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第三章
28. ウガ
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それからの二日間、みっちり練習をした。
シューピンに乗って動きながら撃つのは、流石に50mの距離ともなると15回に1度しか当たらなかったが、シューピンの上に立って撃つのだと5回に1度は当たるようになった。
50m先、アカントが木の枝に座って休んでいる。眠り玉を入れた小弓でアカントの顔に照準を合わせた。静に息を吐いて肩の力を抜きつつ腕を固定する。先ほどから髪の毛がフワッとなびく程度の風が吹いている。私は照準を少しだけずらした。
シュッ
眠り玉は軽い音を立てて小弓を離れた。僅かな時間差の後、アカントが体勢を崩し木から落下した。
「やった!当たった!」
「本当?よし、見に行こう。」
レイと一緒に森の中を走る。
「いたっ!」
アカントが木の下でぐっすりと眠っていた。
「今日の夜ご飯はこれで決まりだな。」
レイの笑顔に、頷く。
その後も木の弾を使った練習を続け、レイはレイで森へトレーニングに行きその日は終了した。そしてその夜ジェシーに頼んで、明日ウガを移動させる旨のチョンピーをガヌーダ宛に飛ばしてもらった。
翌朝はみんなが寝静まっている間に起きた。
今日はウガとの決戦の日だ。戦いにおいて、いや、そうじゃなくても食事は大事だ。昨日、ジェシーさんに頼んで分けてもらった野菜と狩りで獲ったアカントを使ってお弁当を作る。
アカントと数種類の野菜を細かく刻んで卵をつなぎにして丸めて揚げ焼きにした肉団子。数種類の野菜とジェル状にしたドレッシングを薄い野菜の葉っぱで包んだ野菜ボール、ジェシーさんから貰った魚を塩焼きにしたものを容器に詰め、果物はそのままバッグに入れた。
「もう起きていたのか。」
ジェシーさんが漁へ行く準備をするために部屋から出てきた。
「はい、今日ウガを移動させるのにお弁当でも作ろうかと思いまして。みなさんの分も作ってあるので朝ごはんにでもしてください。」
ジェシーさんは鍋の中を覗くと、初めて見る料理だと顔を綻ばせた。
「ありがとう、とても美味しそうだ。エンヤ族の村までの道のりはわかるかい?」
「はい、大丈夫です。」
「では、これを貸そう。気を付けて行くんだよ。ウガの件だが、無理だと思ったらやめて逃げなさい。逃げても誰も責めたりはしないのだから。」
エンヤ族に呼びかけるための笛を渡しながらジェシーさんが心配した表情で言った。
「ありがとうございます。」
以前ジェシーさんが通った道を思い出しながら進む。ベルはお散歩気分なのだろうか、今日は自分で飛ぶことにしたようだ。
「今朝は早くから起きていたみたいだけど、ちゃんと眠れた?」
「うん、ちゃんと寝たよ。今朝はお弁当作っていたんだ。楽しみがないと・・・ね。」
「そうだね。確かに楽しみがあった方が頑張れる。」
「でしょう?」
私は得意げにふふんと笑った。
「楽しみ・・・か。もうひとつ、楽しみが欲しいなぁ、ライファ。」
「ん?いいよ。何?」
レイが私の方を向いて立ち止まった。
レイが足を一歩進め私との距離が20cmになったところで、突然レイの髪の毛が私の頬に触れた。薄く開けられたレイの目に見とれているとそのまま唇に柔らかい感触があった。
あ・・・。
0.3秒後にそれがキスだと知る。
「これのもっと深いやつ、ライファからして?」
「え!?」
「私の楽しみ。楽しみがある方が頑張れるでしょう?楽しいことはたくさんあった方がいいよね。」
レイがにっこりとほほ笑む。
「いや、ほら、他にも楽しいことはたくさんあるだろ?」
タジタジになって答えると、さっきいいって言ったのにとレイが拗ねた。
「・・・そんなに嫌なの?」
私にそう聞きながら、レイが下を向いた。長いまつ毛が色白の肌に影を作って、悲しそうな顔をする。
こ、これはどうしたことだろう。いつもは強気な態度を崩さないレイが、うるっとした雰囲気を出している。
「いや、そ、そういうわけじゃ。」
「じゃあ、いいよね?」
弱弱しく尋ねられれば、出すべき答えは一つしかない。
「わかった。」
「本当?絶対だよ。」
