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第三章 異世界に来たけど、自分は慈善活動を始めました
第七十五話 ※
しおりを挟む「どうしよう。いや、言い出したのは俺だからアレなんだけどさ」
抱いて欲しいと言った後、海はアレクサンダーの実家へと来ていた。もちろんのことだが、アレクサンダーは家の鍵を持っておらず、裏口の窓を叩き割って鍵を開けた。
そして今はアレクサンダーが使っていた部屋で一人待機中。
「つか、あんな誘い方あるか普通!」
襲われた恐怖や不安が消えて落ち着いた海は、己が口走ってしまった言葉を猛烈に後悔していた。付き合っているのだからいつかこういう日がくるとは想像していたのだが、初めての日がこんな誘い方になるとは想定外だ。
アレクサンダーの部屋の中を右往左往しながら、海は謝って断るべきか、それとも最後までするべきかを悩みまくっていた。
「何してる」
「ひゃい!」
突如として部屋の扉が開けられ、アレクサンダーが現れる。うろうろしている海を怪訝そうに見つめているアレクサンダーの手には水の入ったコップと石鹸。
「あ、の、アレクサンダー?」
「悪いな。潤滑剤は石鹸で我慢してくれ」
ヤル気満々!!
もうこれは後には引けない状況だ。
「それは大丈夫だけど……その……初めてだから優しくしてくれると……」
「わかってる。痛くはしない」
石鹸とコップをサイドテーブルに置いてこちらを振り返ったアレクサンダーはとても良い笑顔でした。
今まで見たどの表情よりも生き生きとしていて、こちらも嬉しく……なるわけもない。緊張感が増すだけの笑顔だった。
これからアレクサンダーに抱かれる。何度か妄想はしていたけど、いざ本番となるとなにをしていいかわからない。なんせ普通のセックスもした事ないのだから。
「カイ、こっちに来い」
困り果てている海に助け舟を出すようにアレクサンダーがベッドへと誘う。差し出されている右手に左手を重ねると力強く引っ張られてベッドへと寝かされた。
「アレク……!」
「カイが嫌がるようなことはしない。だからそんな顔をするな」
今自分はどんな顔をしているんだ。海に覆いかぶさってきたアレクサンダーは真っ直ぐと海の目を見つめている。彼の薄茶色の瞳を見返すと、不安そうな表情をしている自分の姿があった。こんな顔をしていたらそりゃ心配されてしまう。笑みのひとつでも浮かべれば、アレクサンダーは安心してくれるだろうか。
「大丈夫、だから。アレクは酷いことしないって信じてるから」
「……ああ、善処する」
善処する?なんだその『頑張ってみます』という感じは。何を頑張るんだ?酷くしないことを頑張るのか?
アレクサンダーの言葉に疑問符を浮かべている間に事は進んでいて、開いていたシャツの前からアレクサンダーの手が侵入し、海の素肌に直に触れた。
お腹を撫でるように触り、その手は徐々に上へと向かう。海の胸あたりに到達すると、二つの飾りの片方をグリッと親指の腹で押した。
「ん……俺、女の子じゃないからそこじゃ……」
「開発すればここも気持ちよくなる。気にするな」
いや、気にします。開発すれば気持ちよくなるってどういう事ですか。それって調教っていうことですか。
ぐりぐりと乳首を弄られるが、今は擽ったいだけで気持ちよさはわからない。戸惑う海にアレクサンダーはふっと微笑み、海の唇を奪った。
未だにキスに慣れていない海は強く目を閉じ、必死にアレクサンダーに応えるしかない。唇を割開いてくる舌にビクリと身体が震える。唇を舐め、歯列をなぞり、上顎を擽るように舌を這わせると、今度は海の舌へと狙いを定めた。
「ふっ……ん、」
キスの間は鼻呼吸。それはアレクサンダーに教えてもらったことだ。呼吸するのを忘れないように意識していたが、海の口腔をまさぐってくる舌のせいで上手く集中できない。恥ずかしさ半分、気持ちよさ半分。これでは頭がバカになってしまう。
「はっ……アレ……ク」
「カイ」
