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15. ずっと本気です ☆
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「そしてこれは僕から早瀬に」
タカが俺に渡したのは、さっき秘密兵器だと言っていた絵だ。
「開けていい?」
「勿論」
慎重に包を開けると、そこには額装された絵が一枚。大学の制作室、西日の中で絵の具を掴む俺の姿。昔、タカが俺の絵を描き上げた時に一度見た構図。だけど、表情が違う。
「早瀬さんが笑ってる。キレイ」
絵のことなど何も分からないはずの一郎が最初に声を出した。
「これ、俺が見せて貰った「色を選ぶ人」と少し違う。表情も、仕草も」
以前は絵の具に手を伸ばしている姿だったはずだ。今は絵の具に手が触れている。
「あの絵が入賞して暫く経ってからもう一枚描いたんだ。本当はこっちの表情を描きたかったんだけど」
そう言った後、タカがチラッと佐倉を見て言葉を濁らせた。
「あの頃は描く心の準備が出来てなくて」
「俺、初めて見た」
佐倉が不満げに呟く。
「見せたことなかったし。これ、早瀬にあげるよ。早瀬が色を見つけた瞬間ってこういう顔するんだ。宝物見つけたみたいに笑う。この絵見たら、さ。分かるだろ?」
タカの言葉に、うんうんと頷いた。絵を描くことが好きだ。
ただ絵を描くことが好きだったんだ、俺。
「ありがとう、タカ。俺、本当になんて言ったらいいか」
俺が思わずタカに抱きつくと「あ」と声を上げて一郎も抱きついてくる。男二人に抱きつかれるという変な状況にタカは硬直し、それを見た佐倉が「渉に抱きつくなんて図々しい」と言って俺たちを引き離した。
「一郎、俺、お腹減った」
「すぐ作りますね。佐倉さん、行きますよ!」
「俺が助手なの?」
「他に料理ができる人はいるんですか?」
佐倉はタカを見てふっと遠い目をした。
「いないな……」
その日食べた親子丼は今まで食べたどの親子丼よりもおいしくて、俺はこの味を一生忘れないと思う。
タカと佐倉が帰って一郎と二人きり。タカに貰った絵をリビングの壁に立てかけて眺めていると一郎が背後から絡まってきた。
「タカさんって何者ですか? 早瀬さんのこんな顔描いて……」
一郎がむぅーっと声に出す。
「こんな顔、形に残すとか止めて欲しい。俺が独り占めしたいのに」
「何言ってんだよ」
「本気ですよ。俺、ずっと本気です」
一郎の顔が至近距離にあって、伏せた睫毛、その奥にある目が俺の唇を捉えている。少しずつアクセルを踏み込むみたいにして心臓の鼓動が早くなった。グッドラッグ、とケヴィンの声が聴こえた気がした。
一郎が俺の唇を啄む。少し離れてはまた啄み、俺の顔を片手で支えると口づけは深くなった。
「いち、ろ」
合間に名前を紡ぐ。
「やめろ、なんて言わないでくださいよ」
「……言わねぇよ」
一郎が俺の手を掴んで寝室へと連れていく。ベッドに追い詰められて座るとキスを繰り返しながら一郎が自分のシャツのボタンを外した。シャツの裂け目から一郎の肌が見える。俺から離れると一郎は怪我をしていない片手だけシャツを引き抜いた。シャツは右手にくっついたままだ。
「自分で脱いで貰えますか。早瀬さんの体、全部見たい」
一郎の視線の中で一気に服を脱ぐ。ゆっくり脱げばそれだけ一郎の視線を感じるわけで、それには耐えられないと思ったからだ。
「いい脱ぎっぷりですね。そんなに待ちきれないですか?」
「そんなんじゃない」
「説得力はないですけどね」
俺のそそり立ったモノを見て一郎が口角を上げる。
「人のこと言えんのかよ」
「言えません」
ずっとしたかったと耳元で囁かれて、押し倒されただけで体がビクッと反応した。もう一度唇を重ね、左腕を俺の脇について一郎の唇が乳首に移動した。舌で優しく突起を舐め上げる。快楽よりも恥ずかしさで息が漏れた。
「ハァ、ん……」
上下の唇で乳首を挟んで引っ張る。引っ張りながら舌先で擦られると「あっ」と高い声が出た。
「手が足りない。早瀬さんがして」
一郎のパンツのボタンを外し、下着から性器を露出させると俺は躊躇いもなく口に含んだ。唾液を口の中にためて音を立てながら舐める。ペニスを横向きに咥えると唇でマッサージを咥えながら硬くした舌でペニスを擦った。
