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1巻

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 どうしよう。思っていたより何倍もキスがうまい。
 このままではリードを奪われてしまいそうで、顔を離そうとしたら、頬を両手で固定された。耳のつけ根を指先でなぞられ、ぞくっとした痺れが走る。反射的に首をすくめたら、狙ったかのように舌をからめとられた。それまでは控えめだった動きが、一気に大胆になる。

「ぅっ……ぁんっ……」

 舌が動くたび、クチュクチュといやらしい水音が耳を犯す。アルコールのせいもあってか、頭がぼうっとしてきて、一方的な舌戯にあえがされ続ける。
 息継ぎをした拍子に、ニットの裾からするりと手が忍び込んできた。ビクッと肩を跳ねさせると、彼はなだめるようにゆるゆると口腔を舌で撫でる。

「ん、ふ……っ」

 吐息を漏らした次の瞬間、背中のホックが外された。緩んだブラの下から侵入した手が、膨らみを直接包み込む。

「やっ」

 反射的に押し返そうとしたが、彼の方が早い。膨らみをこねられ、咥内を激しく舌で愛撫される。痺れるような快感が湧き起こり、お腹の奥がキュンと収縮する。下肢の奥からとろりと蕩けだすものを感じ、内ももをキュッと擦り合わせた。

「感じやすくてかわいいね」

 耳のすぐそばで聞こえた艶やかな中低音に、はっと我に返った。
 私だってそれなりに場数を踏んできたのだ。学生君に一方的に転がされるだけだなんて、年上のプライドが許さない。

「きみの方こそ、案外上手なのね」

 にこりと微笑んでみせると、彼がクスッと笑う。

「そう言ってもらえるとうれしいな」

 前髪と眼鏡のせいで表情は相変わらずよく見えないが、余裕しゃくしゃくといった感じだ。内心ムッとした。一方的にやられっぱなしはしょうに合わない。
 私は眼鏡を外し、こたつの上に置いた。代わりに缶ビールをつかむ。そのまま勢いよくあおり、彼の頭を引き寄せて唇を押し付けた。

「……っ」

 くっきりとした二重まぶたがみるみる見開かれていく。それに構わず口の中のものを一気に流し込むと、ゴクッと嚥下する音が聞こえた。
 彼の胸を思いきり両手で押した。床に両肘を突いて体を支えた彼に、半分乗りかかるようにして首元に唇を寄せる。垂れたビールを拭うようにしながら唇を這わせていくと、彼の体がピクリと跳ねた。そこを強めに吸い上げる。

「ぅ……っ」

 かすかに聞こえたうめきに気分がよくなり、唇の場所をずらしながらどんどん下りていくと、フードが邪魔をした。パーカーの裾をつかんでまくり上げようとしたところで、手を取られる。

「いいの?」
「なにが」
「さすがにこれ以上は止まれなくなるけど」

 彼の言葉に目を見開く。ということは、今ならまだやめられるということだ。すなわち、私の愛撫くらいなんともないと言っているに等しい。――生意気だわ。

「ねぇきみ。そういえば、なんて名前なの?」

 やぶから棒に切り出した私に、彼が目をしばたたかせる。自己紹介なんてしていないのに、いつの間にか彼は私のことを『静さん』と呼んでいた。きっと串富で大将が呼ぶのを聞いていたのだろう。私だけ彼の名前を呼べないのはフェアじゃない。
 彼が名前を口にするのをためらうそぶりを見せた。
 ああ、行きずりの女に名前なんて教えたくないのね。まあそれもわからないではない。後腐れなく遊びたい年頃だものね。

「下の名前だけでもいいわよ。なんなら私が適当に呼び名をつけてもいいし」

 タマ、ミケ、トラ……。考えながら無意識に手が彼の頭を撫でる。
 そうそう、この感触。やっぱりハルに似てる。ふわふわ感がたまらないわ。
「そうね、何がいいかなぁ」とつぶやきながら撫でていると、むすっとした声が聞こえてきた。

「アキオミ」
「じゃあアキね! よろしく、アキ」

 意を決して着ているニットをブラごと脱ぎ捨てた。彼のパーカーも勢いよく脱がせ、彼の首に腕を回して胸と胸を密着させながら見上げる。

「アキが無理ならやめてもいいのよ」

 彼の手が腰に回りギュッと抱きしめられた。そのままゴロンと上下を入れ替えるように転がされる。手のひらひとつ分の距離から真っすぐに見下ろされた。

「煽ったのはあなただからな」

 言うや否や口を塞がれ、すぐに熱い舌が口腔に押し入ってきた。迎え入れるように自らのものをからめる。
 互いの唾液をかき混ぜながら舌を舐め合うと、クチュクチュと淫靡な水音が響く。密着している彼の胸で膨らみの突起がこすれ、痺れるような快感が湧き起こった。
 二度目のキスはさっきより遠慮がない。舌使いが巧みで、とても気持ちがいい。声だけじゃなくキスまでどんぴしゃだなんて驚きだ。
 彼の首に腕を回してキスに没頭していると、パンツのウエストに手をかけられた。タイトなタイプなので、こたつが邪魔をしてなかなか脱げない。まどろっこしく感じたとき、横抱きにひょいと抱えられた。

