【完結】酷くて淫ら

SAI

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2.気持ちいいは酷いこと ☆

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一郎は俺を見下ろして口元を歪めた。その表情に不覚にもゾクッと煽られる。顎を持ち上げられて上を向かされ、一郎の口の中が見えた。口の中、内臓の色、舌の脇から奥歯の裏側が見える。

エロい。

重なる唇。
いつもならこんなこと許しはしないのに。
転がされ首筋を舐められた。頸動脈に歯を立てられ、吸われ、乳首に指が触れる。

「ま……てよ。酷く……しろよ。そういう、約束だろ」
「酷くしてますよ。だって早瀬さん、気持ちいいでしょう?」
「だからっ……そ……れじゃ……ダメな……んだよっ」

一郎が顔を上げて俺の唇を舐める。一郎は俺の目を見てほほ笑んだ。
こいつ……。

「あぁっ」

一郎にペニスを咥えられてぎゅっと腰を引いた。脚を閉じて逃げたくてもベルトがそれを許してくれない。

「やっ……めろっ」
「ビクン、ビクンしてる。もうイキそうですか?」
「あっ、あぁっ」

イクと告げないまま精を放ったせいで一郎の顔が俺の精液まみれになった。

「この顔、綺麗にしてもらえますよね?」
「なっ、洗って来いよ」
「俺はあなたに舐めて欲しいんですけど」

さっきまでの無表情とはまるで違う。一郎は俺の頭を両手で固定して掴むと、自分の顔を俺の唇で拭いはじめた。

「ほら、ちゃんと舌を出して。じゃないと痛くしてあげないよ?」
その言葉にビクッと心が震え、気が付いた時には舌を出していた。

「くす、上手ですね。また、立ってきてるし。ゴム、ありますか?」
「ベッドの横の引出し」

一郎はゴムを指に嵌めると俺のアナルを揉み始めた。手と足を繋がれた俺はベッドに突っ伏す体勢になる。

「ん、やだ、そ、いう、のは……いら……ない」

俺の言葉を無視して一本の指が挿入され内部を撫でまわす。指が2本に増やされるとアナルがヒクヒクと反応するようになった。

「締め付けて気持ちよさそう」
「早く……入れ、ろよ。ほぐし……はぁ、なんか、い、ら……ない」

一郎は何も言わずに指を3本にした。ぬちゅ、っと音が聞こえる。こんな音が自分からするのは何年ぶりだろうか。

「も、やだぁ……、酷く……し、ろって、言ったぁっ!」

「だから、酷くしてますよ」

指が引き抜かれ、比べようもない質量が俺の中に挿入される。いつもは痛みを与えてくれるそれも今日は快楽しかもたらさない。

「あぁっ、やめっ……イクっ」

腰が跳ねてビクビクと身体が痙攣しているのに一郎は腰を動かし始めた。

「あっ、あっ、あっ、やっ」

気持ち良すぎて体が跳ねるたびに繋がれた手首と足首が軋む。アナルを上に向けて、不自然に体を曲げて貫かれ、快感が電流のように走り続けた。

「早瀬さん、気持ちいいの嫌いでしょ? だからいっぱい気持ち良くしてあげますね。ほら、俺、酷いことしてるでしょ」

「やめ、やぁっ」

その日は意識がなくなるまで快楽を与え続けられた。




喉乾いた……。
渇きを感じて目が覚める。リビングから明るい光が漏れているという事は朝なのだろう。体を起こして手首を見ると手首にはしっかりとベルトの跡が残っていた。そして隣を見れば黒いツンツン頭が髪の毛を萎えさせて布団の中に丸まっている。

「こいつ、まだいたのか」

一郎をベッドに残したまま冷蔵庫から水を取り出して飲んだ。リビングへ行き、カーテンを一気に開ける。一面が全部ガラスになっており、ここからは繁華街を見下ろすことが出来た。

「寒い・・・」

寝室へ戻ると寝ている一郎に構わず布団をはぎとる。ううん、と声を上げて一郎が転がったが気にしない。そのまま布団をリビングに運ぶとストックボックスからポッキーを取り出した。布団にくるまって窓際に座り、ポッキーを咥える。いつもの場所だ。三角巾をつけた掃除のおばさんが道路に落ちている空き缶を拾っているのが見える。もうじきその隣のマンションのガタイの良いお兄さんが出て来て、コンビニに向かうはずだ。平日のいつものルーティン。

「ほら、出てきた。これから出勤ですかね。ご苦労様です」

「何してるんですか?」
「人間観察」

一郎の方を振り向くこともせずに答える。

「ふぅん」
一郎は寄ってくると俺のくるまっている布団を引っ張り、その中に入ってきた。

「何すんだよ」
「この部屋、寒い」
「なら早く帰りなよ」

「……やだ」
「はぁ?」
「何の約束もなく帰れない」

「あのさ、なんか勘違いしてるようだけど。俺、君のこと何とも思ってないから。一夜の過ちってやつだよ。だから、早く出てって忘れて。次なんて無いよ」

「そうなの?」
「そうだよ」

こっちが真面目に話しているというのに一郎は目をゆるゆる閉じ始めた。

「俺、早瀬さんに肩を貸すために生まれてきたから、早瀬さんの近くにいないと」
一郎はそう言ってそのまま寝落ちした。

「何だよ……こいつ」




昼になってもまだ一郎は眠ったままだ。

「丸まって布団に包まって猫みてぇ。ってか、いつまで眠るつもりだ?」

頭をもしゃもしゃにしてみたり、目を無理やり開けさせたりしてみたが一郎は一向に目を覚ます気配がなかった。

「……腹へったな」
一郎に悪戯するのにも飽きた俺は自分がかけていた分の布団も一郎にかけるとコンビニに出かけた。

「パンかな。サンドイッチ、うん。そんな気分だ」
自分の分のサンドイッチを手に取ってから、家にいる一郎を思い出す。

……なんか本当に猫でも飼い始めたみてぇ。

仕方なしに、自分と同じものをもう一組買った。

 部屋に戻ると、パタパタパタと足音がしている。
……こんなところも猫なのかよ。

「起きた?」
「あ、早瀬さん。いなくなっててびっくりしました」
「それで走り回ってたの?」
「走り回ってはないですけど、なんか部屋が広かったんで」
「……あ、そう。サンドイッチ買ってきたけど、食う?」

「俺の分も買ってきてくれたんですか?」
「ついでにな」
「ありがとうございます!あ、お金……ない」
「いらないよ。俺が勝手に買って来たんだし」

「そういうわけにはいかないですよ。お金はきっちりしないと。だから、明日また来ますね?」
「……お前、金持ってないって嘘だろ」
「嘘じゃないですよ。でも、これで、次の約束ができましたね」

一郎はにこりとほほ笑んだ。


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