【完結】kiss and cry

汐埼ゆたか

文字の大きさ
上 下
22 / 76
こんな夜は***

こんな夜は***(3)

しおりを挟む
一気に入ってくるかと思ったそれは、浅い場所をり上げるだけ。堪らず「あっ」と声を漏らしたあたしに、「なんだ、もう欲しいのか?」と訊いてくる。

「っ、」

あからさまな焦らしにハシタナク頷いてしまいそうなのを、首を歯を食いしばって耐えて、平然を貼り付けた顔で真上の男に一瞥いちべつをくれてやる。

「どっちが。そっちこそぉ、もう我慢できひんのやないですかぁ?」

ふん、と鼻息をもらしてそっぽを向くと、「強がってられるのも今のうちだ」という低く掠れた声が聞こえ、次の瞬間一気にあたしの躰を貫いた。

躰の中心に「ずん」と響くような重たい一撃に、目の前がチカチカとぜる。

「――やけに熱いな。それにすごい。うねって絡みつく」
「あぁ…っ、」
「どれだけ貪欲なんだ、さっきもあんなにったくせに」
「や、今は…っ、んあぁ~っ」

軽く達してしまって収縮中の内壁を、彼は逆に広げるように腰をグラインドさせた。あまりの刺激に無意識に逃げようとするあたしの腰を、大きな手が押さえつける。

「ダメなわけあるか、こんなに濡らして。――素直じゃないな…っ」

言いながら今度は激しく腰を打ち付け始めた。

あたしは甲高く喘ぎながら「いやいや」をするように頭を振る。我ながら可愛く出来たと自負した髪型は、とっくに無残な有様だ。


『抱いて』――そう言ったのは自分。

だって、こんな夜・・・・に彼を独りになんて出来るわけない。

セフレ風情に弱音を吐くような人ではないと分かっていても、それでも長い間ある意味・・・・一途に想ってきた恋を彼は失ったのだ。そんな夜にはきっと誰かの温もりが欲しくなる。たとえそれが『ダメな部下』兼『可愛くないセフレ』だったとしても。独りきりで過ごすよりはマシなはず。

──ううん、それだけじゃない。

こんな夜に彼に温もりを分け与えるのが、顔も知らないどこかの女だなんて我慢ならなかった。

静さんの代わりになんてなれっこないって分かっているけど、それでもその何分の一かでもあたしが彼の心を埋めてあげられたら――。

なんて、そんなふうにあたしが思うこと自体、烏滸おこがましいことだったのかもしれない。


「何を考えている」

動きをゆるめた彼が、突然そう訊いてきた。

「別に……」

荒い呼吸の合間になんとかそれだけ返す。

――あなたのことしか考えてない。

そう頭の中で呟いたけれど、それが彼に届くはずもなく。

「本命のヤツのことか?」
「っ、」
「今夜はそいつに抱いてもらうつもりだったんだろう」
「~~~っ」

最後の言葉と共に大きく腰を引いた彼が、それを最奥まで一気に戻したせいで、あたしは声にならない嬌声を上げる。彼はさっきよりもさらに激しくあたしを揺さぶりだした。

溺れるほどの快感に喘ぎながら、それでも、どうしても『それはちがう』と言いたくて、硬く閉じていたまぶたを何とか持ち上げる。眉間に力を込め、今にも達してしまいそうな肉体に逆らって。
薄目を開けて彼を見上げ、唇を動かしたその時――。

内襞をこすりながら引き抜かれる感触に、口から短い嬌声が飛び出た。が、次の瞬間ぐるりと体を反転させられた。

ベッドにうつぶせにされたのだと悟るのと、彼が呟くのは同時だった。

「それならこっちのほうがイイだろ」

言うなり彼は、引き抜いたばかりの屹立きつりつを、今度は後ろからあたしの中へと埋め戻した。

「ふぁっ、……あぁんっ…、」

何の抵抗もなく彼のものを再度迎え入れたあたしの躰。さっきまでとはまた違う場所を責め立てられ、痺れるほどの愉悦に生理的な涙が滲む。

「あっという間に呑み込んでいくらでも溢れさせて……、本当はそいつにこうして欲しかったのか?」
「ちがっ、あ、あ、……やっ…かちょ、んぅっ、」
「もう黙っていてやるから、おまえはそいつに抱かれていると思えばいい」
「っ、」
「おまえには散々世話になったからな。今夜ひと晩くらい代役を務めてやる」