「わっ!」
「寝室は隣?」
「え……う、うん」

 私の返事を聞くとすぐに彼は隣の部屋へと向かう。
 リビングと稼働式ボードで仕切られた寝室は四畳しかなく、大部分をセミダブルのベッドが占めている。長い脚であっという間にたどり着いたベッドの上にそっと私を横たえると、彼は今度こそ私が身につけているものすべてを一気に取り払った。

「うぅっ」

 肌を覆うものが何ひとつない、無防備な姿に羞恥が込み上げる。

「きれいだ……」

 彼はまぶしいものでも見るように目をすがめた。羞恥と居たたまれなさで顔を背けると、彼はすくうように乳房を包み、長い指をやわやわと動かし始める。

「やっ」
「サクランボみたいでおいしそうだね」

 先端の実を、根元からキュッと摘ままれた。

「ゃあ……っ」

 クリクリとこよりをるように優しくひねられ、むず痒さに似た甘い快感に、甲高い声が口から飛び出す。身をよじって逃げようとしたけれど、のしかかっている体はびくともしない。

「赤く熟れて、まるで今にも食べてと言わんばかりだ」
「なっ……ぁんっ」

 突起にチュッと吸い付かれ、背中がのけ反った。彼はそのまま頂を舌の上で転がし始める。

「やっ、ぁん、ぅふ……っ」

 いやいやをするように頭を振って必死に抗うが、舌の動きは少しも緩まない。それどころか反対側の膨らみも手で揉みしだき始めた。下半身がジンジンと痺れ、ナカから蜜がとろりとこぼれてくる感触がして、内ももを擦り合わせる。次の瞬間、足のつけ根をするりと撫でられた。

「ふぁ……っ」
「濡れてるね」

 わかってはいたが、改めて口に出されると思った以上に恥ずかしく、下唇をキュッと噛んで赤くなった顔を背ける。
 彼の指がしとどに濡れた花弁をそっと開くようにして、蜜口へとたどり着いた。

「すごい。とろとろだ」
「いっ、言わないでっんん……っ」

 あふれ出る粘液をかき出すように指先を小刻みに動かされ、下腹部が疼く。今にも入ってきそうでなかなか入ってこない指先に、もどかしさが募った。

「もっ、や……あんっ」

 耐え切れず身悶えすると、胸の頂をパクリと咥えられた。ジュルッと音立ててきつく吸い上げられると同時に、指が蜜壺へ沈み込んでくる。

「あぁ……ぅっ」

 じわじわと隘路あいろに侵入してくる異物感に思わず息を詰めると、指を止めた彼が「せまいな」とつぶやいた。
 ドキッとした。異性とコトに及ぶのは実に三年ぶりなのだ。年上ぶって偉そうなことを言った手前、セカンドバージンだなんて明かせるわけがない。遊び慣れていない若者にはバレないだろうと高をくくっていたが、このままでは危うい。なんとかごまかさないと……
 思い切って彼の下半身をするりと撫でた。

「……っ」

 ビクッと背中を跳ねさせた彼の耳元に口を寄せる。

「アキのも、大きくなってるね」

 言いながら前立てを開いて、ボクサーパンツ越しに、張り詰めたものを撫でる。

「ちょ……静さんっ」
「自分だけ触るなんてずるいわよ」

 一緒に気持ちよくなりたくない? と微笑んで彼の昂りを手探りで取り出した。途端、予想外のサイズ感にピタリと手が止まる。張り詰めた劣情の証をつかんだまま動きを止めていると、隘路あいろの途中で止まっていた指がクイッと曲がった。

「やっ……!」
「そうだね、一緒に気持ちよくなろう」

 ゆるゆると柔壁をこすりながら奥に沈んでいく指に合わせ、握っている手を上下させる。「はぁ……」と色っぽいため息を漏らした彼が、指先で柔襞をこするように抜き差ししながら、耳元でささやく。

