【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第四章

3. 帰宅

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「ライファの家はこの森の中にあるの?ユーリスアには何度か来たことがあったけど、この森は初めてだなぁ。」

飛獣石から降りるとルカは興味深そうに森を眺めた。

「大して強い魔獣が住んでいる訳でもないからハンターたちが来ることはないからね。」

森の中央、もくもくの木の前に行くと慣れた手つきでスージィに合図を送った。視界が歪んだかと思うとスージィの前にいる。

「おぉぉぉぉぉお、なんだこれ。」
結界をくぐったと思えば開けた庭があり家がある。ルカが驚きの声を上げた。

「お帰り、ライファ、レイ。無事で何より。お客さんかい?こんにちは、私はスージィ。」
「おおおおお、はじめまして!ルカと申します!!」

ルカがスージィに向かって勢いよく頭を下げた。

「「ただいま、スージィ。」」
「師匠いる?」
「いるよ。早く顔を見せてあげるといい。」

「うんっ。」
「ライファ、帰ってきたか。」

スージィと話をしていると師匠がやってきた。

「リベルダ様、お久ぶりです。」
「あぁ、よく帰ってきた。で、こっちが話していたルカか。」

師匠にジロリと見られてルカが背筋をピンッと伸ばした。師匠の迫力に気圧されるかと思っていたがルカはキラキラとした眼差しを師匠に向けている。どんな人物か興味津々なのだろう。

「フランシールからの客人か。悪いが少し覗かせてもらうぞ。今は用心に越したことはないからな。」

ルカは何かを察したようで大人しく師匠の手を受けた。師匠の手がルカの頭に触れる。そこから光の帯がルカの体をすり抜けた。

「問題はないようだな。」

師匠の言葉に3人がほっとした瞬間、師匠が「・・・スキル持ちか」と呟いた。

んん!?
レイと二人、ルカを見るとニコッと笑ったルカがいた。

「やる時はまぁまぁやるよって言ったでしょ。」

「まさかスキル持ちだとは・・・。どんなスキルなんだ?いや、言えないなら言わなくてもいいけど。」

レイがルカに尋ねながら私をそっと盗み見る。自分のスキルのことを黙っていながらルカのスキルのことを聞いてもいいのだろうかと視線を彷徨わせているとルカはあっさりと白状した。

「知られたところでどうにも出来ないだろうからいいよ、教えてあげる。僕は5秒先の未来を見ることが出来るんだ。」

「「5秒!?」」
私とレイが同時に声を上げた。

「そ、5秒。神様もさ、なかなか試練的なスキルをくれるよねー。」

「戦闘向きのスキルだな。生かせるかどうかは本人次第もいいところだ。」
師匠が可笑しそうに笑う。

「そうですよねー。で、僕の秘密を簡単にバラしたこちら様は何者ですか?」
「ん?お前たち何も話していないのか?」
「はい、まだ。」
「私の名はリベルダ。魔女だ。」

「・・・・・ん?」
ルカは首を傾けてキョトンとした表情をした。

「まじょ・・・!?え、え、魔女!?」
ルカは理解が出来ないというように私とレイの顔を交互に見た。

「そう、私の師匠は魔女で私たちが薬材を探していたのは師匠たちの指示なんだ。」
「師匠たち!?」
「あぁ、魔女はもう一人いる。」
「はは、はははははは。なんだかもう、何が何やら・・・。」




リビングのソファに座るとベルが懐かしの我が家だというようにフラフラと飛んでいった。自分のテリトリーのチェックでもしに行くのだろう。

「師匠、フランシールとガルシアは本当に戦争を始めるのですか?」
「あぁ、もう止まらないだろうな。ガルシアにあるダーナン村が一晩で滅んだ。その犯人がフランシールということになっている。」