「うん、本当だ。」
約束が成立するとレイは嬉しそうに微笑んだ。
「すごく・・・たのしみ。」
その笑みは正しく、デビルレイの笑みだった。
「待っていたぞ。」
前回通された部屋と同じ部屋、台の上に座っているガヌーダ様は相変わらず今日も迫力美人だ。
「作戦は立ったか?」
「ん、まぁ、なんとか。」
レイが軽く答える。
「ウガが出現する場所までは村の者が案内する。それと、これを身に着けておいてくれ。」
ガヌーダ様が私たちに渡したのは腕に付けられるようになっている記録石だ。
「二の腕のところに嵌めておいてくれ。悪いが其の方らがウガと対峙している間、我々がその場にいることはない。その記録石が我々の目の代わりとなる。」
「なるほど。誤魔化し防止ってことですね。」
「まぁ、そういうことだ。」
ガヌーダ様はそう言うと台を降り、私たちの前に来て片膝を床に着き青々とした葉っぱがついた枝を振った。エンヤ族に伝わる歌なのだろうか。謎の呪文のような歌をガヌーダ様が唄い、ガヌーダ様の側近がどこからともなく鈴を鳴らした。ガヌーダ様が立ち上がり足を床から離さぬよう円を描くように動かす。乾燥した葉の音、等間隔で響く鈴の音が私たちの体の中に眠る力を呼び起こそうとするかのようだ。ガヌーダ様が大きく跳ね、ザッと回ると床の葉も舞い上がり、その葉たちが落ち着いたと同時に唄も鈴の音もやんだ。
「この者たちに大地の加護があらんことを。」
「「ありがとうございます。」」
私たちは恭しく頭を下げ、エンヤ族の村を後にした。
「この辺にいればウガに会えるだろう。」
ジャマンジェの皮を被ったエンヤ族の男は私たちにそう告げると帰って行った。この辺りは今まで歩いてきた場所に比べ葉の色が濃く、少し薄暗い。もしかしたら森の最奥も似たような感じなのかもしれない。
「ライファ、ウガが現れたら私がウガの気を引くからライファは直ちに離れて欲しい。」
「うん、わかった。」
「移動して自分たちからウガを探すよりも、ウガと戦いやすい場所で待ち伏せしよう。少しでも自分たちに利になる状況を作っておきたい。それからこれを。耳にくっつけておけば離れていてもお互いの声が聞こえる。」
レイからイヤーボイスを受け取ると、私たちはレイが剣を振りやすく私が遠くからでも状況が見やすいように、葉の少ないエリアで身を潜ませることにした。
気配を消すこと一時間。サッと影が通ったと思えば近くの木に止まり木の実を食べているアカント、そこにもう一つの影が重なりアカントが地に落ちた。そのアカントに食いつく1m程の影、小さな耳に大きな目、両肘には大
きな刃が生えている。
間違いない、ウガだ。
私はシューピンを出すとコートの中にベルを入れ、直ぐに遠ざかった。ウガは私の気配を感じているものの、去る者は追わず。レイが囮になるまでもなく今は食事に集中することにしたようだ。
空腹のときに食事の邪魔をされることほど生き物が怒ることは無く、満腹時は運動能力が多少落ちる。レイはウガのお腹が満たされるのを待っているかのようだった。そのうち、ウガがあらかた食事を終えたのを見てレイが動き出した。魔力を全開にしたレイがウガに敵意を向ける。その敵意を感じ取ったウガが臨戦態勢に入り、二人は見つめ合った。よく見ているとウガの肘の刃が少しずつ伸びている。レイを攻撃しようとしているのは明白だった。
「レイ、肘の刃が伸びてきている。気を付けて。」
「うん。」
イヤーボイスからレイの声が聞こえた。
レイが剣を抜こうとした瞬間、ウガが動いた。姿はもはやウガではない。目に映るのは残像ばかりで目が追いついたと思えば本体は残像を残して次の場所へ移動している。
速いなんてもんじゃない。
レイは自身に向かってくるウガの刃を必死にかわしているものの、かわすだけで精一杯だ。
「プランBだ!」
「了解!」
レイの言葉を受けて小弓を構える。多少スピードに慣れたものの目で追うのもやっとの状態だ。動きをある程度予測して撃つしかない。ウガとレイは激しく場所を入れ替わりながら右に左に絶えず動いている。
レイ避け効果を持たせておいてよかったと心の底から思った。
小弓を構えると場所をずらしながら立て続けに3発撃った。するとウガがレイから一瞬だけ視線を逸らしたかと思うと腕を振り上げた。
なっ・・・!!
