悟していたので事の外、理性的な感じの北原の父親に
ドキドキしていた気持ちが少し和らいだ。
◇ ◇ ◇ ◇
しかしだからこそ話し合いの場では、北原とのことを
厳しく追求されるだろう。
ここは正念場だなと思った。
翌日泣きたくなりそうな気持ちを捻じ伏せて、北原の父親に
これまでの経緯を話した。
あまりに異常な娘の言動に父親は絶句した。
「既婚者だと知った上であなたを誘惑して意図的に妊娠を謀った
娘のお腹の子は死んだ。
子もそんな母親と父親になれないあなたとの間に
産まれては大変と天国へ逆戻りしたのでしょう。
聡い子だ。
私もお腹の中の子の選択が正しいかったと……そう思いますよ。
それとあなたと娘の話からすると、あなたは頑なに妻子と離婚は
しないし、娘とどうこうするつもりはないと、終始気持ちが揺らぐ
ことはなかったようですから、もしかしたら娘はわざと事故を起こして
無理心中を謀ったのかもしれませんな。
くだらない真似をして馬鹿なヤツだ、全く……」
「私は弱いビールで、事故当時はウトウトしてまして
どんなふうに事故に至ったかは分からないのですが
そんな……まさか」
そう口にするだけがやっとで……俺は父親の推測に絶句
するしかなかった。
翌日会社に行き、北原紗栄子の勤める支店に連絡を
取り、彼女が事故に遭って入院したことを知らせておいた。
恐らく親族であろう緊急連絡先へ支店の社員が
伝言してくれるだろう。
その内、北原と親族から呼び出しがあるに違いない。
憂鬱だ……だが仕方のないことだ。
案の定……
この翌日、北原紗栄子の父親から電話があった。
「娘は今錯乱状態で何を聞いてもあなたにお腹の子を
殺された、騙されたというばかり。
だが運転していたのも娘で、事故を引き起こしたのも娘だという
ことは警察のほうの調書ではっきりしています。
娘の言ってる事は辻褄の合わないことだらけでして、娘の言い分を
鵜呑みにはできません……がお腹の中の子の父親があなただと言うことは
確かなんですよね?」
「はい、その通りです。
娘さんの側にずっとついていられなくて申し訳ありませんでした。
お腹の子のことについてもそれと私たちの関係についても、1度お話
させていただかなければ、と思っています」
何もこちらの理由など聞く耳など持たない、娘を弄んだ不埒者と、
そしられることも覚悟していたので事の外、理性的な感じの北原の父親に
ドキドキしていた気持ちが少し和らいだ。
◇ ◇ ◇ ◇
しかしだからこそ話し合いの場では、北原とのことを
厳しく追求されるだろう。
ここは正念場だなと思った。
翌日泣きたくなりそうな気持ちを捻じ伏せて、北原の父親に
これまでの経緯を話した。
あまりに異常な娘の言動に父親は絶句した。
「既婚者だと知った上であなたを誘惑して意図的に妊娠を謀った
娘のお腹の子は死んだ。
子もそんな母親と父親になれないあなたとの間に
産まれては大変と天国へ逆戻りしたのでしょう。
聡い子だ。
私もお腹の中の子の選択が正しいかったと……そう思いますよ。
それとあなたと娘の話からすると、あなたは頑なに妻子と離婚は
しないし、娘とどうこうするつもりはないと、終始気持ちが揺らぐ
ことはなかったようですから、もしかしたら娘はわざと事故を起こして
無理心中を謀ったのかもしれませんな。
くだらない真似をして馬鹿なヤツだ、全く……」
「私は弱いビールで、事故当時はウトウトしてまして
どんなふうに事故に至ったかは分からないのですが
そんな……まさか」
そう口にするだけがやっとで……俺は父親の推測に絶句
するしかなかった。
4
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。


王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる