裏切りの扉  

設樂理沙

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" 命の重み 7 "

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7.



 私は夫から告白された浮気の件でモヤモヤしていた。


 浮気のことはもちろんなのだけれど、
そして一瞬聞き流してしまいそうになったけれど、



夫は確か……
相手の北原紗栄子という女性に堕ろして欲しいと
懇願していたのだ。


 私だって産んでほしくはないよ? 
 だけどね、その子仮にもあなたの子なんだよ?

 血の繋がった子を堕ろすですって?
 おろすですって?


 私がそう望むのとあなたがそれを望むのとは
違うと思う。

 例え過ちだったとしても、自分の子なんだから。




 堕ろせだなんて、浮気の件も併せてあんなに愛していた夫なのに……
私の中で別の感情が芽生え始めていた。


 尊敬も愛情も、私の中から消えていきそうだ。


 実際経験するのと、タラレバで経験したつもりになるのとでは、
全く違う所へ気持ちが着地することもあるのだなぁと、身を持って
経験……だね。



 夫は何としても私とやり直したいと考えているようにみえる。

 やり直す
 やり直す

 そんなことができるのだろうか?

 自分の心の内を覗いてみても、やり直すという言葉は
どうもしっくりこない。




          ◇ ◇ ◇ ◇



 いつか結論を出さなきゃだけど、shockが大き過ぎて
手に余る案件だ。

 私の手の中に切り札があるのだから、自分の気持ちを模索しつつ、
ゆっくり進めていこうと思っている。

          


           ◇ ◇ ◇ ◇


「ねぇ、認知の件どうなったのかしら? 
 早く決めてくれないと一日ごとにお腹の子は大きくなってくんだけど?

 後は迷惑かけないって言ってるんだからそんなに渋らなくても
いいんじゃないの? 

 養育費だっていらないって言ってるじゃない」





 俺の前にいる女は前回と同じことしか言わない。


 妻は妊娠の話を聞いてひとこと言った。
『ほんとにあなたの子なの?』と。


 その後、妻からは俺の子ができたことについて
何も言ってはこない。
 
 ただ、つらそうにしているだけ。




 だけど、普通に考えて自分との子じゃない婚外子を夫が作ったら、
怒る妻はいても、そうはいはいと許す妻などいないよな?




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