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17.シミと侵食
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落ち着け。バレたって決まったわけじゃないし、だいたいバレたからと言って何なんだ。堂々と、堂々と!
「こっ、こんばんは。先ほどは見学させて頂いてありがとうございました!」
「くす、見学ねぇ……。確かに間違いではない、か」
咲也さんがスッと動いて俺の耳元に唇を近づけた。
「今はちゃんと自分の体なんだ」
「なっ、何のことですか?」
予想以上に体がビクッとなってカクテルを持っていた手が人にぶつかりシャツにお酒が零れた。
「あ……」
「圭太は嘘つくのが下手だねぇ」
「嘘だなんて……」
「そんなことより服、そのままでいいの? さっと洗っておかないと染みになっちゃうかもよ」
染み……べ、弁償なんてことになったらどうしよ。俺、金ない。いやいや、それよりも阿川に迷惑が掛かるんじゃ。
「やべぇっ」
慌ててトイレに駆け込もうとする俺を咲也さんが掴んだ。
「貸して、俺がやってあげる」
「でもっ」
「俺、もともと服飾系の学校に通ってたから生地には詳しいよ」
そうだ、余計なことして生地に傷でもつけたら……。
「お、お願いします」
二人で駆け込んだのは会場と同じ一階の隅にあるトイレだ。
「ほら、脱いで」
言われるまま上半身裸になってシャツを渡すと咲也さんの手が俺の体に伸びてきた。
「ひぃっ」
「ぷぷっ、そんな声出さないでよ。良い体してるなって思っただけ。運動でもしてるの?」
「……走るの好きなんで」
「へぇ、だからか。細身なのにしっかり筋肉が付いてる」
肩のラインを冷たい指でなぞられて、顔に熱が集まっていくのを感じた。
「そ、そんなことよりシャツをっ」
「はいはい、今やるよ」
咲也さんは自分のハンカチを水で濡らすと、ハンカチでトントンとシャツを叩くようにした。
「もう一度会いたいなって思ってたんだよねー。圭太の空気は触れていて心地よいから」
「空気、ですか?」
「オーラみたいなものかな、その人を囲むエネルギー。圭太のは素直だよ。気持ちいいくらい真っ直ぐだし」
「真っ直ぐって……。俺、そんなにきれいじゃないですよ」
「キレイだとは言ってないよ。キレイっていうのもそれはそれで不気味でしょ」
「そうなんすか? キレイに越したことはない気がしますけど」
「人間ってそう上手くは出来てないよ。汚い考えも、思いもどうしても抱いてしまうし」
「じゃあ、俺だってそうですよね?」
「だね」
何が違うんだ?
「でも、その汚さも心地よいからレアなんだよ」
「……意味わからないっす」
「だろうなー」
咲也さんは最後の仕上げという感じでシャツにぬるま湯をかけて流していく。
「阿川君と付き合ってるの?」
「え? いや……付き合ってないです」
「へぇー、じゃあ、俺が手を出しても問題ないわけだ」
ぎゅっと絞ったシャツを手洗い場に置いて咲也さんが俺との距離を詰める。
何言って……ってかこの状況、何?
