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Chapter13*泡はなるもの?帰するもの?

泡はなるもの?帰するもの?[2]ー①

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最終プレゼンは無事終了した。

関西支部での発表の時みたいに頭が真っ白になることもなく、最善を尽くせたとは思う。
発表が終わった直後に、晶人さんもそう言って褒めてくれた。

第二部の残りの発表を観客席で聴きながら、わたしは今回の最終コンペに参加出来た幸運をしみじみ噛みしめていた。

第一部と第二部のすべての発表者がプレゼンを終えたあと、結果の選考時間としてそのまま会場で待つことに。
最優秀賞、優秀賞、の他に特別審査員賞もあるというそれは、一緒に金一封も出るという。

仕事で来たのに褒賞まで貰えるとか! Tohmaうちの社長ってば、なんて太っ腹なの!

あ、『太っ腹』はものの例えってやつですから。
当麻CEOのお腹は全然出ていませんでしたので、悪しからず。

まあ、結果はどうあれ、グループ全社から集められた選りすぐり企画案を生で聴くことが出来たのだ。これまでにないほどの刺激を受けたし励みにもなった。これからの業務にも活かそう。うん、社畜万歳。

***

待つこと三十分。どうやら結果が出たようだ。

壇上には司会進行の男性。最初に見た時からずっと気になっていたのだけど、あれって……。

「結城課長……あれって前に関西工場うちに来てたなんとかって統括さんじゃ……」

隣の席に座る晶人さんに小さな声で訊ねると、彼はすぐに「ああ、そうだよ。本社の高柳統括マネージャ―だ」と返事をくれた。

てことは、彼はやっぱりアキの……。

CMOアキ直属部下のあの人なら、何かアキのことを知っているかも……。
この会がお開きになったらすぐ、あの統括さんを捕まえて訊いてみようかな。

壇上で受賞者を発表する高柳統括のことを、絶対に逃してなるものか! という目つきで睨んでしまう。
すると横から晶人さんがわたしを呼んだ。

「……わ、…かわ、静!」
「は、はい!」
「おまえ、……今、呼ばれたぞ」
「え、」
「審査員特別賞だと……」
「えぇっ!」
「しかも“CEO賞”だ」

えええぇぇーーーーっ!!!

あんぐりと口を開けたまま固まっていると、「受賞者の皆さまは壇上にお越しください」と女性の声でアナウンスが入った。

「ほら、静川。行ってこい」

晶人さんに促されて、わたしは壇上へと進み出た。

何が何だかよく分からないうちに、と当麻CEOと向かい合うことに。

間近で見るCEOは写真で見るよりも若々しく、渋さ漂うダンディなおじさまで。
賞状と盾と金一封を頂く時に「おめでとう。これからも頑張ってください」という言葉も頂いた。

目尻にかけて少しだけ下がる二重まぶた。優しげなその瞳がアキととてもよく似ていて、その瞳が優しく細められるのを間近で見た瞬間、一瞬で目に涙が盛り上がった。

わたしはCEOに「ありがとうございます。精進いたします」と頭を下げたあと、滲んだ涙をそっと拭った。きっと周りには“嬉し涙”に見えただろう。 

かくして、全社グループコンペ大会の最終プレゼンは無事幕を閉じた。

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