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第四章 異世界に来たけど、自分は反逆します
第九十五話 ※
しおりを挟む※エロシーンアリ
「ここがアレクの部屋?」
「何も無いがな」
「なんかアレクらしくてほっとした」
「どういう意味だ」
一人部屋にしては広い部屋。一人暮らし向けのワンルームをもう一回り大きくしたような部屋に、ベッドと丸いテーブル、そして椅子が二つ。寝るためだけの部屋と言われたら納得してしまう程、簡素な空間だった。
自室であれば色々物が置いてあるのかと思っていた。
アレクサンダーの趣味などが垣間見えるのかと期待していたが、予想と反して部屋は殺風景。少し残念な気がしたが、これはこれでアレクサンダーらしいと海は部屋を見渡しながら微笑んだ。
「いつまでそうしてるつもりだ?」
「あ、もう寝る?」
「……寝るだけで済ませる気か」
「え?」
脱いだ上着を椅子の背もたれに掛け、シャツのボタンをいくつか外して胸元を晒す。アレクサンダーの一つ一つの動作に無駄な色気を感じた。団服を着ている時はキッチリとした堅物団長なのに、服が肌蹴ると一瞬にして妖艶さが増す。これが大人の色気なのか。海にはまだ無い技……というか雰囲気だ。
「こっちに来い」
扉の前で固まったままの海をアレクサンダーは呼び寄せる。ベッドに浅く座り、こちらに向けて手を伸ばしていた。
「なんか……大人ってずるいな」
「お前も変わらないだろう」
呼ばれるがまま海はアレクサンダーの元へと歩み寄る。伸ばされている手に自分の手を重ねると、グイッと力強く引っ張られ、アレクサンダー共々ベッドへと倒れ込んだ。
「俺にはそんな色気ないです」
「色気より可愛げか」
「いや、それもないから。なんでアレクサンダーといい、クインシーといい可愛い可愛いって言うんだよ。三十近いおっさんが可愛いわけが無い!」
「おっさんという言葉が最も似合わない風格をしているがな」
「中身が子供だって言いたいの?」
「そうじゃないが」
アレクサンダーの胸元でブツブツ文句を言っている間に海が着ていた上着が剥ぎ取られ、床へと投げつけられてしまう。あの上着はクインシーから借りた物だ。ちゃんと畳まないと皺がついてしまうし、床に置いたら汚れもついてしまう。慌てて拾いにいこうと上体を起こしたが、それを遮るようにアレクサンダーの腕がぬっと前に出てきた。
「ちょ、アレク! 離して!」
「上着ぐらいいいだろう」
「良くない! クインシーに借りたものだから綺麗にしとかないと!」
「……ベッドの上で他の男の名を出すとはいい度胸だな」
「は!?」
もう少しで上着に手が届くという所で、後ろからアレクサンダーに首根っこを掴まれて阻止される。ドサッとベッドの上に寝かされ、視界いっぱいにアレクサンダーが映った。
「これからヤるというのに目の前にいる男ではなく、別の男のことを考えるのか」
「はぁ!? 上着の事しか言ってないけど!?」
「"クインシー"から借りたんだろう」
「それがなに……え、待って? それだけでまさか嫉妬したとかって言う……?」
「…………上着ぐらい放っておけ」
海がクインシーの上着を気にかけたという事が気に食わなかったのか。そんなことで、と海は言いかけたが、ムッと拗ねた顔でアレクサンダーは顔を背けた事により、文句を言うのをやめた。
「アレクっていつもはかっこいいのに、たまに可愛さが出るよね」
「なんだそれは……」
「両方兼ね備えてるアレクは強いって言う意味です」
キリッとした顔で言い放つ海にアレクサンダーは意味がわからないと首を傾げた。
「わからん。分かるように話せ」
「だから……アレクの事が好きって事ですよ」
言っている本人も分からなくなってきてしまい、海は無理矢理終わらせた。これ以上聞かれても説明できる気がしないし、アレクサンダーが分かってくれそうな感じもない。深く追求されることのないように、開きかけたアレクサンダーの唇を自分の唇で塞いだ。
