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第四章
21. リアン王女の意志とグショウとジョンのデート
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「ユーリスアを守る為にはそれが最善だと考えたのです。それに、私はアレン以外を愛することもないし他の誰かの元へ嫁ぐ気もありません。この身を知識に捧げたいと思っております。」
「そんなこと国王がお許しになるはずがありません!」
「ヴァンス、許す、許さないの問題ではないのです。私の中ではすでに決まったこと。リベルダ様、どうか私の願いをお聞き届けください。」
リアン王女の言葉には何の迷いも感じられなかった。きっと何度も考えての言葉だったのだろう。
「いいだろう。リアン王女が私の知識を継いでくれるというのなら、これほどの適任はいない。魔力も聡明さも十分だ。」
「それはそうですけど、本当に良いのですか?」
「マリア、私もそろそろいい歳なんでな。いい加減、継いでくれる人を探さなくてはと思っていたのだ。これほどの人材が自ら名乗りを上げてくれたのだ。これはむしろチャンスであろう?」
「リベルダがそう決めたのなら私は何の口出しも致しませんわ。」
「リアン王女、王女が結界装置を配り終えたら早速記憶の引継ぎを始めよう。」
「願いをお聞き届けくださりありがとうございます。」
移動魔法陣のあるトイレへと向かうリアン王女達を見送りながら私はある思いを抱いていた。
「ジョン、ちょっといいですか?」
「どうしたんですか?改まって。あ、愛の告白とか!?」
ぐふふ、と笑うジョンに突っ込むこともせずに誰もいなくなったリビングへと連れ出した。
「ジョン、あなたはオーヴェルに帰りなさい。」
「・・・。私があなたの側を離れるわけには・・・。」
ジョンが私から目を逸らした。分かってはいるのだ。オーヴェルに戻らなければならないことを。
「ジョン、あなたが私を心配してくれることは嬉しく思っています。でも、あなたには私のような後悔をして欲しくはない。国を、王を守る為の騎士団に所属しておきながら何一つ守れず、守って死ぬことすらできず生き残ってしまった。全てを失って。」
蘇る後悔の感情に震えまいと拳を握る。
「あなたにはそんな後悔をして欲しくはないのです。」
「グショウ隊長・・・。」
「あなたが本来いるべき場所へ帰りなさい。私は大丈夫です。これでもターザニア騎士団の隊長ですよ。むざむざと死んだりなんかしませんよ。」
ジョンがふっと笑った。
「分かりました。今晩には帰ります。でも、一つだけ、一つだけお願いがあります。」
「なんですか?」
「今から夜までのあなたの時間を私に下さい。」
ジョンの目に宿る強さに引き込まれそうになってグッと顔をあげた。
「そんなに構えないでくださいよ。ただ、あなたとデートをしてみたいなと思ったのです。二人で過ごす日もたくさんありましたが、デートをしようってしたことはなかったでしょう?」
ジョンが子供の様に笑ったお蔭で私の中の何かが解けたような感覚があった。
「デートをするような間柄ではなかったと思いますが。」
ニヤリと笑うとすぐさまジョンが「ひどいっ」と声を上げる。
「いいでしょう。デートでも何でもしますよ。」
「よし!リベルダ様に話してきますね!」
パタパタと駆けてゆくジョンを見ながら戦いなどずっと、ずっと起こらなければいいのにと思った。
「で、どこへ行きますか?」
「それなんですがいい所を教えて貰ったんですよ、ユーリスアの王都にあるらしいのですが。」
ジョンが私の手を取り、ぴょんぴょんとトイレに向かう。
「まさか、たかがデートに空間移動魔法陣を使うつもりじゃないでしょうね?」
「たかがデートとは何ですか。せっかくユーリスア王都まで一瞬で行けるというのに。私たちは世界を守ろうと動いているのですよ。少し使うくらい罰なんか当たりませんよ。」