ウガは腕と刃を使って眠り玉を弾いた。弾かれた眠り玉は破裂しながらレイを避けて飛び散る。レイは魔方陣を発動してウガを捕まえようとするもウガはすり抜けるばかりだ。
「プランCに変更する!」
私は叫んだ。
「あぁ、頼むっ。」
ウニョウならばピンポイントで狙わなくてもザッと広がって包んでくれるはずだ。少しでもウガの足止めが出来れば・・・。
先ほどと同じように今度は5発撃つ。それぞれが広がり大きな網のようにウガに襲い掛かる。ウガは一瞬体を引くと、そこから踏み込むようにウニョウ玉へ前進し一瞬で全てを切り裂いた。レイの服が裂け、血が滲む。
「レイ!!」
「大丈夫だ!!」
叫ぶようなレイの声が聞こえて、暗転しようとしていた視界が現実に引き戻された。動揺している場合じゃない。打開策はないか、必死に考えを巡らす。
何か・・・、何か・・・。
考えつつも眠り玉をセットして放った。先ほどと同じようにウガが刃で弾く。
すごい。目がいいんだ。
もしかして・・・。
私はダメもとでお弁当を取り出すと肉団子を小弓に詰めた。頭の中でガヌーダが言った『体のわりによく食べる』という言葉が響いていた。アカント一匹だけじゃ足りていないかも。
少しでも気を逸らすことが出来れば。
両手で小弓を構え、レイと組み合っているウガへと撃った。ウガは一度は肉団子を弾いたものの肘の刃でレイを突き放すかのような動きを取り、その後まだ宙を舞っている肉団子を食べた。そして目が合ったと思った瞬間、間近にウガが迫っていた。
「ライファ!!」
シューピンに乗って動きながら撃つのは、流石に50mの距離ともなると15回に1度しか当たらなかったが、シューピンの上に立って撃つのだと5回に1度は当たるようになった。
50m先、アカントが木の枝に座って休んでいる。眠り玉を入れた小弓でアカントの顔に照準を合わせた。静に息を吐いて肩の力を抜きつつ腕を固定する。先ほどから髪の毛がフワッとなびく程度の風が吹いている。私は照準を少しだけずらした。
シュッ
眠り玉は軽い音を立てて小弓を離れた。僅かな時間差の後、アカントが体勢を崩し木から落下した。
「やった!当たった!」
「本当?よし、見に行こう。」
レイと一緒に森の中を走る。
「いたっ!」
アカントが木の下でぐっすりと眠っていた。
「今日の夜ご飯はこれで決まりだな。」
レイの笑顔に、頷く。
その後も木の弾を使った練習を続け、レイはレイで森へトレーニングに行きその日は終了した。そしてその夜ジェシーに頼んで、明日ウガを移動させる旨のチョンピーをガヌーダ宛に飛ばしてもらった。
翌朝はみんなが寝静まっている間に起きた。
今日はウガとの決戦の日だ。戦いにおいて、いや、そうじゃなくても食事は大事だ。昨日、ジェシーさんに頼んで分けてもらった野菜と狩りで獲ったアカントを使ってお弁当を作る。
アカントと数種類の野菜を細かく刻んで卵をつなぎにして丸めて揚げ焼きにした肉団子。数種類の野菜とジェル状にしたドレッシングを薄い野菜の葉っぱで包んだ野菜ボール、ジェシーさんから貰った魚を塩焼きにしたものを容器に詰め、果物はそのままバッグに入れた。
「もう起きていたのか。」
ジェシーさんが漁へ行く準備をするために部屋から出てきた。
「はい、今日ウガを移動させるのにお弁当でも作ろうかと思いまして。みなさんの分も作ってあるので朝ごはんにでもしてください。」
ジェシーさんは鍋の中を覗くと、初めて見る料理だと顔を綻ばせた。
「ありがとう、とても美味しそうだ。エンヤ族の村までの道のりはわかるかい?」
「はい、大丈夫です。」
「では、これを貸そう。気を付けて行くんだよ。ウガの件だが、無理だと思ったらやめて逃げなさい。逃げても誰も責めたりはしないのだから。」
エンヤ族に呼びかけるための笛を渡しながらジェシーさんが心配した表情で言った。
「ありがとうございます。」
以前ジェシーさんが通った道を思い出しながら進む。ベルはお散歩気分なのだろうか、今日は自分で飛ぶことにしたようだ。