上半身は裸のまま壁際に追い詰められてこれ以上後ろに行くこともできない。咲也さんの手が俺の右側について、足の間に咲也さんの足が入っている。どう考えてもピンチだ。
阿川と付き合ってるって言えば開放してもらえるだろうか? でも、阿川と同じ業界の人だ。二人の関係をバラして阿川の仕事に支障が出たりしたら……。
咲也さんの顔が近づいてくる。
「ど、どうしたんすか。あの、これ、ちょっと、やめましょう? こんなこと」
あまりに近い距離に背けた顔を咲也さんの手が戻す。
「俺に君をちょうだい。もっと気持ち良くさせて」
「な、ななななに言って」
ゆっくりと顔が近づく。唇の表面の薄い皮膚が微かに触れて、この先を諦めた瞬間だった。
「圭太? 何してんの?」
明らかに怒気を含んだ低い声に咲也さんが動きを止めた。
「何って、キスだよ、ね? 圭太」
「違っ、まだしてないっ」
「まだ?」
阿川の低い声がまた響いた。
「なんで阿川君が怒ってるの? 付き合ってないんでしょ、圭太が言ってたし。そうか、君だけが好きなんだ?」
阿川は何も言わずに俺の元まで来ると俺の腕を掴んで咲也さんから引きはがした。何かを我慢するようにグッと下唇を噛んでいる。
「もう圭太には近づかないでください」
「……それはどうかな。つけ入る隙はありそうだけど」
「咲也さん!! シャツありがとうございました。失礼します!」
俺はシャツを掴むと阿川の手を掴んで早歩きでトイレを後にした。
阿川が泣くかと思った……。
「あ……あ、がわぁ、も」
「だめです。今日は許さない」
トイレでの一件から1時間後、ホテルの一室で俺はあられもなく痴態を晒していた。アナルにはクルクルと回るバイブが埋め込まれ低い電磁音が響く。
ウィンウィンウィンウィン
絶妙な位置で内部を掻きまわすバイブは欲しい所には刺激を与えてはくれず、届きそうで届かない快楽の波が何度も押し寄せてはずぶ濡れになることも叶わない。
「ミヤコさんに可愛いって言いましたよね」
「あ……れは、み……やこ、さんがっ言え……って」
「でもかわすことだって出来たでしょ」
お前じゃあるまいしそんなに器用じゃねぇよっ、と思ったが言葉にするのもしんどくてシーツを握りしめた。
「顔を赤らめてましたよね。あんな表情見せて……ほら、ちゃんと咥えて。出てきてますよ」
「あぁっ」
抜けかかっていたバイブを奥まで差し込まれて俺は背中をのけ反らせた。
「ここ、こんなに濡らして。ミヤコさんに、女に入れたいですか? コレ」
「あぁっ、やだっ」
阿川が俺のペニスに足をかけて体重を乗せてくる。恐いのに、気持ちいい。もっと刺激が欲しくて阿川の足に自ら股間を押し付けた。
「もう女性じゃ満足出来ませんよね? ここ、弄ってはくれないでしょうし」
また抜けかかったバイブを再び押し込まれて否応にも声が漏れる。
「圭太のココは直ぐに吐き出しちゃうね。バイブを固定しようか?」
「やっ」
「嫌じゃないでしょ」
脱ぎ捨てられていたボクサーパンツを履かせられ、下着がバイブを奥へと押しやる。ペニスは下着からはみ出たままだ。
「あ、ああ……あがわぁ……ごめ、ああっ」
絶えず刺激を送り続けるバイブ。四つん這いになってお尻を高く上げバイブを差し込まれて、快楽に耐え切れずに腰を揺らす。その痴態を余すことなく阿川に見られて、恥ずかしいのに昂ってしまう。
「それとも、ココに咲也さんのを入れて欲しいんですか?」
「ちがっ」
「その割にはトイレで随分仲良さそうでしたけど。上半身は裸でしたし」
阿川の手がするりと俺の体を上り、親指の爪で乳首に微かな刺激を送る。