「いや、しかしそういうわけには。国家が厳重に管理する空間移動魔法陣ですよ!!」
「ここのトイレにある魔法陣のことですか?ここのトイレを国家が守っていると?」
「トイレを守っているなんて言っていません!」
「グショウ隊長、あなたのそういう真面目なところもお好きですよ。」
「ぐっ。」
「そうそう、その国家が守っている空間移動魔法陣ですがリベルダ様が時々お酒を買うために使っているのを知っていますか?」
「リベルダ様、酒・・・。」
頭を抱えている間に連れ去られ、気がついたらユーリスアの空間移動魔法陣の上に立っていた。
「何者だ!?」
パタパタと現れたユーリスア騎士団の面々にジョンが悠々と嘘をつく。
「リアン王女の命を受け参りました。こちらを通していただけますか?ヴァンス隊長の許可はいただいております。ご確認いただいても構いません。私の名前はジョン・リーブス、こちらはグショウ・アークロッドです。」
こいつ、堂々と・・・。
頭痛がひどくなるのを感じた。
「グショウ隊長、ここですよ。ほら、何とも言えぬ温かい香りがするでしょう?」
ジョンが指したのはガラス張りの透明な建物だ。急かされるように中に入ると湿度のある温かい空気に包まれた。
「いらっしゃいませ、湯宿にようこそ!この建物は温泉街を再現しております。宿着の貸し出しもございますのでごゆっくりお寛ぎください。こちらに館内の案内がございますのでどうぞ。」
「いいでしょ?外デートもいいんだけど寒いしなぁ、と思っていたらリベルダ様が教えてくれたんです。グショウ隊長、温泉とか好きでしょ?」
ジョンが私の顔を覗き見てくる。どことなく浮き足立っているジョンの姿が微笑ましい。
羽目を外す日があってもいいか。こんな気持ちになるのはいつぶりだろうか。もう思い出せないくらい久し振りなのは確かだ。
「あぁ、好きですね。せっかくですから宿着も借りましょうか?」
「うほっ、そうしましょ、そうしましょ。」
「うほって何ですか・・・。」
パタパタと駆けるようにして移動するジョンの後を追った。
「グショウ隊長のそのグレイの宿着、良く似合いますね。あなたの白い肌が浮くことなくよく馴染む。」
「それはどうも。ジョンも良く似合っていますよ。あなたの腹黒さにぴったりですね。」
嫌味のつもりで言ったのだがジョンの頭の中には花が咲いているようで、ありがとうございます!と笑顔で答えてきた。
「グショウ隊長、温泉に入りましょうよ!ここ5種類の名湯が再現されているらしいですよ。」
「いいですねぇ。」
選んだのは【白濁湯】だ。ジョンに体を晒すのがなんとなく恥ずかしくて選んだ湯だったが、その前に試練があった。
「どうしたのですか?服を脱がないとお風呂に入れませんよ。」
ジョンは股間を隠すこともなくバサッと服を脱ぎ、申し訳程度に股間をタオルで隠した。
はぁ、コイツの前で全裸になるのか・・・。
「もしかして恥ずかしいのですか?」
「そ、そんなわけないでしょう。」
宿着をはだけさせるとネットリとしたジョンの視線が絡む。
「・・・もう少し遠慮をしたらどうですか?そんなに見られると脱ぎづらい。」
「嫌です。グショウ隊長の裸体はもう何度もスキルで盗み見ましたが、生はなかなか無いので。貴重な機会なんですよ。」
「盗み見たって本人に言うことですか。」
呆れて言葉もない。恥ずかしさにモジモジと着替えるよりもジョンを見習ってバサッと着替えた方がジョンの目に晒されないだろう。
「お背中流しましょうか?」
「いや、いい。」
「そんなっ!!ここまで見せといて触らせてもくれないなんてっ。」
ジョンを無視して体を洗い始めると、生殺しっというジョンの悲痛な叫び声が聞こえた。全く、ここは公共の場所だというのに。石鹼の泡を流しているとジョンの視線を感じた。