「すごく気持ちいい」

 艶のある中低音に下腹部がキュンと疼く。

「私も……もっと気持ちよくなりたい」

 強くなりすぎない程度に手に力を込めて、動かすスピードを上げる。亀頭を親指でこすると先端から白濁した液がにじみ出してくる。感じているのだとわかり、下腹部がギュッと収縮した。
 もう片方の手も添えようとしたところで、蜜壺に埋まる指を増やされる。圧迫感に「んんっ」とあえいだ。ナカに埋めた指を抜き差しされながら、同時に親指の腹で秘芽を優しく撫でられる。

「あんっ……それ、やっ……うぅ……っ」

 痺れるような快感が込み上げて、彼の指をキュウキュウと締めつける。徐々に内壁を広げる指の動きが激しくなる一方で、花芽にはゆるゆると甘やかな刺激が加えられた。
 高まる性感に追い詰められていく。
 花芽を押し潰しながら隘路あいろの奥を強くこすられた瞬間、ひと際強い快感が全身を駆け巡った。

「あ、やっ……あぁぁ……っ」

 頭が真っ白になり、ピンと足先まで力が入る。隘路あいろがわななく感覚に身悶えた。
 一気に弛緩した後、ぐったりと荒い息をつく。まさか三年ぶりで、しかも学生相手にここまで感じるとは思わなかった。
 気だるい充足感に浸りながらぼんやりとそう考えていると、彼がおもむろに起き上がり寝室から出ていった。

「アキ……?」

 どこへ行くの? まさかこれで終わるつもりじゃ……
 いつの間にか手を放してしまった剛直は、きっとまだ猛っているはずだ。いったいどうしたのだろう、と訝しんでいるとすぐに戻ってきた。彼が持っているものを見て「あ!」と声が出る。避妊具の箱だ。
 いざとなったらうちにあるものを使えばいいかと思っていたけれど、直前まで言うつもりはなかった。引っ越しのときに色恋関連のものは全部捨てたと思っていたのに、どこからかぽろっと出てきたのだ。触るのも嫌だったため、救急箱の底に入れたままになっている。

「それ……持ってたんだ」

 意外、と言いそうになったがギリギリでのみ込めた。さすがに初めてだとは思っていないが、真面目な青年だと思っていただけに驚いた。旅行の荷物にしっかり入れていたなんて。
 やっぱり実は遊んでいるの……? 
 彼の顔をじっとりと見つめると、彼がクスッと小さく笑う。

「ついこの前まで海外にいてね。念のため持っていけってもらった餞別が入れっぱなしになっていたんだ」

 見せられたそれは確かに封が切られていない。なぁんだ、やっぱり真面目の方だったか。
 ふうっと息をついたら、彼が箱から中身を取り出していた。

「私がしてもいい?」

 彼は一瞬目を見張ったが、すぐに小さな包みを私に渡して自分はヘッドレストに背中を預ける。
 ちらりと彼の脚の間が目に入り、ゴクンと唾をのみ込む。四角い袋から取り出した薄膜を、お腹につくほどそそり立っている剛直の先端にあてがった。
 慎重に根元まで被せ終え、意を決して腰を持ち上げる。片手で屹立を支えて丸い亀頭を蜜口に合わせ、ゆっくりと腰を落とした。

「……っ」

 ヌプリ、とぬかるんだ蜜口から切先が潜り込んでくる。隘路あいろをみちみちと開かれる感覚に、思わず息を詰めた。
 三年のブランクがあるため、自分からの方がスムーズにできるかもと思ったが、いかんせんこの質量。どちらでも変わらなかったかも――と今さらすぎる考えがよぎったが、もう遅い。やると言ったのは自分だ。
 幸い隘路あいろは潤沢な蜜であふれていて痛みはない。無意識に詰めていた息をふうっと吐き出したとき、突然乳房を両手で持ち上げられ先端をぺろりと舐められた。

「ひゃっ……ぁんっ」

 すっかり無防備だったせいで甲高い声が飛び出す。反動で腰が揺れて剛直が内襞をこすり、ジンとした愉悦が走った。

「も、もう……」

 勝手なことしないでと言いたいのに、頂の実を転がすようにちろちろと舐められ、甘い快感に内襞がギュッと収縮した。

「あんっ、やっ……それだめ……っ」
「静さんのナカ、こうするとすごくヒクヒクするね。やっぱりここが敏感なんだ」

 話しながらも彼の手は止まらない。乳首を指の間に挟み、膨らみと一緒に揉みしだき始める。

「はっ……うぁ……っ」
「狭くて温かくて気持ちよすぎるよ。そろそろ動いていい?」
「だめっ! いい子にしてて」
「仕方がないな。いい子にしてたらご褒美くれる?」
「なにそれ……ぁんっ」