「体、さわらせました?」
「さわら……せて、ない」
「嘘でしょ」
「いぁっ‼ あっ」
肩を思いっきり噛まれて、驚きと痛みに声を上げる。肩にドクドクと熱が発生し、痛いはずなのに体の奥にある甘い疼きの方が強烈で目の前がチカチカした。
「ああいう男がタイプなんですか?」
「ちが……う、む、こうが、勝手に……」
「……圭太は僕のモノだよね?」
コクコクと頷いていると体を反転させられて阿川と目が合った。
「ちゃんと言葉にして」
「あ……がわ、の、もの、だ」
「どーだか」
吐き捨てるように阿川が呟いて、顔を歪ませる。さっきからずっとそうだ。
拘束されているわけでもないのに体を開いてバイブを埋め込んで、恥ずかしくてどうしようもないのに従っているのは、阿川がずっと泣きそうな顔をしているからだ。
「こっ、こんばんは。先ほどは見学させて頂いてありがとうございました!」
「くす、見学ねぇ……。確かに間違いではない、か」
咲也さんがスッと動いて俺の耳元に唇を近づけた。
「今はちゃんと自分の体なんだ」
「なっ、何のことですか?」
予想以上に体がビクッとなってカクテルを持っていた手が人にぶつかりシャツにお酒が零れた。
「あ……」
「圭太は嘘つくのが下手だねぇ」
「嘘だなんて……」
「そんなことより服、そのままでいいの? さっと洗っておかないと染みになっちゃうかもよ」
染み……べ、弁償なんてことになったらどうしよ。俺、金ない。いやいや、それよりも阿川に迷惑が掛かるんじゃ。
「やべぇっ」
慌ててトイレに駆け込もうとする俺を咲也さんが掴んだ。
「貸して、俺がやってあげる」
「でもっ」
「俺、もともと服飾系の学校に通ってたから生地には詳しいよ」
そうだ、余計なことして生地に傷でもつけたら……。
「お、お願いします」
二人で駆け込んだのは会場と同じ一階の隅にあるトイレだ。
「ほら、脱いで」
言われるまま上半身裸になってシャツを渡すと咲也さんの手が俺の体に伸びてきた。
「ひぃっ」
「ぷぷっ、そんな声出さないでよ。良い体してるなって思っただけ。運動でもしてるの?」
「……走るの好きなんで」
「へぇ、だからか。細身なのにしっかり筋肉が付いてる」
肩のラインを冷たい指でなぞられて、顔に熱が集まっていくのを感じた。
「そ、そんなことよりシャツをっ」
「はいはい、今やるよ」
咲也さんは自分のハンカチを水で濡らすと、ハンカチでトントンとシャツを叩くようにした。
「もう一度会いたいなって思ってたんだよねー。圭太の空気は触れていて心地よいから」
「空気、ですか?」
「オーラみたいなものかな、その人を囲むエネルギー。圭太のは素直だよ。気持ちいいくらい真っ直ぐだし」
「真っ直ぐって……。俺、そんなにきれいじゃないですよ」
「キレイだとは言ってないよ。キレイっていうのもそれはそれで不気味でしょ」
「そうなんすか? キレイに越したことはない気がしますけど」
「人間ってそう上手くは出来てないよ。汚い考えも、思いもどうしても抱いてしまうし」
「じゃあ、俺だってそうですよね?」
「だね」
何が違うんだ?
「でも、その汚さも心地よいからレアなんだよ」
「……意味わからないっす」
「だろうなー」
咲也さんは最後の仕上げという感じでシャツにぬるま湯をかけて流していく。
「阿川君と付き合ってるの?」
「え? いや……付き合ってないです」
「へぇー、じゃあ、俺が手を出しても問題ないわけだ」
ぎゅっと絞ったシャツを手洗い場に置いて咲也さんが俺との距離を詰める。
何言って……ってかこの状況、何?