まただ。煽るようなジョンの視線、あんな視線を送ってくるくせに私が振り返るといつものジョンに戻る。全く、世話の焼ける男だ。いや、世話の焼ける男なのは私の方か。
頭から湯を被って湯船に足を入れた。
「そんなこと国王がお許しになるはずがありません!」
「ヴァンス、許す、許さないの問題ではないのです。私の中ではすでに決まったこと。リベルダ様、どうか私の願いをお聞き届けください。」
リアン王女の言葉には何の迷いも感じられなかった。きっと何度も考えての言葉だったのだろう。
「いいだろう。リアン王女が私の知識を継いでくれるというのなら、これほどの適任はいない。魔力も聡明さも十分だ。」
「それはそうですけど、本当に良いのですか?」
「マリア、私もそろそろいい歳なんでな。いい加減、継いでくれる人を探さなくてはと思っていたのだ。これほどの人材が自ら名乗りを上げてくれたのだ。これはむしろチャンスであろう?」
「リベルダがそう決めたのなら私は何の口出しも致しませんわ。」
「リアン王女、王女が結界装置を配り終えたら早速記憶の引継ぎを始めよう。」
「願いをお聞き届けくださりありがとうございます。」
移動魔法陣のあるトイレへと向かうリアン王女達を見送りながら私はある思いを抱いていた。
「ジョン、ちょっといいですか?」
「どうしたんですか?改まって。あ、愛の告白とか!?」
ぐふふ、と笑うジョンに突っ込むこともせずに誰もいなくなったリビングへと連れ出した。
「ジョン、あなたはオーヴェルに帰りなさい。」
「・・・。私があなたの側を離れるわけには・・・。」
ジョンが私から目を逸らした。分かってはいるのだ。オーヴェルに戻らなければならないことを。
「ジョン、あなたが私を心配してくれることは嬉しく思っています。でも、あなたには私のような後悔をして欲しくはない。国を、王を守る為の騎士団に所属しておきながら何一つ守れず、守って死ぬことすらできず生き残ってしまった。全てを失って。」
蘇る後悔の感情に震えまいと拳を握る。
「あなたにはそんな後悔をして欲しくはないのです。」
「グショウ隊長・・・。」
「あなたが本来いるべき場所へ帰りなさい。私は大丈夫です。これでもターザニア騎士団の隊長ですよ。むざむざと死んだりなんかしませんよ。」
ジョンがふっと笑った。
「分かりました。今晩には帰ります。でも、一つだけ、一つだけお願いがあります。」
「なんですか?」
「今から夜までのあなたの時間を私に下さい。」
ジョンの目に宿る強さに引き込まれそうになってグッと顔をあげた。
「そんなに構えないでくださいよ。ただ、あなたとデートをしてみたいなと思ったのです。二人で過ごす日もたくさんありましたが、デートをしようってしたことはなかったでしょう?」
ジョンが子供の様に笑ったお蔭で私の中の何かが解けたような感覚があった。
「デートをするような間柄ではなかったと思いますが。」
ニヤリと笑うとすぐさまジョンが「ひどいっ」と声を上げる。
「いいでしょう。デートでも何でもしますよ。」
「よし!リベルダ様に話してきますね!」
パタパタと駆けてゆくジョンを見ながら戦いなどずっと、ずっと起こらなければいいのにと思った。
「で、どこへ行きますか?」
「それなんですがいい所を教えて貰ったんですよ、ユーリスアの王都にあるらしいのですが。」
ジョンが私の手を取り、ぴょんぴょんとトイレに向かう。
「まさか、たかがデートに空間移動魔法陣を使うつもりじゃないでしょうね?」
「たかがデートとは何ですか。せっかくユーリスア王都まで一瞬で行けるというのに。私たちは世界を守ろうと動いているのですよ。少し使うくらい罰なんか当たりませんよ。」
「いや、しかしそういうわけには。国家が厳重に管理する空間移動魔法陣ですよ!!」
「ここのトイレにある魔法陣のことですか?ここのトイレを国家が守っていると?」
「トイレを守っているなんて言っていません!」