「犯人はターザニアを滅ぼした第三王妃ですか?」
レイの言葉に師匠が頷く。

「あぁ、第三王妃、魔女のローザで間違いないだろう。」
「ちょっと待って。待って、どういうこと?」

混乱しているルカにレイがあとでちゃんと説明すると言った。

「師匠、私に何ができますか?」

「ライファ、お前はマリアのところにいって解毒薬の完成を急げ。ダーナン村を襲った魔獣は村が全滅した後も暴れ続けたそうだ。だが、村人以外を襲うことはなかった。ダーナン村の全滅を指示されていたのだろう。あの魔獣どもが大量にユーリスアを襲ったら、この国とて生き残れるか・・・。」

ターザニアの恐怖がこの国でも起こるかもしれない。その可能性に私の体を恐怖が包んだ。

「はは、怖がっている場合じゃないですね。」
「怖がってもいい。怖いというのは危険を回避する大事な感情だ。レイ、夕食後お前は一度家に戻れ。」
「いや、私もここに残って何か手伝いを・・・。」

「手伝いが必要な時はまた呼ぶ。今は家に帰って家族に顔を見せて来い。こんな時だからこそ、だ。」
「・・・わかりました。」

「ルカ・・・。お前はライファについて行け。そのスキルを生かせているのか見てみたいしな。とにかく、向うに行けば何かしらやることはある。」

「はい!」




師匠を先頭にトイレに向かうと、ルカがソワソワし始めた。

「つ・・・連れションっていう訳ではないよね!?」
自信無さげなルカの声を聞いて師匠が大きなため息をついた。

「この場所に空間移動魔法陣を描いたのは失敗だったな。」

魔法陣を抜けた先は勿論、先生の家だ。背後で「もう何も驚くまい」と呟いているルカの声が聞こえる。いつものように勝手に調合部屋に行きドアを開けるとござっぱりとしている先生がいた。

「あら、ライファにレイ、お帰りなさい。そちらはどなたですの?」
ルカが自己紹介をしている間、先生の家のお家小人であるジュリアに話しかけた。

「先生、今日は随分とこざっぱりしてますね。どうしたのですか?」

いつもの先生は寝不足でボロボロ、腹ペコでお風呂もいつ入ったのやら・・・、という状態なのだ。

「グラントさんのおかげですよ。」
「ライファ、グラントはね、なかなかの曲者ですわよ!几帳面で口うるさい小姑のようですわ!!」

先生がキィィィィっと声を上げた。

「昨日、いい加減にお風呂に入りなさいと風呂場に放り込まれたことを根に持っているのでございます。それと、これ。」

ジュリアが指さしたのは丸に顔がついたものだ。
何ですか?これ、と聞いた瞬間、その丸が叫び出した。

「ビビビビビビビ!!1時間後、お食事の時間でございます!!」
「あの丸いのが気に障っているのです。」

「私が食事をとるまでずっとあの調子ですのよ!何度か破壊を試みたのにリベルダが余計なことを・・・。」

「お前に簡単に壊されないようにして欲しいとグラントに頼まれたからな。それに、グラントも妥協して一日に一食とれば良いという設定にしているだろ。」

「くぅぅぅぅ~っ。」

先生が言葉にならない声を上げた。
なるほど。グラントさんのお蔭でこざっぱりした先生に仕上がっているのか。先生は迷惑そうだが、誰が見てもグラントさんの功績を褒めるだろう。

「グラントさんはどこに?」
「外で結界装置の製造に勤しんでいますわ。」
「結界装置ですか!?」

「あぁ結界を増強、維持するタイプのものだ。ローザの魔獣が魔法陣から現れるのであればその魔法陣から出られないように結界を張れば少しは時間が稼げるだろう。」

「そして結界で相手の動きを封じている間に解毒薬で魔獣の目を覚ますのです。」
「解毒薬で目を覚まさなくても結界で閉じ込めている間に攻撃すればいいのでは?」

レイが質問すると先生が説明を始めた。

「薬で半催眠状態になっているということは潜在能力全開、もしくはそれ以上の力を放出できる状態であると考えられます。そんな魔獣と戦っても勝てる見込みは低くなるでしょうね。しかも、無理やり能力を引きずり出されているのならその反動は必ず来る。解毒剤を使用した方が魔獣を抑えやすくなると思いますよ。」

「「「なるほど。」」」




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