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6.大人の華金デート***
[2]ー4
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いつも彼がしていることを思い出し、必死に舌を動かす。歯列や口蓋、頬の裏を撫でていく。舌のざらざらした表面をこすり合わせたところで、それまでされるがままだった彼が、ゆっくりと動き出した。
「んっ……ふ」
ぞくぞくと甘い痺れが腰からはい上がってくる。自分だけのときとは違う甘やかな痺れに足から力が抜けそうになり、彼のバスローブをぎゅっと握ると、背中に回された腕に力が込められた。
彼に導かれるようにして必死に舌を動かしているうちに、口づけがどんどん激しくなる。彼の口腔にいたはずの私の舌は、いつの間にか自分の方へと押し戻された。
このひと月ほどで彼に開拓された咥内のよいところを、余すところなく責め立てられる。頭がぼうっと白み、バスタブの底に突いている膝がふるふると震える。腰と後頭部を支えてくれる腕がなければ、再び湯舟の中に沈んでしまいそうだ。
もう無理だと思ったころ彼の舌が出て行った。自由になった口から酸素を取り込んでいるところに、思わぬ言葉が聞こえてくる。
「お礼に体も洗いたいって言ったら、許してくれるか?」
「え、お礼って……」
「たとえお世辞でも、香ちゃんが褒めてくれたのがうれしくて」
「お世辞なんか言わないし、そんなことでお礼なんて」
「だめか?」
彼が首をかしげた。悲しげに眉尻を下げ、顔をのぞき込んでくる。
なにそれ、その顔。ずるいにもほどがある。
仕事ができてスマートな大人の男性に、こんなふうに甘えた顔でおねだりされて、断れる女の子がいたら見てみたい。
彼はいったい何人の女性を陥落させてきたのだろう。最初は『NO』と言えたとしても、こんなギャップを見せられたら、どんな相手だって彼の手中に収まるに違いない。
無性にお腹の底から沸々となにかが湧いてきた。
「洗ってもらおうかな」
「そうか」
うれしそうな声に自分がなにを口にしたのか気づく。
「え、あ、今のは」
訂正するより早く、浴槽の縁に座らされる。彼は浴槽の栓を抜き、手のひらにボディソープを出す。
「え、手で⁉」
アメニティの中にボディスポンジがあったはずだ。それならなんとなるかとひそかに思っていたのだ。
「ボディソープの洗浄力だけで汚れは十分落ちるんだ。スポンジやタオルでこするよりも、手のひらの方が肌に優しいらしいぞ」
言いながら私の二の腕を両手のひらで包む。そのまま少しずつ表面を撫でるように上下しながら手首まで下りて行く。指の間まで一本一本丁寧に洗われ、まるでマッサージされているようだ。シトラスハーブの香りが広がり、少しずつ緊張がほぐれていく。
「ん、ふぅ……」
両腕の後に肩と首も丁寧に洗われて吐息が漏れた。腕のときとは違って少し力を加えた手で撫でられる。絶妙な力加減だ。常に肩首が凝っているので気持ちがいい。ほうと吐息が出る。
「あっ、そこもっと」
「おまえ……それ、わかってやっているのか?」
「え?」
きょとんとすると彼がはぁとため息をついた。
「まあいい。続けるぞ」
うなずくと、彼がバスタオルに彼が手をかけた。
「ちょっと待って!」
慌てて手を掴んで止めた私に、彼が首をかしげる。
「んっ……ふ」
ぞくぞくと甘い痺れが腰からはい上がってくる。自分だけのときとは違う甘やかな痺れに足から力が抜けそうになり、彼のバスローブをぎゅっと握ると、背中に回された腕に力が込められた。
彼に導かれるようにして必死に舌を動かしているうちに、口づけがどんどん激しくなる。彼の口腔にいたはずの私の舌は、いつの間にか自分の方へと押し戻された。
このひと月ほどで彼に開拓された咥内のよいところを、余すところなく責め立てられる。頭がぼうっと白み、バスタブの底に突いている膝がふるふると震える。腰と後頭部を支えてくれる腕がなければ、再び湯舟の中に沈んでしまいそうだ。
もう無理だと思ったころ彼の舌が出て行った。自由になった口から酸素を取り込んでいるところに、思わぬ言葉が聞こえてくる。
「お礼に体も洗いたいって言ったら、許してくれるか?」
「え、お礼って……」
「たとえお世辞でも、香ちゃんが褒めてくれたのがうれしくて」
「お世辞なんか言わないし、そんなことでお礼なんて」
「だめか?」
彼が首をかしげた。悲しげに眉尻を下げ、顔をのぞき込んでくる。
なにそれ、その顔。ずるいにもほどがある。
仕事ができてスマートな大人の男性に、こんなふうに甘えた顔でおねだりされて、断れる女の子がいたら見てみたい。
彼はいったい何人の女性を陥落させてきたのだろう。最初は『NO』と言えたとしても、こんなギャップを見せられたら、どんな相手だって彼の手中に収まるに違いない。
無性にお腹の底から沸々となにかが湧いてきた。
「洗ってもらおうかな」
「そうか」
うれしそうな声に自分がなにを口にしたのか気づく。
「え、あ、今のは」
訂正するより早く、浴槽の縁に座らされる。彼は浴槽の栓を抜き、手のひらにボディソープを出す。
「え、手で⁉」
アメニティの中にボディスポンジがあったはずだ。それならなんとなるかとひそかに思っていたのだ。
「ボディソープの洗浄力だけで汚れは十分落ちるんだ。スポンジやタオルでこするよりも、手のひらの方が肌に優しいらしいぞ」
言いながら私の二の腕を両手のひらで包む。そのまま少しずつ表面を撫でるように上下しながら手首まで下りて行く。指の間まで一本一本丁寧に洗われ、まるでマッサージされているようだ。シトラスハーブの香りが広がり、少しずつ緊張がほぐれていく。
「ん、ふぅ……」
両腕の後に肩と首も丁寧に洗われて吐息が漏れた。腕のときとは違って少し力を加えた手で撫でられる。絶妙な力加減だ。常に肩首が凝っているので気持ちがいい。ほうと吐息が出る。
「あっ、そこもっと」
「おまえ……それ、わかってやっているのか?」
「え?」
きょとんとすると彼がはぁとため息をついた。
「まあいい。続けるぞ」
うなずくと、彼がバスタオルに彼が手をかけた。
「ちょっと待って!」
慌てて手を掴んで止めた私に、彼が首をかしげる。
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