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" 逆転した立場5 "
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5.
きっと私の下手糞な意見を聞きながら……
幸せな結婚生活を送ってる萌枝に何が判るっていうの、って
当時の祐子は思っていたに違いない。
数年の時を経て、立場が逆転した。
私は祐子の気持ちなんて何一つ判ってなかったんだって
ことを今回身を持って知った。
当時祐子の元旦那に頼まれたとはいえ、簡単に
『元サヤに戻ったほうがいいのでは?』なんて祐子に意見した自分を
殴りたいくらいだ。
人間なんて想像力で問題を片付けられることもあるけど、想像力で
モノを考えるのと現実の問題に直面してその問題に対峙するのとでは
そのふたつの間にどれほどの乖離があるのかと、身を持って私は
経験することとなった。
そんな当時のことを思い出しながら、私の身に起こっている出来事を
祐子に吐き出した。
私の話を聞いていた祐子が言った。
「38才、子供を産めるぎり年齢で崖っぷち女だよね。
あなたの旦那、最初から狙われてたのよ、きっと。
前の職場の時から隙あらばって思ってたのね。
でも中琉さん根が真面目だから隙がなくて断念してたところ
意外にも支店ごとの懇親会があって、今回は中琉さんの中に
隙を見つけた……っていうか、自分のペースに中琉さんを
引き込むことに成功したんでしょうね。
しかしあざとい女だわね。
妻も子もいる既婚者捕まえて妊娠まで企むなんて狂ってるとしか
言いようがないわ。
認知かぁ~、きっつい選択肢だわよね。
翔琉くんの一生にも関わってくる問題だもの」
◇ ◇ ◇ ◇
「祐子……」
「ン?」
「祐子に元旦那さんとの再構築を簡単に勧めた
私を許してほしい」
「うん、判った。それに今あたし、幸せだからさ大丈夫だよ。
萌枝以外にだって両親や義両親友達同僚、みんな許してやれって
声多かったしね。
萌枝の意見があながち外れてたわけでもないしさ。
だけど、自分の心のままに進んで良かったって思ってる。
だからね、萌枝にも自分の心に正直な道を歩んでもらたいなって思う。
ありきたりで陳腐な言いぐさになるけれど、明けない夜はないからさ」
「そうだね。それに自分に起きたことは他のどんな人にも
代わってもらうことなんて出来ないんだから、よく考えて
前に進んでいくわ」
「そうだよ、そのいき。疲れた時は休みやすみね」
電話を切った後、私にもいつかまた笑って過ごせる日々が
戻ってくるのだろうか、とそんな風なことを思った。
きっと私の下手糞な意見を聞きながら……
幸せな結婚生活を送ってる萌枝に何が判るっていうの、って
当時の祐子は思っていたに違いない。
数年の時を経て、立場が逆転した。
私は祐子の気持ちなんて何一つ判ってなかったんだって
ことを今回身を持って知った。
当時祐子の元旦那に頼まれたとはいえ、簡単に
『元サヤに戻ったほうがいいのでは?』なんて祐子に意見した自分を
殴りたいくらいだ。
人間なんて想像力で問題を片付けられることもあるけど、想像力で
モノを考えるのと現実の問題に直面してその問題に対峙するのとでは
そのふたつの間にどれほどの乖離があるのかと、身を持って私は
経験することとなった。
そんな当時のことを思い出しながら、私の身に起こっている出来事を
祐子に吐き出した。
私の話を聞いていた祐子が言った。
「38才、子供を産めるぎり年齢で崖っぷち女だよね。
あなたの旦那、最初から狙われてたのよ、きっと。
前の職場の時から隙あらばって思ってたのね。
でも中琉さん根が真面目だから隙がなくて断念してたところ
意外にも支店ごとの懇親会があって、今回は中琉さんの中に
隙を見つけた……っていうか、自分のペースに中琉さんを
引き込むことに成功したんでしょうね。
しかしあざとい女だわね。
妻も子もいる既婚者捕まえて妊娠まで企むなんて狂ってるとしか
言いようがないわ。
認知かぁ~、きっつい選択肢だわよね。
翔琉くんの一生にも関わってくる問題だもの」
◇ ◇ ◇ ◇
「祐子……」
「ン?」
「祐子に元旦那さんとの再構築を簡単に勧めた
私を許してほしい」
「うん、判った。それに今あたし、幸せだからさ大丈夫だよ。
萌枝以外にだって両親や義両親友達同僚、みんな許してやれって
声多かったしね。
萌枝の意見があながち外れてたわけでもないしさ。
だけど、自分の心のままに進んで良かったって思ってる。
だからね、萌枝にも自分の心に正直な道を歩んでもらたいなって思う。
ありきたりで陳腐な言いぐさになるけれど、明けない夜はないからさ」
「そうだね。それに自分に起きたことは他のどんな人にも
代わってもらうことなんて出来ないんだから、よく考えて
前に進んでいくわ」
「そうだよ、そのいき。疲れた時は休みやすみね」
電話を切った後、私にもいつかまた笑って過ごせる日々が
戻ってくるのだろうか、とそんな風なことを思った。
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