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こんな夜は***
こんな夜は***(3)
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一気に入ってくるかと思ったそれは、浅い場所を擦り上げるだけ。堪らず「あっ」と声を漏らしたあたしに、「なんだ、もう欲しいのか?」と訊いてくる。
「っ、」
あからさまな焦らしにハシタナク頷いてしまいそうなのを、首を歯を食いしばって耐えて、平然を貼り付けた顔で真上の男に一瞥をくれてやる。
「どっちが。そっちこそぉ、もう我慢できひんのやないですかぁ?」
ふん、と鼻息をもらしてそっぽを向くと、「強がってられるのも今のうちだ」という低く掠れた声が聞こえ、次の瞬間一気にあたしの躰を貫いた。
躰の中心に「ずん」と響くような重たい一撃に、目の前がチカチカと爆ぜる。
「――やけに熱いな。それにすごい。うねって絡みつく」
「あぁ…っ、」
「どれだけ貪欲なんだ、さっきもあんなに達ったくせに」
「や、今は…っ、んあぁ~っ」
軽く達してしまって収縮中の内壁を、彼は逆に広げるように腰をグラインドさせた。あまりの刺激に無意識に逃げようとするあたしの腰を、大きな手が押さえつける。
「ダメなわけあるか、こんなに濡らして。――素直じゃないな…っ」
言いながら今度は激しく腰を打ち付け始めた。
あたしは甲高く喘ぎながら「いやいや」をするように頭を振る。我ながら可愛く出来たと自負した髪型は、とっくに無残な有様だ。
『抱いて』――そう言ったのは自分。
だって、こんな夜に彼を独りになんて出来るわけない。
セフレ風情に弱音を吐くような人ではないと分かっていても、それでも長い間ある意味一途に想ってきた恋を彼は失ったのだ。そんな夜にはきっと誰かの温もりが欲しくなる。たとえそれが『ダメな部下』兼『可愛くないセフレ』だったとしても。独りきりで過ごすよりはマシなはず。
──ううん、それだけじゃない。
こんな夜に彼に温もりを分け与えるのが、顔も知らないどこかの女だなんて我慢ならなかった。
静さんの代わりになんてなれっこないって分かっているけど、それでもその何分の一かでもあたしが彼の心を埋めてあげられたら――。
なんて、そんなふうにあたしが思うこと自体、烏滸がましいことだったのかもしれない。
「何を考えている」
動きをゆるめた彼が、突然そう訊いてきた。
「別に……」
荒い呼吸の合間になんとかそれだけ返す。
――あなたのことしか考えてない。
そう頭の中で呟いたけれど、それが彼に届くはずもなく。
「本命の男のことか?」
「っ、」
「今夜はそいつに抱いてもらうつもりだったんだろう」
「~~~っ」
最後の言葉と共に大きく腰を引いた彼が、それを最奥まで一気に戻したせいで、あたしは声にならない嬌声を上げる。彼はさっきよりもさらに激しくあたしを揺さぶりだした。
溺れるほどの快感に喘ぎながら、それでも、どうしても『それはちがう』と言いたくて、硬く閉じていたまぶたを何とか持ち上げる。眉間に力を込め、今にも達してしまいそうな肉体に逆らって。
薄目を開けて彼を見上げ、唇を動かしたその時――。
内襞を擦りながら引き抜かれる感触に、口から短い嬌声が飛び出た。が、次の瞬間ぐるりと体を反転させられた。
ベッドにうつぶせにされたのだと悟るのと、彼が呟くのは同時だった。
「それならこっちのほうがイイだろ」
言うなり彼は、引き抜いたばかりの屹立を、今度は後ろからあたしの中へと埋め戻した。
「ふぁっ、……あぁんっ…、」
何の抵抗もなく彼のものを再度迎え入れたあたしの躰。さっきまでとはまた違う場所を責め立てられ、痺れるほどの愉悦に生理的な涙が滲む。
「あっという間に呑み込んでいくらでも溢れさせて……、本当はそいつにこうして欲しかったのか?」
「ちがっ、あ、あ、……やっ…かちょ、んぅっ、」
「もう黙っていてやるから、おまえはそいつに抱かれていると思えばいい」