 固く尖った頂を口に含まれ、最後まで言わせてもらえない。
 意思とは関係なく、蠕動ぜんどうする柔襞が屹立を奥へといざなっていく。圧倒的な存在感がじわじわと隘路あいろを侵食していき、胸への愛撫と相まって悶えあえぐことしかできない。
 気付いたら屹立をすべてのみ込んでいた。

「ぁう……っ」

 最奥までみっちりと彼のモノに埋め尽くされ、どうしようもないほどの快感が込み上げる。あと一ミリでも動いたら達してしまうかもしれない。涙目になりながらも、浅い呼吸をくり返して必死に快感を散らそうと試みる。ビクッと震えるだけでお腹の底が熱くなり、彼の首に腕を回してしがみついた。

「……っ」

 耳元で彼が息をのむ音がした。
 感じているのは私だけじゃないんだわ……
 快楽で麻痺していた思考がかすかに回り始める。年下にいいように転がされるわけにはいかない。年上の意地を必死にかき集め、彼の首に抱きついたまま、耳元に口を寄せる。

「アキの、硬くて大きっ……」

 彼がぐうっと喉を鳴らす。眉根を寄せ、長いまつげを震わせている様子がなまめかしい。
 感じてくれているのだと思うと、私のナカで存在感を主張する陰茎がかわいく思えて、お腹のあたりがキュンと疼く。じっとしているうちに最初よりも彼の形がなじんできた。思い切って腰を持ち上げる。
 内襞をぞろりとこすられる感触にあえぎそうになるのを、奥歯を噛んでやり過ごし、腰を落とした。
 グチュリと、ぬかるんだ蜜壺が粘ついた音を立てる。そそり立つ楔を自ら抽挿させるのは、自分のペースで快感を調節できるのがいい。アキは私の腰に手を添えているだけで、されるがままだ。時折あえかな吐息を漏らすので、きっと快感に耐えているのだろう。年下の彼を気持ちよくさせていることに気分が高揚した。キュウキュウと甘くすぼまる媚肉を剛直にまとわりつかせながら、一心不乱に腰を上下させる。

「はっ、イイっ……アキは? 気持ち……いいっ?」
「ああ、すごくイイ」

 彼の返事に満悦したが、「でも」と続く言葉が聞こえる。

「そろそろ限界だ」

 吐息交じりに聞こえた苦しげな声に、彼の果てが近いのだと知る。正直これ以上は私も限界だと思っていた。なんとか年上の沽券を保ったまま終われそうだと内心ほっとする。
 しかし次の瞬間、突然臀部を両手でつかまれた。「あっ」と口にすると、彼は下の双丘をこねながら軽くトントンと跳ねるように腰を動かし始めた。

「んあっ! やっ……それ、だめ……んっ」

 彼の手がギュッと臀部を握るたび、押された隘路あいろが形を変えて剛直を締め付ける。

「もうしばらくエロくてきれいなあなたを見ていたかったけど、がまんの限界だ。おとなしくいい子にしていたんだから、ご褒美をもらってもいいよね」
「え! ご褒美って……あっ」

 言い終わる前に視界が反転した。情欲に濡れた視線が真っすぐに降り注ぎ、心臓がドクンと波打つ。彼が腰を大きく引いた。

「んっ……あぁぁ……っ」

 柔襞を擦られる感触に息を詰めたところで、一気に奥まで埋め戻される。切先が奥に当たりクラクラと眩暈めまいがするほどの快感が込み上げた。グチュリ、ジュブリと耳を塞ぎたくなるような卑猥な水音を立てながら、抽挿のスピードが上がっていく。
 シーツをつかんで必死に顔を左右に振るけれど、高まる快感から逃れるすべはなく、口から淫らなあえぎ声が漏れ続けた。年下に転がされるだとか年上の余裕だとか、一切考える余裕はない。
 両膝を抱えられて左右に大きく割り開かれる。

「あんっ深ぃっ……はん……っ」
「すごいな、どんどんあふれてくる。静さんのナカ、今にも喰いちぎりそうなくらいギュウギュウに締め付けてくるよ」
「やっ、言わないでっ」
「あなたになら喰われてもいいな」

 何をばかなことを! と言いたいのに、口からは淫らな声しか出てこない。奥の一点をズンッと突かれた途端、甲高い声が飛び出した。

「ひぁんっ」
「ここ?」

 同じ場所をくり返し突かれて、込み上げてくるものに涙がにじむ。

「やらっ……もっ……いっちゃ……ぅんっ」
「がまんしなくていいよ」
「あっ、ぁぁあ……っ」

 速度を上げながら微塵もずらさず同じ場所を幾度も突かれて、瞬く間に性感が極まる。隘路あいろが屹立をきつく絞るように収縮し、頭が真っ白になった。
 一気に体が弛緩し、ぐったりとシーツに身を投げ出す。荒い息をついていると額に唇が降ってきた。チュッと音を立ててから、目尻をぺろりと舐められる。

