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4.あの夜の続き***

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「香子」

 ドクンと全身が脈打った。初めて聞く呼び方に驚いて、閉じていた目を開いた。苦しげに眉根を寄せた彼と目が合う。

「大切にすると誓う。最高の初夜にしてやるから、俺にすべてをゆだねて」

 真剣な声におのずと首を縦に振る。私にとってこの時点ですでに〝最高の初夜〟だ。捨てる寸前だった夢を、ずっとあこがれていた初恋の幼なじみに叶えてもらえるのだ。これ以上なにを望むというのだろう。

 蜜口に先端が触れるのを感じ、グッと息を詰めたそのとき。

「赤い糸の相手じゃなくて悪いな」
「んあぁ……っ」

 切先が蜜口を割って入ってきた。ゆっくりと、けれど確実に奥に向かって進むそれに、みちみちと隘路を押し広げられる。ついさっきの指とは比べものにならないくらい大きな質量と熱さで、内側を焼いていくようだ。無意識に体が上に逃げようとするが、腰をしっかりと押さえられている。

「香子、少し止まっているから深呼吸して」

 言われた通りにしようとするが、うまくいかない。意識のすべてを隘路に持って行かれている。

「ぅっ……」

 うまくできない自分が悲しくなる。きっと彼は私の様子を見ながら慎重に進めてくれている。やろうと思えばいくらでも強引に進めることができるはずなのに。

 大丈夫だから進めて、と言いたいのに声が出せない。口がハクハクと空振りする。

「落ちついて。大丈夫だ」

 彼は腰の動きを止め、唇を重ねてきた。半開きになっている口から舌を忍び込ませ、貪るようにあちこちを舐る。同時に片手で胸も愛撫され、甘い疼きが湧き上がり吐息が漏れた。その瞬間、彼が腰を沈み込ませてきた。

「あぅ……っ」

 彼は張り詰めた剛直を抜き差し、徐々に隘路の奥へと沈めていく。熱いけれどさっきほどは苦しくない。口腔と胸への愛撫が甘い愉悦を引き起こし、体の芯が痺れていく。

「全部入ったよ」

 しばらくすると彼はそう言って私をぎゅっと抱き締めた。ほっとしたせいで涙がぽろりとこぼれる。
 繋がれた場所がじんじんする。隘路をいっぱいに埋め尽くすものの圧迫感は相変わらずだけど、達成感からなのか胸が熱くなった。

「やばいな」

 ぽつりとつぶやいた声に顔を上げる。抱き込まれていて彼の顔は見えない。

「控えめに言ってよすぎる。香子のナカ、狭いけど熱くぬかるんでいて……。一生懸命しがみついてくるのは一緒だな」
「やだ……言わないで」
「ほらまた。そんなに締めつけるなよ。がまんできなくなる」

 そんなこと言われても、自分ではどうしようもないのに。

 真っ赤になった顔を伏せたら、耳元に唇を寄せられた。

「よすぎてすぐに果てそう」

 苦しげに息を吐き出した彼にキュンとする。

「そろそろ、いいか?」

 情欲をにじませた声にコクンとうなずいた。彼がゆっくりと腰を引く。ズルリと隘路をこする感覚に小さく声を上げた次の瞬間、今度は引いたときと同じ速さで埋め戻された。彼が腰を上下させるたびに粘り気のある水音が立つ。

 同じリズムで何度か繰り返されるうちに、最初の苦しさは消え、代わりに甘い愉悦が広がりはじめる。

「あっ、やっ……あぁっ……」
「あふれてきたな。これがいいのか?」
「やっ、……っ」

 腰をグラインドさせながら屹立を押し込まれた。グジュリ、と耳を塞ぎたくなるような音が耳を侵す。

「温かくて柔らかくて、そのくせ狭くてきつい。どうにかなりそうだ」

 言いながら彼が抽挿を速めていく。肌と肌がぶつかる音と共に卑猥な水音が響く。体が熱くてたまらない。頭の中までじんじんと痺れて、今にも真っ白になってしまいそう。彼の背中に回した腕に力を込めて、必死にすがりつく。

「お、兄ちゃ……ん」

 もう無理だと続けようとしたら、彼の動きが緩やかになる。ほっと安堵したが、甘かった。

「お仕置きだな」

 え?
 意味を問うより早く背中に手を回され、グイッと引き起こされた。

「やっ……」

 彼の膝にまたがる形で向かい合う。自重で彼のものが深くのみ込んだ。
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