「グショウ隊長、あなたのそういう真面目なところもお好きですよ。」
「ぐっ。」
「そうそう、その国家が守っている空間移動魔法陣ですがリベルダ様が時々お酒を買うために使っているのを知っていますか?」
「リベルダ様、酒・・・。」
頭を抱えている間に連れ去られ、気がついたらユーリスアの空間移動魔法陣の上に立っていた。
「何者だ!?」
パタパタと現れたユーリスア騎士団の面々にジョンが悠々と嘘をつく。
「リアン王女の命を受け参りました。こちらを通していただけますか?ヴァンス隊長の許可はいただいております。ご確認いただいても構いません。私の名前はジョン・リーブス、こちらはグショウ・アークロッドです。」
こいつ、堂々と・・・。
頭痛がひどくなるのを感じた。
「グショウ隊長、ここですよ。ほら、何とも言えぬ温かい香りがするでしょう?」
ジョンが指したのはガラス張りの透明な建物だ。急かされるように中に入ると湿度のある温かい空気に包まれた。
「いらっしゃいませ、湯宿にようこそ!この建物は温泉街を再現しております。宿着の貸し出しもございますのでごゆっくりお寛ぎください。こちらに館内の案内がございますのでどうぞ。」
「いいでしょ?外デートもいいんだけど寒いしなぁ、と思っていたらリベルダ様が教えてくれたんです。グショウ隊長、温泉とか好きでしょ?」
ジョンが私の顔を覗き見てくる。どことなく浮き足立っているジョンの姿が微笑ましい。
羽目を外す日があってもいいか。こんな気持ちになるのはいつぶりだろうか。もう思い出せないくらい久し振りなのは確かだ。
「あぁ、好きですね。せっかくですから宿着も借りましょうか?」
「うほっ、そうしましょ、そうしましょ。」
「うほって何ですか・・・。」
パタパタと駆けるようにして移動するジョンの後を追った。
「グショウ隊長のそのグレイの宿着、良く似合いますね。あなたの白い肌が浮くことなくよく馴染む。」
「それはどうも。ジョンも良く似合っていますよ。あなたの腹黒さにぴったりですね。」
嫌味のつもりで言ったのだがジョンの頭の中には花が咲いているようで、ありがとうございます!と笑顔で答えてきた。
「グショウ隊長、温泉に入りましょうよ!ここ5種類の名湯が再現されているらしいですよ。」
「いいですねぇ。」
選んだのは【白濁湯】だ。ジョンに体を晒すのがなんとなく恥ずかしくて選んだ湯だったが、その前に試練があった。
「どうしたのですか?服を脱がないとお風呂に入れませんよ。」
ジョンは股間を隠すこともなくバサッと服を脱ぎ、申し訳程度に股間をタオルで隠した。
はぁ、コイツの前で全裸になるのか・・・。
「もしかして恥ずかしいのですか?」
「そ、そんなわけないでしょう。」
宿着をはだけさせるとネットリとしたジョンの視線が絡む。
「・・・もう少し遠慮をしたらどうですか?そんなに見られると脱ぎづらい。」
「嫌です。グショウ隊長の裸体はもう何度もスキルで盗み見ましたが、生はなかなか無いので。貴重な機会なんですよ。」
「盗み見たって本人に言うことですか。」
呆れて言葉もない。恥ずかしさにモジモジと着替えるよりもジョンを見習ってバサッと着替えた方がジョンの目に晒されないだろう。
「お背中流しましょうか?」
「いや、いい。」
「そんなっ!!ここまで見せといて触らせてもくれないなんてっ。」
ジョンを無視して体を洗い始めると、生殺しっというジョンの悲痛な叫び声が聞こえた。全く、ここは公共の場所だというのに。石鹼の泡を流しているとジョンの視線を感じた。
まただ。煽るようなジョンの視線、あんな視線を送ってくるくせに私が振り返るといつものジョンに戻る。全く、世話の焼ける男だ。いや、世話の焼ける男なのは私の方か。
頭から湯を被って湯船に足を入れた。
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