「感じやすくてすごくかわいいね」

 余裕のある声色でささやかれ、年下のくせにやっぱり生意気だわと思ったのもつかの間、彼が再び腰を引いた。

「やっ待って、私まだいったばかり……んぁんっ」

 腰をグラインドされて背中がのけ反った。

「もう十分待ったよ。ここからは僕の番だ。もうしばらく付き合ってもらうよ」
「そんなっ……あんっ」

 片手で乳首をキュッと摘まんだ彼が、ギリギリのところまで雄竿を引き抜いた。ともすれば亀頭が出ていきそうで、無意識に蜜口が締まる。彼は一瞬苦しげに眉根を寄せると、熱く漲る自身を蜜壺の中に押し込んだ。

「ひあぁぁ……っ」

 目の裏にチカチカと火花が散る。極まったばかりのからだは恐ろしいほど敏感だ。パンパンッと音を立てながら激しく腰を打ちつけられ、一気に性感が高まっていく。

「んっ、や、あ……あぁんっ」

 片足を膝が胸につくほど上げられ、嬌声が口から飛び出す。さっきとは違う場所を突かれてからだの芯がギューっと収縮した。

「っ、……そんなに締めたらもたないっ」
「そん、なのっ……しらっ……ぁんっ、もっむり……ぃっ、アキっ」

 彼の首に腕を回してすがるように抱きつく。

「ああ、僕もそろそろっ……いいっ?」

 うなずくと抽挿が速まる。思うさま揺さぶられて甲高い声がひっきりなしに口から漏れる。

「あっ……もっ、いっ……ぅんあぁぁ……っ」
「……っ」

 最奥を強く突かれたとき、一気に快感が弾けた。ビリビリッと電流のように強い快感が駆け巡り、つま先までピンと硬直する。彼は二度三度腰を突き上げると、ぐっと息を詰めた。薄膜越しに熱を放つ感覚に柔襞がわなないて、頭の中が真っ白になった。



   第二章 ここは竜宮城ではございません。


 一月下旬の今、午後六時を過ぎると外はもう真っ暗だ。三連休明けの仕事がやっと終わった私は、立ち仕事で重くなった足を引きずるようにして帰路に就いた。
 公休がシフト制のため、私が休んでいる間も当たり前ながら職場は通常営業だ。二日以上連続して休むことが滅多にないせいか、三日留守にしただけで置いてきぼりにされたような気分になった。
 竜宮城から戻ってきた浦島太郎うらしまたろうの気持ちになりながら、亀並みにのろのろと自転車を漕ぐ。通勤は基本的に自転車だ。自宅まで十分かからずに着く。

「さっむうぅぅっ」

 顔に当たる冷たい風に肩をすくませた。この冬一番の寒気が日本列島を覆うと耳にしたのは、気のせいじゃなかったようだ。空気は刺すように冷たく、手袋をしていても指先が冷たくなってくる。むき出しの耳はすでにジンジンと痺れていた。いつもならチョコマカロンのようなイヤーマフをつけているのに、こんな日に限って忘れてしまったのだ。今朝、彼を家から叩き出した勢いのままにバタバタと出勤したことが悔やまれる。年下っていうのは、甘い顔をしていたらすぐに調子に乗るものなのかもしれない。

「あのドラ猫め……」

 いや。ドラ猫じゃなかったドラか。いやいや、それだと働かずに親のすねをかじってばかりいる怠け王子みたいよね……。きちんとしたご職業をお持ちの御曹司が、怠け者のドラ息子であろうはずがない。
 もうなんでもいいわ。考えただけでぐったりする。
 今朝、更衣室からの移動中にばったり出くわした後、朝礼で紹介されるアキを遠目に眺めながら脳内は大パニックだった。
 そりゃそうだ。傷心旅行中の学生だと思っていたら、なんとその正体は、我が社グループの最高マーケティング責任者、当麻聡臣CMO様だったのだ。
 三連休明けにこの仕打ち。お疲れMAXになるのも仕方ないでしょうよ……

「はぁぁぁ……」

 あと少しでマンションに着くというところで、腹の底から大きく息を吐き出した。
 要はすっかり騙されたのだ。なんの気まぐれか、御曹司のお遊びにまんまと付き合わされたことが悔しくてたまらない。

「私のばかっ、大ばか者!」


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