「っ、」
「おまえには散々世話になったからな。今夜ひと晩くらい代役を務めてやる」
彼はそう言うとあとは黙って、激しく腰を打ちつけ始めた。
「っ、」
あからさまな焦らしにハシタナク頷いてしまいそうなのを、首を歯を食いしばって耐えて、平然を貼り付けた顔で真上の男に一瞥をくれてやる。
「どっちが。そっちこそぉ、もう我慢できひんのやないですかぁ?」
ふん、と鼻息をもらしてそっぽを向くと、「強がってられるのも今のうちだ」という低く掠れた声が聞こえ、次の瞬間一気にあたしの躰を貫いた。
躰の中心に「ずん」と響くような重たい一撃に、目の前がチカチカと爆ぜる。
「――やけに熱いな。それにすごい。うねって絡みつく」
「あぁ…っ、」
「どれだけ貪欲なんだ、さっきもあんなに達ったくせに」
「や、今は…っ、んあぁ~っ」
軽く達してしまって収縮中の内壁を、彼は逆に広げるように腰をグラインドさせた。あまりの刺激に無意識に逃げようとするあたしの腰を、大きな手が押さえつける。
「ダメなわけあるか、こんなに濡らして。――素直じゃないな…っ」
言いながら今度は激しく腰を打ち付け始めた。
あたしは甲高く喘ぎながら「いやいや」をするように頭を振る。我ながら可愛く出来たと自負した髪型は、とっくに無残な有様だ。
『抱いて』――そう言ったのは自分。
だって、こんな夜に彼を独りになんて出来るわけない。
セフレ風情に弱音を吐くような人ではないと分かっていても、それでも長い間ある意味一途に想ってきた恋を彼は失ったのだ。そんな夜にはきっと誰かの温もりが欲しくなる。たとえそれが『ダメな部下』兼『可愛くないセフレ』だったとしても。独りきりで過ごすよりはマシなはず。
──ううん、それだけじゃない。
こんな夜に彼に温もりを分け与えるのが、顔も知らないどこかの女だなんて我慢ならなかった。
静さんの代わりになんてなれっこないって分かっているけど、それでもその何分の一かでもあたしが彼の心を埋めてあげられたら――。
なんて、そんなふうにあたしが思うこと自体、烏滸がましいことだったのかもしれない。
「何を考えている」
動きをゆるめた彼が、突然そう訊いてきた。
「別に……」
荒い呼吸の合間になんとかそれだけ返す。
――あなたのことしか考えてない。
そう頭の中で呟いたけれど、それが彼に届くはずもなく。
「本命の男のことか?」
「っ、」
「今夜はそいつに抱いてもらうつもりだったんだろう」
「~~~っ」
最後の言葉と共に大きく腰を引いた彼が、それを最奥まで一気に戻したせいで、あたしは声にならない嬌声を上げる。彼はさっきよりもさらに激しくあたしを揺さぶりだした。
溺れるほどの快感に喘ぎながら、それでも、どうしても『それはちがう』と言いたくて、硬く閉じていたまぶたを何とか持ち上げる。眉間に力を込め、今にも達してしまいそうな肉体に逆らって。
薄目を開けて彼を見上げ、唇を動かしたその時――。
内襞を擦りながら引き抜かれる感触に、口から短い嬌声が飛び出た。が、次の瞬間ぐるりと体を反転させられた。
ベッドにうつぶせにされたのだと悟るのと、彼が呟くのは同時だった。
「それならこっちのほうがイイだろ」
言うなり彼は、引き抜いたばかりの屹立を、今度は後ろからあたしの中へと埋め戻した。
「ふぁっ、……あぁんっ…、」
何の抵抗もなく彼のものを再度迎え入れたあたしの躰。さっきまでとはまた違う場所を責め立てられ、痺れるほどの愉悦に生理的な涙が滲む。
「あっという間に呑み込んでいくらでも溢れさせて……、本当はそいつにこうして欲しかったのか?」
「ちがっ、あ、あ、……やっ…かちょ、んぅっ、」
「もう黙っていてやるから、おまえはそいつに抱かれていると思えばいい」
「っ、」
「おまえには散々世話になったからな。今夜ひと晩くらい代役を務めてやる」
彼はそう言うとあとは黙って、激しく腰を打ちつけ始めた。
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