裏切りの扉  

設樂理沙

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" キチな女は必死9 "

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9.☑


 あのキチな女、北原紗栄子からなんと電話がかかってきた。

 彼女に対してかなり及び腰になっている夫の様子を
見ていたので、近日中に彼女から何かしらのアクションが
あるのでは? と思ってはいたのだけれど。


 夫にではなく、ターゲットを私に変えてきたんだ。

 はぁ~! 

 そう思いつつ冷静に彼女からの話を電話越しに
聞いたっていうか、聞かされた。



  どういう手管で夫を自分のペースに嵌めていったのか想像に難くないが、
今回浮気相手の妻に直に悪びれることもなく連絡が取れるのだから
相当な玉なのだろうと思う。



          ◇ ◇ ◇ ◇

 
『里中さんの奥さんですよね? 
 わたくし北原栄子と申しまして、ご主人と懇意にさせて
もらっている者ですが、ご主人から私のことお聞きになって
ますよね? 
 私、里中さんとの子供、妊娠してるんです。
 早く認知してもらわないと子供は日毎ひごとに成長してるんです。
 奥さん、私たちのことに口を挟んで認知妨害するのは止めて
いただけません? 

 あなたが私に嫉妬して旦那さんをそそのかしてるのでしょう?
 絶対産ませては駄目だって。
 ほんと見苦しくてな女ね』

と身勝手な文句を言う。

 いかにもフンガァーっていう感じで一方的に話す紗栄子だった。


--



『待ってくださいよ、あなたかなり興奮してらっしゃる
ようだけど、うちの主人がそうあなたに言ったんですか?
 私に認知するなと反対されているって』



『奥さんの名前は出さなくったって判りますよ。
 自分の子なのに認知したくないなんて、よほどあなたが怖いか、
あなたに反対されてるからに違いないってね』



『それは、単なるあなたの妄想っていうヤツだわね。
 まず、はっきりと申し上げておきますが
私は一切そんなこと夫に強要などしておりません。

 だからって夫が他所で子供を作るなんて到底納得
できるもんじゃないですけど。

 普通はこういう場合大抵妻側は難色を示すのが普通でしょうね。

 だけど……私は言ってません。
 こんな一大事、当事者のあなたと夫とで決めてください。
 そもそも何で私にそんなことわざわざ話すんですか?

 私にじゃなくて、当事者の夫に言いなさい。
 私とあなたの子でもないでしょうに』



 言いながらちょっと私も頭に血が昇ったのかも。

 私とあなたの子でもないでしょうに、なんていう
命令口調の物言いをしていた。

 私と栄子の間には200%子はできないわ。アハンっ!

 駄目だ、落ち着け萌枝!


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