ふにっとした柔らかい感触を味わうように角度を変えて何度も啄むようにキスをする。これは以前、アレクサンダーがやっていたことだ。ただ、唇を合わせるだけではつまらないかもしれないと思ってやってみたが、凄く恥ずかしい。
「カイ」
「ん、アレク」
「それは親鳥に餌を求めてる雛みたいだぞ」
「……下手って言いたいのはわかった」
頑張ってキスしたのにその言い方は無いだろう。
どうしたらアレクサンダーに満足してもらえるのか。
経験豊富な相手が驚くようなキスのやり方なんて海が知るはずもない。宿を出る前にヴィンスに聞いておけば良かったかと思ったけど、ヴィンスに聞くのもなんか嫌だ。
「キスの練習ってどうやるの……」
「練習など要らないだろう。常に本番なのだから」
「いや、まぁそうなんだけど……。アレクが驚くようなキスをしたいというか、なんというか」
「キス一つで何に驚けというんだ」
「やり方が上達した、とか?」
「そんなもの要らん。そのままで良い」
キスが上手い方がアレクサンダーだって楽しめるだろうと考えたのだが、何故かアレクサンダーは不機嫌そうに顔を歪めてしまった。
「アレク?」
「誰に教えてもらうつもりだ」
「え? そりゃアレクにだけど」
「……俺、か」
「教えてくれないの?」
誰かに教えてもらうという誤解を生んでしまったらしい。アレクサンダーの不機嫌顔はそのせいだったみたいで、海が迷わず即答すると、アレクサンダーは安堵の表情を浮かべた。
「俺のやり方だけ覚えればいい。さっきのも俺のを真似したんだろう?」
「そうだけど……雛鳥みたいだって言ったじゃん」
「下手とは言ってない。可愛らしいキスだという意味だ」
ふっと笑い、アレクサンダーは唇を寄せてくる。海がしたように唇を啄むのだが、やり方が全然違った。
下唇を軽く食まれて舌先で舐められる。唇の形をなぞるように動いた舌は咥内に入り込もうとしてきたので、緩く口を開けて招き入れた。
「ん……ふっ」
もっと、と強請るように自分の舌をアレクサンダーの舌に絡ませる。根元から舌先にかけて舐められて腰がビクッと震えた。深いキスをしている間にアレクサンダーの手は海のシャツのボタンを外して中へと滑り込み、乳首を摘む。親指の腹で押し潰されたり、キュッと強く引っ張られては、海の口から嬌声が漏れた。
「あっ……んんっ」
「ここも感じるようになったな」
「アレクの……せいでっ……んあっ!」
こうやって身体を合わせるのはこれで二度目だ。それなのにもう海の身体はアレクサンダーによって作り変えられてしまっていた。初めての時に散々乳首を弄られたというのもあるのだろうけど、少し抓られたり舐められただけで、海のものはズボンの中で窮屈そうにしている。
早く触って欲しい──主張している部分をアレクサンダーの下腹部へと擦り付ける。こんなやり方浅ましいとと思ったが止められなかった。
「カイ、そんなに擦りつけるな。ちゃんとこちらも触ってやるから」
「は、やく……」
「急かすな。まだ時間はいくらでもある」
ゆっくりとした動作でベルトが緩められる。ズボンのボタンを外し、チャックを開けられるまでが酷く長く感じた。
「濡れすぎだな」
「アレクが焦らすからだろ!」
ズボンと共に下着が脱がされたのだが、海の我慢汁で内側はびしょ濡れになっていて、アレクサンダーが触るとニチャッという水音が耳に入り、恥ずかしさで顔が熱くなった。
亀頭を弄られてコプッと汁が溢れ出す。出てきたものを全体に塗りつけるように扱かれた。
「んっんっ……はっ、あっ」
「カイ、」
「な、に……?」
「この間の礼だ」
「こ……の間?」
礼とは一体なんだ?下半身から伝わってくる甘い感覚に頭がぼうっとしていて、この間というのが全く思い浮かばず、疑問符か頭の中に増えていく。
そんな海を見てアレクサンダーは笑い、そして海の股間へと顔を寄せる。海のものを右手で支えながら口を開けた時、"この間"の意味がわかった。
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