裏切りの扉  

設樂理沙

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" 空気読めない痛い女13 "

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13.


  絶望的な気分の俺の元に北原紗栄子から電話がきた。
 彼女からだと知っただけで気分が更に急降下した。

 かなりの重症だな……紗栄子トラウマ症候群とでもいおうか!


「ねぇ、私奥さんに電話しちゃった。
 だって我慢できなかったのよ?

 心配しなくっていいのよ……奥さんあなたが私のお中の子
認知してもいいって。

 反対しないって。

 最初奥さんにものすごく腹が立ってたんだけどね、物分かりの良い
奥さんで助かったわ。

 もう一押しすれば、あなたのことも諦めてくれそうな感じがした。
 だからね、私……認知だけしてもらうっていう遠慮がちな要望だけ
じゃなくってさぁ、、あなたのことも奥さんから奪っちゃおうかなって
……ふふふっ」




 俺は2人のやり取りをほぼ全て萌枝が録音していたスマホから
聞いていて把握している。



 妻の真意を全く汲み取らず何と自分勝手なことばかり。



 確かに萌枝から『北原と一緒に暮らしてあげて、結婚してあげて』
とまで俺は言われたが、北原自身に向けてそんなことはひと言も
妻は言っていない……。


 

          ◇ ◇ ◇ ◇




 北原の押しの強い要請に、きっと萌枝は自分との離婚を
本気で考えるようになったのではないだろうか。



「北原さん、俺は妻とは離婚しないよ。
 君の主張がどんどん自分よがりになってきてるの自覚ないの?
 俺は妻と息子を愛してる。
 だから君との結婚は絶対有り得ない。分かった?」


 「まぁいいわ。
 その内私の良さを認識してもらうとして、じゃぁ、とにかく
認知の件をひとまずお願いするわ。
 すんなり、認知しといたほうがいいと思うわ。

 だって万が一認知してくれないなんてことになったら私、
何するかわかんないわよ?

 あなたの会社に凸出張っちゃうかもねフフッ」




 怖い女だなぁ。

 こんなことが会社に知れたら、間違いなく出世の道は絶たれるだろうし、
最悪は懲戒解雇になるかもしれない。

 そしたら俺の、いや息子や妻も含め路頭に迷うことになるのだから、
俺たちの人生は詰む。


 この時、本当に自分は今崖っぷちに立たされているのだと認識した。


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