「今朝は早くから起きていたみたいだけど、ちゃんと眠れた?」
「うん、ちゃんと寝たよ。今朝はお弁当作っていたんだ。楽しみがないと・・・ね。」
「そうだね。確かに楽しみがあった方が頑張れる。」
「でしょう?」
私は得意げにふふんと笑った。
「楽しみ・・・か。もうひとつ、楽しみが欲しいなぁ、ライファ。」
「ん?いいよ。何?」
レイが私の方を向いて立ち止まった。
レイが足を一歩進め私との距離が20cmになったところで、突然レイの髪の毛が私の頬に触れた。薄く開けられたレイの目に見とれているとそのまま唇に柔らかい感触があった。
あ・・・。
0.3秒後にそれがキスだと知る。
「これのもっと深いやつ、ライファからして?」
「え!?」
「私の楽しみ。楽しみがある方が頑張れるでしょう?楽しいことはたくさんあった方がいいよね。」
レイがにっこりとほほ笑む。
「いや、ほら、他にも楽しいことはたくさんあるだろ?」
タジタジになって答えると、さっきいいって言ったのにとレイが拗ねた。
「・・・そんなに嫌なの?」
私にそう聞きながら、レイが下を向いた。長いまつ毛が色白の肌に影を作って、悲しそうな顔をする。
こ、これはどうしたことだろう。いつもは強気な態度を崩さないレイが、うるっとした雰囲気を出している。
「いや、そ、そういうわけじゃ。」
「じゃあ、いいよね?」
弱弱しく尋ねられれば、出すべき答えは一つしかない。
「わかった。」
「本当?絶対だよ。」
「うん、本当だ。」
約束が成立するとレイは嬉しそうに微笑んだ。
「すごく・・・たのしみ。」
その笑みは正しく、デビルレイの笑みだった。
「待っていたぞ。」
前回通された部屋と同じ部屋、台の上に座っているガヌーダ様は相変わらず今日も迫力美人だ。
「作戦は立ったか?」
「ん、まぁ、なんとか。」
レイが軽く答える。
「ウガが出現する場所までは村の者が案内する。それと、これを身に着けておいてくれ。」
ガヌーダ様が私たちに渡したのは腕に付けられるようになっている記録石だ。
「二の腕のところに嵌めておいてくれ。悪いが其の方らがウガと対峙している間、我々がその場にいることはない。その記録石が我々の目の代わりとなる。」
「なるほど。誤魔化し防止ってことですね。」
「まぁ、そういうことだ。」
ガヌーダ様はそう言うと台を降り、私たちの前に来て片膝を床に着き青々とした葉っぱがついた枝を振った。エンヤ族に伝わる歌なのだろうか。謎の呪文のような歌をガヌーダ様が唄い、ガヌーダ様の側近がどこからともなく鈴を鳴らした。ガヌーダ様が立ち上がり足を床から離さぬよう円を描くように動かす。乾燥した葉の音、等間隔で響く鈴の音が私たちの体の中に眠る力を呼び起こそうとするかのようだ。ガヌーダ様が大きく跳ね、ザッと回ると床の葉も舞い上がり、その葉たちが落ち着いたと同時に唄も鈴の音もやんだ。
「この者たちに大地の加護があらんことを。」
「「ありがとうございます。」」
私たちは恭しく頭を下げ、エンヤ族の村を後にした。
「この辺にいればウガに会えるだろう。」
ジャマンジェの皮を被ったエンヤ族の男は私たちにそう告げると帰って行った。この辺りは今まで歩いてきた場所に比べ葉の色が濃く、少し薄暗い。もしかしたら森の最奥も似たような感じなのかもしれない。
「ライファ、ウガが現れたら私がウガの気を引くからライファは直ちに離れて欲しい。」
「うん、わかった。」
「移動して自分たちからウガを探すよりも、ウガと戦いやすい場所で待ち伏せしよう。少しでも自分たちに利になる状況を作っておきたい。それからこれを。耳にくっつけておけば離れていてもお互いの声が聞こえる。」
レイからイヤーボイスを受け取ると、私たちはレイが剣を振りやすく私が遠くからでも状況が見やすいように、葉の少ないエリアで身を潜ませることにした。
気配を消すこと一時間。サッと影が通ったと思えば近くの木に止まり木の実を食べているアカント、そこにもう一つの影が重なりアカントが地に落ちた。そのアカントに食いつく1m程の影、小さな耳に大きな目、両肘には大
