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観察対象と発注ミス
観察対象と発注ミス(4)
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あれから今日まで、まだ二週間しか経っていないはずなのに、二か月分くらいの出来事があった気がする。
あの発注ミスのリカバリーの為に、今まさにこうして残業しているわけで――。
「上手く行かはったんやろかぁ、静さぁん……」
口から「はぁっ」とため息がこぼれる。
あ、ダメダメ……のんの幸せ逃げちゃいますぅ。
「――ていうか!どうなったかくらい連絡くれてもええんちゃいますぅっ!?」
あんなに一生懸命慰めて励まして。その上、彼女のここ一番の大勝負の為に、神社にお参りまでしたんやから!
あ、別にご利益とか調べて行ったわけちゃいますよぉ?ふらっと前を通ぉりかかってぇ、なんとなく寄ってみただけやの。信仰心の「し」の字もないあたしが神社に行くのなんて、お正月の時くらいやもぉん。
だけど、あんなふうにボロボロになっている静さんを見たら、あたしだって何か出来ることはないかと思ってしまったのだ。
あの日、課長に指示を受けながら発注ミスの対応を済ませたあたしは、彼に頼んで静さんの家に連れていってもらった。静さんの具合が気になったのもあるけれど、今度こそちゃんと謝ろうと思ったのだ。
だけど何の因果か、静さんと王子が大揉めしているところに出くわして――。
王子が居なくなったあと、「この世の終わりか」と言うくらいに泣きじゃくる静さんを、あたしは必死に励ました。あんな静さん初めて見た。
訊けば王子と喧嘩した最初の発端は、あたしと王子がバレンタインイブを一緒に過ごしたと勘違いしたことらしい。
いやぁ、それってぇのんは全然悪くありませぇぇんっ…!?
――と言いたいところだけれど、少なからず後ろめたいことがあったのは事実で。
だから、(なんか少しでものんに出来ることはないやろか)とは思っていた。
それに静さんの恋の行方は、あたしが“賭け”に勝つか負けるかを大きく左右することにもなるはず。
だから、心の底から全力で神社のお社に向かって、(神さま仏さまぁ、お頼申しますぅ……)と念じたのだ。
そしたらなんと!ひらめいたのだ!!
『そうだ!静さんにお守りをあげよう!!』
我ながらグッドアイディア!神頼みって意外と即効性あるのかも!
なんて思いながら、お社の隣のお守り売り場(「授与所」って言うらしい)に。ピンクの生地にかわいいお花の刺繍が刺してあるお守りが目に飛び込んできて、迷わずそれを買った。せっかくだから自分のも。
可愛くて気に入ったのもあったけど、静さんとおそろいならご利益あるかもって。
だって、静さんのご縁が上手く結ばれたあかつきには、のんだって。
こんなにも一生懸命先輩の恋路を応援している健気な後輩、他にはいませぇん!
それなのに…!
静さんからの連絡は未だない。
プレゼン大会は五時までだったはず。それが終わったら静さんは王子にもう一度ぶつかってみると言っていた。順調に事が運べば、そろそろ連絡が入ってもいい頃なのに……。
そう思いながらキーボードの横に置いたスマホを何度も見てしまう。
「もうっ、静さんったらぁ、今度泣いてもめんどう見ませんからねぇっ!」
本人が聞いたら「日頃の恨み!?」って言いそうなほどの文句を、空の席にこれでもかとぶつけていた時、スマホが「ポコン」と音を立てた。
「あっ!」
慌ててスマホを手を延ばしたら、危うく落っことしそうになった。なんとか両手でキャッチして、秒でトーク画面を開く。
[上手くいきました]
必要最低限の短いメッセージの下には白いうさぎが「ありがとう」と手を合わせたスタンプ。
その瞬間、「よっしゃっ」ってガッツポーズで勢いよくイスから立ち上がった。
すぐにパソコンをシャットダウンしたあたしは、急いで事務所を後にした。
あの発注ミスのリカバリーの為に、今まさにこうして残業しているわけで――。
「上手く行かはったんやろかぁ、静さぁん……」
口から「はぁっ」とため息がこぼれる。
あ、ダメダメ……のんの幸せ逃げちゃいますぅ。
「――ていうか!どうなったかくらい連絡くれてもええんちゃいますぅっ!?」
あんなに一生懸命慰めて励まして。その上、彼女のここ一番の大勝負の為に、神社にお参りまでしたんやから!
あ、別にご利益とか調べて行ったわけちゃいますよぉ?ふらっと前を通ぉりかかってぇ、なんとなく寄ってみただけやの。信仰心の「し」の字もないあたしが神社に行くのなんて、お正月の時くらいやもぉん。
だけど、あんなふうにボロボロになっている静さんを見たら、あたしだって何か出来ることはないかと思ってしまったのだ。
あの日、課長に指示を受けながら発注ミスの対応を済ませたあたしは、彼に頼んで静さんの家に連れていってもらった。静さんの具合が気になったのもあるけれど、今度こそちゃんと謝ろうと思ったのだ。
だけど何の因果か、静さんと王子が大揉めしているところに出くわして――。
王子が居なくなったあと、「この世の終わりか」と言うくらいに泣きじゃくる静さんを、あたしは必死に励ました。あんな静さん初めて見た。
訊けば王子と喧嘩した最初の発端は、あたしと王子がバレンタインイブを一緒に過ごしたと勘違いしたことらしい。
いやぁ、それってぇのんは全然悪くありませぇぇんっ…!?
――と言いたいところだけれど、少なからず後ろめたいことがあったのは事実で。
だから、(なんか少しでものんに出来ることはないやろか)とは思っていた。
それに静さんの恋の行方は、あたしが“賭け”に勝つか負けるかを大きく左右することにもなるはず。
だから、心の底から全力で神社のお社に向かって、(神さま仏さまぁ、お頼申しますぅ……)と念じたのだ。
そしたらなんと!ひらめいたのだ!!
『そうだ!静さんにお守りをあげよう!!』
我ながらグッドアイディア!神頼みって意外と即効性あるのかも!
なんて思いながら、お社の隣のお守り売り場(「授与所」って言うらしい)に。ピンクの生地にかわいいお花の刺繍が刺してあるお守りが目に飛び込んできて、迷わずそれを買った。せっかくだから自分のも。
可愛くて気に入ったのもあったけど、静さんとおそろいならご利益あるかもって。
だって、静さんのご縁が上手く結ばれたあかつきには、のんだって。
こんなにも一生懸命先輩の恋路を応援している健気な後輩、他にはいませぇん!
それなのに…!
静さんからの連絡は未だない。
プレゼン大会は五時までだったはず。それが終わったら静さんは王子にもう一度ぶつかってみると言っていた。順調に事が運べば、そろそろ連絡が入ってもいい頃なのに……。
そう思いながらキーボードの横に置いたスマホを何度も見てしまう。
「もうっ、静さんったらぁ、今度泣いてもめんどう見ませんからねぇっ!」
本人が聞いたら「日頃の恨み!?」って言いそうなほどの文句を、空の席にこれでもかとぶつけていた時、スマホが「ポコン」と音を立てた。
「あっ!」
慌ててスマホを手を延ばしたら、危うく落っことしそうになった。なんとか両手でキャッチして、秒でトーク画面を開く。
[上手くいきました]
必要最低限の短いメッセージの下には白いうさぎが「ありがとう」と手を合わせたスタンプ。
その瞬間、「よっしゃっ」ってガッツポーズで勢いよくイスから立ち上がった。
すぐにパソコンをシャットダウンしたあたしは、急いで事務所を後にした。
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