「んっ……はぁ」
一郎が呼吸を乱す。下半身が更に熱を上げた。
「上手いっていうのもなんかムカつきますね。こっちにお尻を向けて。俺が入れるようにしないと。くすっ、今、体がビクッてなりましたね」
「……はずかし」
一郎に見えるように四つん這いになってお尻を突き出している。一郎の指がねちねちと抽送を繰り返すたびに出ていって欲しくなくて締め付けてしまう。
「恥ずかしいからいいんですよ。ほら、そうやって耳まで真っ赤にしてる早瀬さん、可愛い」
「やだっ」
「じゃあ、やめますか?」
アナルから指を引き抜いて一郎が俺の顔を覗く。
「いち……」
「すげぇエロイ顔してますよ。顔真っ赤にして、俺が欲しくてたまらないって顔」
俺の顔に一郎が触れる。どれほど、この手に甘えて支えられたんだろう。
「……一郎……好きだ」
「……このタイミングで告白って、どれだけ煽るんですか」
「あっ、あぁっ」
アナルを押し広げる圧倒的な圧迫感に俺は喜びに体をわななかせた。頭の先まで電流が走り抜けるみたいだ。ゆっくりとしたストロークで一郎の腰が打ち付けられる。俺の体になじませるように丁寧に内壁を擦られ、熱が快楽分子となって体の中を駆け巡る。
「んっ、あんっ、あっ」
「気持ちいですか?」
「こ……わい」
「恐い?」
「きもち……あっ、あんっ、よすぎてぇんっ」
内部を広げるように動かされて、お尻まで揺れる。
「あぁっ!」
一郎の手がペニスに触れると弾かれたように体の力が抜けてシーツに顔を埋めた。
「一回、イっておきますか」
ずちゅ、ずちゅと深く腰を進め、スピードを増した。肉のぶつかり合う音が寝室に響き、俺の嬌声も止まらない。
「やっあんっ、こ、あんっ、こわっ、ああぁんっ」
一郎の体が覆いかぶさり、俺の背中を包む。手が俺の手に重ねられた。
「恐くないですよ。たくさん、気持ち良くなって」
「いちろっ」
「早瀬さんを抱いているのは俺だから」
「あぁっ、イクっ」
「くっ……あぁっ」
お互いに体をヒクつかせながら余韻が落ち着くまでキスをした。
「これで終わりだとは思ってないですよね?」
タカが俺に渡したのは、さっき秘密兵器だと言っていた絵だ。
「開けていい?」
「勿論」
慎重に包を開けると、そこには額装された絵が一枚。大学の制作室、西日の中で絵の具を掴む俺の姿。昔、タカが俺の絵を描き上げた時に一度見た構図。だけど、表情が違う。
「早瀬さんが笑ってる。キレイ」
絵のことなど何も分からないはずの一郎が最初に声を出した。
「これ、俺が見せて貰った「色を選ぶ人」と少し違う。表情も、仕草も」
以前は絵の具に手を伸ばしている姿だったはずだ。今は絵の具に手が触れている。
「あの絵が入賞して暫く経ってからもう一枚描いたんだ。本当はこっちの表情を描きたかったんだけど」
そう言った後、タカがチラッと佐倉を見て言葉を濁らせた。
「あの頃は描く心の準備が出来てなくて」
「俺、初めて見た」
佐倉が不満げに呟く。
「見せたことなかったし。これ、早瀬にあげるよ。早瀬が色を見つけた瞬間ってこういう顔するんだ。宝物見つけたみたいに笑う。この絵見たら、さ。分かるだろ?」
タカの言葉に、うんうんと頷いた。絵を描くことが好きだ。
ただ絵を描くことが好きだったんだ、俺。
「ありがとう、タカ。俺、本当になんて言ったらいいか」
俺が思わずタカに抱きつくと「あ」と声を上げて一郎も抱きついてくる。男二人に抱きつかれるという変な状況にタカは硬直し、それを見た佐倉が「渉に抱きつくなんて図々しい」と言って俺たちを引き離した。
「一郎、俺、お腹減った」
「すぐ作りますね。佐倉さん、行きますよ!」
「俺が助手なの?」
「他に料理ができる人はいるんですか?」
佐倉はタカを見てふっと遠い目をした。
「いないな……」
その日食べた親子丼は今まで食べたどの親子丼よりもおいしくて、俺はこの味を一生忘れないと思う。
タカと佐倉が帰って一郎と二人きり。タカに貰った絵をリビングの壁に立てかけて眺めていると一郎が背後から絡まってきた。
「タカさんって何者ですか? 早瀬さんのこんな顔描いて……」
一郎がむぅーっと声に出す。