彼はそう言うとあとは黙って、激しく腰を打ちつけ始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「絶対にキモチイイと言わせてやる」 私に多額の借金を背負わせ、彼氏がいなくなりました!? ヤバい取り立て屋から告げられた返済期限は一週間後。 少しでもどうにかならないかとキャバクラに体験入店したものの、ナンバーワンキャバ嬢の恨みを買い、騒ぎを起こしてしまいました……。 それだけでも絶望的なのに、私を庇ってきたのは弊社の御曹司で。 副業がバレてクビかと怯えていたら、借金の肩代わりに妊娠を強要されたんですが!? 跡取り身籠もり条件の愛のない関係のはずなのに、御曹司があまあまなのはなぜでしょう……? 坂下花音 さかしたかのん 28歳 不動産会社『マグネイトエステート』一般社員 真面目が服を着て歩いているような子 見た目も真面目そのもの 恋に関しては夢を見がちで、そのせいで男に騙された × 盛重海星 もりしげかいせい 32歳 不動産会社『マグネイトエステート』開発本部長で御曹司 長男だけどなにやら訳ありであまり跡取りとして望まれていない 人当たりがよくていい人 だけど本当は強引!?

新米社長の蕩けるような愛~もう貴方しか見えない~

一ノ瀬 彩音
恋愛
地方都市にある小さな印刷会社。 そこで働く入社三年目の谷垣咲良はある日、社長に呼び出される。 そこには、まだ二十代前半の若々しい社長の姿があって……。 ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

イケメンエリート軍団の籠の中

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり 女子社員募集要項がネットを賑わした 1名の採用に300人以上が殺到する 松村舞衣(24歳) 友達につき合って応募しただけなのに 何故かその超難関を突破する 凪さん、映司さん、謙人さん、 トオルさん、ジャスティン イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々 でも、なんか、なんだか、息苦しい~~ イケメンエリート軍団の鳥かごの中に 私、飼われてしまったみたい… 「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる 他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」

運命的に出会ったエリート弁護士に身も心も甘く深く堕とされました

美並ナナ
恋愛
祖父は大学病院理事、父は病院経営という 医者一族の裕福な家に生まれた香澄。 傍目には幸せに見える家庭は実は冷え切っており、 内心では寂しさを抱えているが、 親の定めたレールに沿って、 これまで品行方正に生きてきた。 最近はお見合いによって婚約者も決まり、 その相手とお付き合いを重ねている。 だが、心も身体も満たされない。 このままこの人と結婚するのかと考えると、 「私も一度くらいハメを外してみたい」と つい思ってしまう始末だった。 そんなある日、 香澄にドラマのような偶然の出会いが訪れ、 見惚れるような眉目秀麗な男性と一夜を共にする。 一夜限りの冒険のつもりで 最高に満たされた夜を過ごした香澄だったが、 数日後にまたしても彼と運命的に再会を果たして――? ※ヒロインは婚約者がいながら他の男性と浮気をする状態となります。清廉潔白なヒロインではないためご了承ください。 ※本作は、エブリスタ・ムーンライトノベルズでも掲載しています(エブリスタでのタイトルは「Blind Destiny 〜秘めたる想いが交わるとき〜」です)。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
真田(さなだ)ホールディングスで専務秘書を務めている香坂 杏珠(こうさか あんじゅ)は凛とした美人で26歳。社内外問わずモテるものの、男に冷たく当たることから『男性嫌いではないか』と噂されている。 しかし、実際は違う。杏珠は自分の理想を妥協することが出来ず、結果的に彼氏いない歴=年齢を貫いている、いわば拗らせ女なのだ。 そんな杏珠はある日社長から副社長として本社に来てもらう甥っ子の専属秘書になってほしいと打診された。 渋々といった風に了承した杏珠。 そして、出逢った男性――丞(たすく)は、まさかまさかで杏珠の好みぴったりの『筋肉男子』だった。 挙句、気が付いたら二人でベッドにいて……。 しかも、過去についてしまった『とある嘘』が原因で、杏珠は危機に陥る。 後継者と名高いエリート副社長×凛とした美人秘書(拗らせ女)の身体から始まる現代ラブ。 ▼掲載先→エブリスタ、ベリーズカフェ、アルファポリス(性描写多め版)

孕まされ婚〜こんな結婚したくなかった〜

鳴宮鶉子
恋愛
ワンナイトLOVEで妊娠してしまい結婚するはめになった美結。男友達だと思ってたアイツがわたしに手を出すとは思ってなかった

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

処理中です...