上半身は裸のまま壁際に追い詰められてこれ以上後ろに行くこともできない。咲也さんの手が俺の右側について、足の間に咲也さんの足が入っている。どう考えてもピンチだ。
阿川と付き合ってるって言えば開放してもらえるだろうか? でも、阿川と同じ業界の人だ。二人の関係をバラして阿川の仕事に支障が出たりしたら……。
咲也さんの顔が近づいてくる。
「ど、どうしたんすか。あの、これ、ちょっと、やめましょう? こんなこと」
あまりに近い距離に背けた顔を咲也さんの手が戻す。
「俺に君をちょうだい。もっと気持ち良くさせて」
「な、ななななに言って」
ゆっくりと顔が近づく。唇の表面の薄い皮膚が微かに触れて、この先を諦めた瞬間だった。
「圭太? 何してんの?」
明らかに怒気を含んだ低い声に咲也さんが動きを止めた。
「何って、キスだよ、ね? 圭太」
「違っ、まだしてないっ」
「まだ?」
阿川の低い声がまた響いた。
「なんで阿川君が怒ってるの? 付き合ってないんでしょ、圭太が言ってたし。そうか、君だけが好きなんだ?」
阿川は何も言わずに俺の元まで来ると俺の腕を掴んで咲也さんから引きはがした。何かを我慢するようにグッと下唇を噛んでいる。
「もう圭太には近づかないでください」
「……それはどうかな。つけ入る隙はありそうだけど」
「咲也さん!! シャツありがとうございました。失礼します!」
俺はシャツを掴むと阿川の手を掴んで早歩きでトイレを後にした。
阿川が泣くかと思った……。
「あ……あ、がわぁ、も」
「だめです。今日は許さない」
トイレでの一件から1時間後、ホテルの一室で俺はあられもなく痴態を晒していた。アナルにはクルクルと回るバイブが埋め込まれ低い電磁音が響く。
ウィンウィンウィンウィン
絶妙な位置で内部を掻きまわすバイブは欲しい所には刺激を与えてはくれず、届きそうで届かない快楽の波が何度も押し寄せてはずぶ濡れになることも叶わない。
「ミヤコさんに可愛いって言いましたよね」
「あ……れは、み……やこ、さんがっ言え……って」
「でもかわすことだって出来たでしょ」
お前じゃあるまいしそんなに器用じゃねぇよっ、と思ったが言葉にするのもしんどくてシーツを握りしめた。
「顔を赤らめてましたよね。あんな表情見せて……ほら、ちゃんと咥えて。出てきてますよ」
「あぁっ」
抜けかかっていたバイブを奥まで差し込まれて俺は背中をのけ反らせた。
「ここ、こんなに濡らして。ミヤコさんに、女に入れたいですか? コレ」
「あぁっ、やだっ」
阿川が俺のペニスに足をかけて体重を乗せてくる。恐いのに、気持ちいい。もっと刺激が欲しくて阿川の足に自ら股間を押し付けた。
「もう女性じゃ満足出来ませんよね? ここ、弄ってはくれないでしょうし」
また抜けかかったバイブを再び押し込まれて否応にも声が漏れる。
「圭太のココは直ぐに吐き出しちゃうね。バイブを固定しようか?」
「やっ」
「嫌じゃないでしょ」
脱ぎ捨てられていたボクサーパンツを履かせられ、下着がバイブを奥へと押しやる。ペニスは下着からはみ出たままだ。
「あ、ああ……あがわぁ……ごめ、ああっ」
絶えず刺激を送り続けるバイブ。四つん這いになってお尻を高く上げバイブを差し込まれて、快楽に耐え切れずに腰を揺らす。その痴態を余すことなく阿川に見られて、恥ずかしいのに昂ってしまう。
「それとも、ココに咲也さんのを入れて欲しいんですか?」
「ちがっ」
「その割にはトイレで随分仲良さそうでしたけど。上半身は裸でしたし」
阿川の手がするりと俺の体を上り、親指の爪で乳首に微かな刺激を送る。
「体、さわらせました?」
「さわら……せて、ない」
「嘘でしょ」
「いぁっ‼ あっ」
肩を思いっきり噛まれて、驚きと痛みに声を上げる。肩にドクドクと熱が発生し、痛いはずなのに体の奥にある甘い疼きの方が強烈で目の前がチカチカした。
「ああいう男がタイプなんですか?」
「ちが……う、む、こうが、勝手に……」
「……圭太は僕のモノだよね?」
コクコクと頷いていると体を反転させられて阿川と目が合った。
「ちゃんと言葉にして」
「あ……がわ、の、もの、だ」
「どーだか」
吐き捨てるように阿川が呟いて、顔を歪ませる。さっきからずっとそうだ。
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