「こんな顔、形に残すとか止めて欲しい。俺が独り占めしたいのに」
「何言ってんだよ」
「本気ですよ。俺、ずっと本気です」
一郎の顔が至近距離にあって、伏せた睫毛、その奥にある目が俺の唇を捉えている。少しずつアクセルを踏み込むみたいにして心臓の鼓動が早くなった。グッドラッグ、とケヴィンの声が聴こえた気がした。
一郎が俺の唇を啄む。少し離れてはまた啄み、俺の顔を片手で支えると口づけは深くなった。
「いち、ろ」
合間に名前を紡ぐ。
「やめろ、なんて言わないでくださいよ」
「……言わねぇよ」
一郎が俺の手を掴んで寝室へと連れていく。ベッドに追い詰められて座るとキスを繰り返しながら一郎が自分のシャツのボタンを外した。シャツの裂け目から一郎の肌が見える。俺から離れると一郎は怪我をしていない片手だけシャツを引き抜いた。シャツは右手にくっついたままだ。
「自分で脱いで貰えますか。早瀬さんの体、全部見たい」
一郎の視線の中で一気に服を脱ぐ。ゆっくり脱げばそれだけ一郎の視線を感じるわけで、それには耐えられないと思ったからだ。
「いい脱ぎっぷりですね。そんなに待ちきれないですか?」
「そんなんじゃない」
「説得力はないですけどね」
俺のそそり立ったモノを見て一郎が口角を上げる。
「人のこと言えんのかよ」
「言えません」
ずっとしたかったと耳元で囁かれて、押し倒されただけで体がビクッと反応した。もう一度唇を重ね、左腕を俺の脇について一郎の唇が乳首に移動した。舌で優しく突起を舐め上げる。快楽よりも恥ずかしさで息が漏れた。
「ハァ、ん……」
上下の唇で乳首を挟んで引っ張る。引っ張りながら舌先で擦られると「あっ」と高い声が出た。
「手が足りない。早瀬さんがして」
一郎のパンツのボタンを外し、下着から性器を露出させると俺は躊躇いもなく口に含んだ。唾液を口の中にためて音を立てながら舐める。ペニスを横向きに咥えると唇でマッサージを咥えながら硬くした舌でペニスを擦った。
「んっ……はぁ」
一郎が呼吸を乱す。下半身が更に熱を上げた。
「上手いっていうのもなんかムカつきますね。こっちにお尻を向けて。俺が入れるようにしないと。くすっ、今、体がビクッてなりましたね」
「……はずかし」
一郎に見えるように四つん這いになってお尻を突き出している。一郎の指がねちねちと抽送を繰り返すたびに出ていって欲しくなくて締め付けてしまう。
「恥ずかしいからいいんですよ。ほら、そうやって耳まで真っ赤にしてる早瀬さん、可愛い」
「やだっ」
「じゃあ、やめますか?」
アナルから指を引き抜いて一郎が俺の顔を覗く。
「いち……」
「すげぇエロイ顔してますよ。顔真っ赤にして、俺が欲しくてたまらないって顔」
俺の顔に一郎が触れる。どれほど、この手に甘えて支えられたんだろう。
「……一郎……好きだ」
「……このタイミングで告白って、どれだけ煽るんですか」
「あっ、あぁっ」
アナルを押し広げる圧倒的な圧迫感に俺は喜びに体をわななかせた。頭の先まで電流が走り抜けるみたいだ。ゆっくりとしたストロークで一郎の腰が打ち付けられる。俺の体になじませるように丁寧に内壁を擦られ、熱が快楽分子となって体の中を駆け巡る。
「んっ、あんっ、あっ」
「気持ちいですか?」
「こ……わい」
「恐い?」
「きもち……あっ、あんっ、よすぎてぇんっ」
内部を広げるように動かされて、お尻まで揺れる。
「あぁっ!」
一郎の手がペニスに触れると弾かれたように体の力が抜けてシーツに顔を埋めた。
「一回、イっておきますか」
ずちゅ、ずちゅと深く腰を進め、スピードを増した。肉のぶつかり合う音が寝室に響き、俺の嬌声も止まらない。
「やっあんっ、こ、あんっ、こわっ、ああぁんっ」
一郎の体が覆いかぶさり、俺の背中を包む。手が俺の手に重ねられた。
「恐くないですよ。たくさん、気持ち良くなって」
「いちろっ」
「早瀬さんを抱いているのは俺だから」
「あぁっ、イクっ」
「くっ……あぁっ」
お互いに体をヒクつかせながら余韻が落ち着くまでキスをした。
「これで終わりだとは思ってないですよね?」
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