きな刃が生えている。
間違いない、ウガだ。
私はシューピンを出すとコートの中にベルを入れ、直ぐに遠ざかった。ウガは私の気配を感じているものの、去る者は追わず。レイが囮になるまでもなく今は食事に集中することにしたようだ。
空腹のときに食事の邪魔をされることほど生き物が怒ることは無く、満腹時は運動能力が多少落ちる。レイはウガのお腹が満たされるのを待っているかのようだった。そのうち、ウガがあらかた食事を終えたのを見てレイが動き出した。魔力を全開にしたレイがウガに敵意を向ける。その敵意を感じ取ったウガが臨戦態勢に入り、二人は見つめ合った。よく見ているとウガの肘の刃が少しずつ伸びている。レイを攻撃しようとしているのは明白だった。
「レイ、肘の刃が伸びてきている。気を付けて。」
「うん。」
イヤーボイスからレイの声が聞こえた。
レイが剣を抜こうとした瞬間、ウガが動いた。姿はもはやウガではない。目に映るのは残像ばかりで目が追いついたと思えば本体は残像を残して次の場所へ移動している。
速いなんてもんじゃない。
レイは自身に向かってくるウガの刃を必死にかわしているものの、かわすだけで精一杯だ。
「プランBだ!」
「了解!」
レイの言葉を受けて小弓を構える。多少スピードに慣れたものの目で追うのもやっとの状態だ。動きをある程度予測して撃つしかない。ウガとレイは激しく場所を入れ替わりながら右に左に絶えず動いている。
レイ避け効果を持たせておいてよかったと心の底から思った。
小弓を構えると場所をずらしながら立て続けに3発撃った。するとウガがレイから一瞬だけ視線を逸らしたかと思うと腕を振り上げた。
なっ・・・!!
ウガは腕と刃を使って眠り玉を弾いた。弾かれた眠り玉は破裂しながらレイを避けて飛び散る。レイは魔方陣を発動してウガを捕まえようとするもウガはすり抜けるばかりだ。
「プランCに変更する!」
私は叫んだ。
「あぁ、頼むっ。」
ウニョウならばピンポイントで狙わなくてもザッと広がって包んでくれるはずだ。少しでもウガの足止めが出来れば・・・。
先ほどと同じように今度は5発撃つ。それぞれが広がり大きな網のようにウガに襲い掛かる。ウガは一瞬体を引くと、そこから踏み込むようにウニョウ玉へ前進し一瞬で全てを切り裂いた。レイの服が裂け、血が滲む。
「レイ!!」
「大丈夫だ!!」
叫ぶようなレイの声が聞こえて、暗転しようとしていた視界が現実に引き戻された。動揺している場合じゃない。打開策はないか、必死に考えを巡らす。
何か・・・、何か・・・。
考えつつも眠り玉をセットして放った。先ほどと同じようにウガが刃で弾く。
すごい。目がいいんだ。
もしかして・・・。
私はダメもとでお弁当を取り出すと肉団子を小弓に詰めた。頭の中でガヌーダが言った『体のわりによく食べる』という言葉が響いていた。アカント一匹だけじゃ足りていないかも。
少しでも気を逸らすことが出来れば。
両手で小弓を構え、レイと組み合っているウガへと撃った。ウガは一度は肉団子を弾いたものの肘の刃でレイを突き放すかのような動きを取り、その後まだ宙を舞っている肉団子を食べた。そして目が合ったと思った瞬間、間近にウガが迫っていた。
「ライファ!!」
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1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ!
いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります!
【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。
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