イケメンと体が入れ替わってラッキーと思ったらそのイケメンがゲイだった

SAI

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24. 告白

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「武くん、パスタが好きだって言ってたじゃん。だからさー、このお店に一緒に来たいなってずっと思ってたんだよねー」

雑誌で見た時は中性的でどこか儚げな美人だと思っていた雪村くんは、実際に会って見ると儚げではなく弾丸トークの元気印美人だった。

「あ、これこれ、このクリームパスタ、これがこのお店のオススメなんだよ」

「じゃあ、それで」
「おっけ、このパスタセット二つね。食後はコーヒーでいい?」

「うん」
「デザートは、ん~、武くんならチーズケーキかな。でしょ?」

俺、というか阿川を伺い見るような視線を送ってくる。阿川の好きなものは知っているぞというような視線だ。

「だね、あたり」
「やっぱり」

雪村くんは嬉しそうに笑うと注文をした。それから今日の撮影のこと、最近ハマっているコスメのことをどんどん話してくれ、話題は尽きることがない。俺があまり返事をしなくても次々と話してくれるのは、雪村くんのことを良く知らない俺としては凄く助かる。

このままたくさん話してもらって、いつもと違うと思われる前に退散するのが良さそうだな……。俺はにこにこと微笑みながら相槌を打ちまくった。

 阿川に申し訳ない気持ちを抱えながら美味しい料理をお腹いっぱい食べ、食後のコーヒーの香りに揺られながらチーズケーキを口に運ぶ。

「武くん、やっぱり元気ないね」
「え? そんなことないよ」
「俺の前で強がらなくていいよ。別れたこと、まだショックなんでしょ?」

「え?」
「俺、この間言ったこと本気だから。俺なら武くんにこんな顔させない」

どういう意味だ?これって……。
驚きのあまりに目を丸くした俺に雪村くんは少し拗ねたような表情を見せ、もーっと言った後に俺の目を見た。

「俺、本当に武くんのことが好きだから。真剣に付き合いたいと思ってる。俺のことちゃんと考えてね」
にこっと笑った雪村くんに頷く事さえできずにコーヒーを飲むことで誤魔化した。

阿川が言い寄られているという事に対してのショックは勿論あったが、それ以上に引っかかったのは『真剣に』の言葉だ。

俺だって真剣に付き合ってたよ……。ちゃんと、真剣に。


 その日の夜、共有ファイルに雪村くんとの食事の内容、今日の撮影の事、コスメのことを書き込んだ。そして告白されたことも。

それから阿川と共有ファイルを作って以来初めて、一つだけ質問をした。
【雪村くんと付き合うの?】



コンコン

「はい」

部屋をノックして顔を出したのは咲子ちゃんだ。ピンク色の熊がたくさん描かれている可愛いパジャマを着ている。

「お風呂空いたよー」
「あー……もう少ししたら入る……」
「あ、今は圭太さんなんだ」
「分かる?」
「うん、圭太さんだとお風呂だよって言うといつも、モジモジするから」

「え、嘘」
「お兄ちゃんの体見るの、抵抗があるの?」
「え、いや、そういうわけじゃ。だって男同士だしっ」

咲子ちゃんはぷぷっと笑うと「顔、真っ赤。圭太さんは分かりやすい」と言った。


 服を脱いで浴室に入る。浴室のシャワーの隣の部分には頭から胸のあたりまで映るくらいの大きな鏡が設置されていて、否応にも阿川の均整の取れた体が目に入った。

阿川の体……。俺に触れていた体。

頬を撫でて首から鎖骨へと指を這わせる。ピンク色の乳首と腹筋の凹凸。この体が俺に密着して、俺を抱きしめるように包む。そして阿川の中心が俺の中に……。

ゾクリ、と身体の中心がざわついて、俺は慌ててシャワーの水を出した。

「うわっ、冷てっ」

カチン

え?

次の瞬間、阿川の家の浴室がそのまま俺の家の浴室に変わり、シャワーの前に突っ立ったまま混乱した。

「なっ、何? 何? 何?」

3回呟いたところでようやく脳が再起動し始める。

「そうか、体が元に戻ったのか。阿川も風呂に入ってたんだろうな……状況が似すぎててびびった」

違うところと言えば目の前のシャワーは止まっていて俺の体からはほんのり石鹸の香りが漂うことだ。

「阿川が洗ってくれたんだ……」

俺の体に阿川が触れた、そう思うだけで妙な気持ちになる。センチな気持ちとは裏腹に俺の息子は痛いほどにそそり立ち、目も潤んでいる気さえした。

阿川が触れたであろう部分、腕もお腹も足もなぞるように触った。乳首にも触れただろうか。この先端にも……。

「んっ……」

声が漏れた。
阿川が触れた、俺に。その事実だけがここにある。

圭太さん、可愛い。
ほら、先端からいやらしい汁が垂れてきてますよ。

「あが……わ」

浴槽の淵に右足をかけて脚と脚の間に指を這わせた。ギュッと口を閉じているソコは思っていたよりもずっと熱を帯びていて、石鹸でぬめりを足した指を差し込めば、スムーズに指を内部へと導く。

ぬちゅ……
ん……はぁ、あっ、は……

呼吸だけ、呼吸だけ。声は出さない。

目を閉じれば阿川の仕草も体温も声もありありと思い浮かべることが出来るのに。

奥まで届かない指を必死に突き立てて腰を揺らす。足りない快楽は性器を直接擦って足して、小さな瞬間的な爆発を起こした。

「はっ……」

くっ……。

浴槽の側面に白濁が飛ぶ。余計なことをなるべく考えないようにしながら、俺はその白濁をシャワーで流した。もう一度体を洗おうと石鹸を手にした時、鏡に映った自分の体が目に入った。

傷ひとつない俺の体……。

阿川はセックスの最中によく俺を咬む。その行為が何を示しているのかは分からないけど、阿川が咬むから俺の体には常に阿川の咬み痕があった。それが今では何もない。全部、消えてしまった。俺は無意識に自分の腕、肩の部分を引き寄せると思いっきり咬んだ。

いっ……。

うっすら血のにじんだ歯形が鏡に映る。

「何やってんだろ……」

大きなため息をついて浴室を後にした。



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