ちゅ、とリップ音を残して唇が離れていく。キスだけで海の身体は弛緩してしまう。それほどアレクサンダーのキスは刺激的で気持ちがいい。
着ていたシャツは脱がされて床へと落とされた。
貧弱な身体をまじまじと見られるのはとてもなく恥ずかしく、海は身を捩って布団の中へ潜ろうとした。
「隠れるな。ちゃんと見せろ」
布団を掴んだ手はアレクサンダーの手に取られ、指を絡められる。
「やだよ……だって俺、アレクサンダーみたいに筋肉ないから情けない身体つきなんだよ」
「そんなことはない。とても……綺麗だ」
日焼けしていない身体は女のように白い。そんな身体の何処が綺麗だと言うのか。じっと海の身体を見下ろしているアレクサンダーはうっとりとした顔をしているが、海はあまり嬉しくなかった。
「絶対鍛えてやる」
「必要ないと言っただろう」
「いるんだよ。じゃないと……アレクサンダーに見合わないだろ」
「そんなこと考える必要はない。それに誰が文句を言うんだ。これだけ綺麗な身体をしていて、誰が文句を言えるんだ」
指先で鎖骨から臍の方までをなぞっていく。臍の下までいった指は海のズボンのボタンへと触れた。
「アレク……」
「本来ならちゃんとした前戯をしてやりたいが、初めてではさほど感じないだろう。だからこっちを弄りながらここに教えこんでやる」
ズボンの前が緩くなると中へと手が忍び込む。芯を持ち始めた海のを優しく揉みながら乳首への愛撫も再開される。擦られるたびに海の口から甘い吐息が零れていく。胸をいじられている違和感と、下半身にじんと広がる快感。もっと、と強請るように腰を揺らめかせれば、アレクサンダーは海が悦ぶ所を擦ってくれた。
「カイ、こっちもちゃんと感じろ」
「わ、かんな……んっ、あ、」
片方の乳首は指で抓られ、反対側はアレクサンダーに舐められる。舌先でつつかれ、乳輪をキツく吸われた。
赤ん坊のように胸にしゃぶりつくアレクサンダーが可愛らしく見え、胸元にある頭を撫でた。
「可愛い」
「それはお前の方だろう。わかっているのか? もうこちらはこんなだぞ?」
海のをいじっていたアレクサンダーの右手がズボンから引き抜かれて目の前に出される。指にはねっとりと海の先走りが絡みついていた。見せつけるように手を動かすと、指先から雫が垂れて腹を汚す。
「あっ、や、ごめん……手汚しちゃった」
「沢山汚せばいい。お前に汚されるなら本望だ」
右手はズボンの中へと戻る。アレクサンダーが手を動かすたびにグチュグチュと水音が聞こえ、羞恥で紅潮した。海に聞かせるためにわざと音を大きくしている気がするが、アレクサンダーを問い詰めている余裕など海にはない。
「アレクッ……も、イキそ、だから!」
「イケばいい。我慢するな」
「汚れるっ……」
「カイ、」
達さないように耐える海の耳元でアレクサンダーが低い声で囁く。海が好きな心地の良い低音で、
『イッてしまえ』
その一言に海の腰は震え、アレクサンダーのシャツを強く掴みながらイッてしまった。
「上手くイけたな」
残っているものも全部出させるようにアレクサンダーは軽く扱く。その手の動きに合わせて腰が跳ねた。
「イきそうって言ったのに……」
「どうせ汚せるのだから構わない」
「そうじゃなくて、その……」
「恥ずかしい、か? すぐに慣れる。これからもっと恥ずかしい思いをするんだからな」
海の出したもので汚れた右手をペロリと舐め、アレクサンダーは怪しく笑う。海の足からズボンを引き抜き、自身もシャツを脱ぎ捨てる。服の下の筋肉は立派で、海は割れた腹筋へと手を伸ばした。
「すごい……固い」
「……言い方がアレだな」
「アレ?」
口元を手で押えてアレクサンダーは海から目をそらす。その意味がわからず、海は首を傾げた。
「なに?」
「なんでもない」
はぐらかすように海の頭をわしゃっと撫で回して、アレクサンダーは苦笑いを浮かべた。
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