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kiss and cry ***
kiss and cry (2)
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「あきとさんのばかぁ…っ! あたしのこと好きって言ったくせに……静さんとこ行かんどってよぉっ……あたし不安でっ……あきとさんの気持ち、信じられない自分も好かんくてっ……」
固く握り締めていた手で目の前の体をぽかっと叩くと、それが引き金になったように喉の奥から言葉が飛び出た。
彼の胸を叩く度、頬を滑り落ちていく熱いしずく。
晶人さんは「うん」「行かないよ」「ごめんな」と相槌をくれながら背中を撫でてくれて。
甘やかすような声と仕草に涙が勢いを増して、顔も思考もぐちゃぐちゃになった。
「あきとさんのばかっ、腹黒っ、へたれっ……あきとさんなんてあきとさんなんて、大っ……ぅんっ」
突然、何の前振りもなく口を塞がれた。
押し入ってきた熱い舌に、歯列も口蓋も喉の奥まで余すところなくかき回される。
いつの間にか移動していた彼の手が、腰と頭の後ろをしっかり抑えているせいで、身じろぎすらできない。まるで喰らい尽くそうとしているみたい。
飲み下したくてもその隙すらなくて溜まった唾液が、口の端からこぼれ落ちる。
息苦しくなって目の前の体を思い切り叩くと、やっとのことで口が自由になった。荒い息をつきながら、涙目でじろりと睨む。
「言い、たいことぉっ……全部、言っていいって言ったぁ!」
最後まで言わせてもらえなかったことを抗議して、「あきとさんのうそつきっ」と睨みながらさっきより力を込めて彼の胸をぽかぽかと叩くと。
「悪い。でも……どんな文句を言ってくれてもいい……ただ、『大嫌い』だけはやめてくれ……次は立ち直れそうにない」
「……っ」
な、なんねそれ…!?
しょんぼりと下がった耳。
飼い主に叱られた犬みたいな仕草に胸が高鳴った。
こん男、分かってやっとるんかいな!?
どこまであたしのことを堕とせば気が済むんだろう。
好きで好きでたまらなくて、愛しさが胸からあふれ出しそうになっているのに、なぜか無性に腹立たしくなる。
「もうもうっ! あきとさんのばかっ、腹黒ヘタレっ、にぶちんのあんぽんたん~っ! ばってん、全部全部ちかっぱ好いとぉと~っ!」
顔を上げたまま「うわ~ん」と思い切り泣きじゃくった。まるで子ども。
みっともなくて呆れられてしまったらどうしようと、頭の片隅でもう一人のあたしが言うのに、決壊したものはなかなか元には戻らない。
彼は次々とこぼれ出る涙を吸い取りながら顔中にキスの雨を降らせると、最後にもう一度あたしの唇を塞いだ。
ぬるりと生温かい感触が上下唇を割るのは、唇が重なると同時。
口腔への侵入者は、一直線にあたしの舌を捕まえた。
押しつけるように擦り合わせながら、大きく円を描くように絡め取る。
まるで捕食されているかのような動きなのに、ついさっきのものとは全然違う。隅々まで丁寧に、甘やかすようにゆっくりと。それでいて情熱的に深く探っていく。
さっきの何倍も愛欲を感じる官能的なキスは、すでに灯っている情欲に薪を燃べた。
積極的に舌を絡ませると、それに応えるように彼の舌も蠢く。
逃げては追い、追っては逃げ。お互いの舌が混ざり合った唾液をかき混ぜ、淫猥な水音を鳴らして。
重ね擦り合わせた唇が熟れたように熱く腫れぼったくなって。それでも「もっともっと」と貪欲に追いかけた。
息継ぎすら惜しむような熱く激しいキスに溺れて、全身がどろどろと溶けていく。
足元がふわふわと心許なくなり、ヒールがグラリと傾いた時。
おもむろに下から抱え上げられた。
彼はあたしを抱えたままキスを続け、そのまま部屋の奥へと足を進めた。
固く握り締めていた手で目の前の体をぽかっと叩くと、それが引き金になったように喉の奥から言葉が飛び出た。
彼の胸を叩く度、頬を滑り落ちていく熱いしずく。
晶人さんは「うん」「行かないよ」「ごめんな」と相槌をくれながら背中を撫でてくれて。
甘やかすような声と仕草に涙が勢いを増して、顔も思考もぐちゃぐちゃになった。
「あきとさんのばかっ、腹黒っ、へたれっ……あきとさんなんてあきとさんなんて、大っ……ぅんっ」
突然、何の前振りもなく口を塞がれた。
押し入ってきた熱い舌に、歯列も口蓋も喉の奥まで余すところなくかき回される。
いつの間にか移動していた彼の手が、腰と頭の後ろをしっかり抑えているせいで、身じろぎすらできない。まるで喰らい尽くそうとしているみたい。
飲み下したくてもその隙すらなくて溜まった唾液が、口の端からこぼれ落ちる。
息苦しくなって目の前の体を思い切り叩くと、やっとのことで口が自由になった。荒い息をつきながら、涙目でじろりと睨む。
「言い、たいことぉっ……全部、言っていいって言ったぁ!」
最後まで言わせてもらえなかったことを抗議して、「あきとさんのうそつきっ」と睨みながらさっきより力を込めて彼の胸をぽかぽかと叩くと。
「悪い。でも……どんな文句を言ってくれてもいい……ただ、『大嫌い』だけはやめてくれ……次は立ち直れそうにない」
「……っ」
な、なんねそれ…!?
しょんぼりと下がった耳。
飼い主に叱られた犬みたいな仕草に胸が高鳴った。
こん男、分かってやっとるんかいな!?
どこまであたしのことを堕とせば気が済むんだろう。
好きで好きでたまらなくて、愛しさが胸からあふれ出しそうになっているのに、なぜか無性に腹立たしくなる。
「もうもうっ! あきとさんのばかっ、腹黒ヘタレっ、にぶちんのあんぽんたん~っ! ばってん、全部全部ちかっぱ好いとぉと~っ!」
顔を上げたまま「うわ~ん」と思い切り泣きじゃくった。まるで子ども。
みっともなくて呆れられてしまったらどうしようと、頭の片隅でもう一人のあたしが言うのに、決壊したものはなかなか元には戻らない。
彼は次々とこぼれ出る涙を吸い取りながら顔中にキスの雨を降らせると、最後にもう一度あたしの唇を塞いだ。
ぬるりと生温かい感触が上下唇を割るのは、唇が重なると同時。
口腔への侵入者は、一直線にあたしの舌を捕まえた。
押しつけるように擦り合わせながら、大きく円を描くように絡め取る。
まるで捕食されているかのような動きなのに、ついさっきのものとは全然違う。隅々まで丁寧に、甘やかすようにゆっくりと。それでいて情熱的に深く探っていく。
さっきの何倍も愛欲を感じる官能的なキスは、すでに灯っている情欲に薪を燃べた。
積極的に舌を絡ませると、それに応えるように彼の舌も蠢く。
逃げては追い、追っては逃げ。お互いの舌が混ざり合った唾液をかき混ぜ、淫猥な水音を鳴らして。
重ね擦り合わせた唇が熟れたように熱く腫れぼったくなって。それでも「もっともっと」と貪欲に追いかけた。
息継ぎすら惜しむような熱く激しいキスに溺れて、全身がどろどろと溶けていく。
足元がふわふわと心許なくなり、ヒールがグラリと傾いた時。
おもむろに下から抱え上げられた。
彼はあたしを抱えたままキスを続け、そのまま部屋の奥へと足を進めた。
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