イケメンと体が入れ替わってラッキーと思ったらそのイケメンがゲイだった

SAI

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13. 熱い呼吸

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「声、抑えて下さいね」

23時半。家族の目を盗んで阿川の部屋の中、ベッドの上。俺を押し倒した阿川が耳元で囁いた。これから阿川にされることを想像するだけで中心に熱が集まる。

阿川の手が俺の頬を撫でると指先が髪の毛に触れてサラっと音がした。俺を確かめるみたいにして肌に触れていく。頬から首、首から鎖骨。無言のまま、だけど服を脱がす音、肌の触れる音、シーツの擦れる音、言葉を持たない音が、俺たちが何をしているのかを雄弁に語る。

「……っ」

阿川の指が乳首にかかって俺は体をピクっと揺らした。

「これ、噛んでてもいいですよ」

阿川に渡されたタオルを口にくわえると、阿川が俺を見て目を細めた。

「やべぇ、そそる」
「っ……っっ」

鼠径部、脇腹、肋骨へと線を引くように阿川の舌が、つつつ、と動いた。声は出せない、出しちゃいけないのに阿川が丁寧に触れてくる。タオルで口を塞げば逃げ場を無くした快楽が俺の中を駆け巡るだけだ。

「んっ……っっ」

身を捩る視界の隅で阿川が手にローションを垂らす。そしてその手が俺のアナルに添えられた。クるっ。

「んん……っ!!!!」

ぷつ、とした感触と共に侵入してくる指。あ、の形に開いてしまいそうな口を、タオルを噛んで必死にこらえた。

「力抜いて、圭太さん」
耳元で阿川が囁けば、吐息が耳を擽る。

「こんなに力んでいたら僕が入れないよ。圭太」
「ふぁ…つつ…!!」

耳を噛まれて力が抜けた。阿川の指が内部を掻き混ぜると俺のペニスははち切れんばかりに興奮を伝え、苦しくて涙が滲む。

チンコ、チンコに刺激が欲しい。体の中にたまりにたまった快楽を擦って絞り出してしまいたい。俺は欲望に忠実に自分の中心へと手を伸ばした。その手を阿川が絡めとりキスをする。

「ダメだよ、圭太。自分で触ったらだめ」

優しい声色なのに迫力がある。逆らえない、瞬間的にそう思った。

苦しい。イキタイ。気持ち良くしてほしい。阿川にそう訴えるのに阿川は知らないふりをして俺の乳首を抓り、内部を掻き混ぜる。

肝心の中心には未だ一度も触れないまま、だ。

せめてキスがしたくて阿川の首に手を回して上体を起こすと口からタオルを離して自分から口づけた。阿川の唇を舐めて中に侵入する。阿川の舌が俺の舌を撫でてゾクッとした瞬間に堪えたままの声が漏れた。

「んんっ……」

ぴちゃ、ぴちゃと唾液が混ざる音。指じゃなくて決定的なモノが欲しくて腰が揺れた。

「自分から腰を振って、圭太はいやらしいね」

周りに聞こえない様にと耳元で囁かれる言葉たちの破壊力がすさまじい。俺の脳を痺れされて理性を溶かす。理性が解けてしまえば俺は阿川に縋るしかなかった。阿川にしがみ付いて唇を震わす。

「も、挿れて……あ、がわ」

かすれた声は阿川に届くのかと思う程小さな声だったが、阿川がくすっと笑った。

「僕が欲しいの?」

体を熱くして先端を濡らして、理性を脱ぎ捨てて、こんなに全身で欲しいと言っているのに意地悪な笑みを浮かべて阿川はまだ確認してくる。

「圭太は気持ちいいことに弱いから、俺のじゃなくていいんじゃない?」

村上さんの言葉が重なり胸を抉った。

「あ、がわが、いい。阿川、だけ」

あぁ、そうか。俺がコイツから離れたくないんだ。自分の気持ちがコイツから離れてしまうことさえ恐いと思うくらい阿川を一人にしたくない。

あがわ、ともう一度だけ囁いて来るべき波に備えてタオルを口にした。阿川がクシャっと顔を歪める。そして無言のまま俺を貫いた。

「んっ、んんんっっ……」

阿川の腰に足を回してギュっと阿川を挟んだままのけ反った。待ちに待ったモノは想像よりはるかに強い刺激で俺を貫き、イケない苦しさが一気に快楽への階段を駆け上がった。

ビクン、ビクンと身体を震わせると阿川が俺のタオルを外して優しくキスをする。

「まだまだ、これからですよ?」

目が欲情に濡れている。四つん這いにさせられ上半身を捻って阿川を見るように仕向けられた。上半身が捻じれているせいで呼吸がしづらい。

「ひっ……っ……はっ……」

阿川が腰を打ち付けるたびにベッドがギシギシと軋み、最奥を突かれるたびに息と一緒に声が漏れた。

「タオル噛んでても声が出ちゃうくらい気持ちいいんだ」

ピクっと体の奥が反応して阿川を締め付けてしまう。意地悪な阿川の言葉はまるで媚薬のようだ。性感帯の正面を阿川のペニスが突き上げ、性感帯の裏側を阿川の言葉が撫でる。その度に俺の体は快楽に戦慄いて、阿川に支配された。

支配されることを俺自身が許している。

「んっ、んんっ……」

大きな快楽を逃がそうと口を開いた瞬間、阿川の唇に塞がれた。打ち付ける腰が激しくなり、貪る唇がズレる。

またイクっ……。

体を硬直させた時、少し苦しそうな顔をした阿川の顔が見えた。

色っぽ……。
俺と阿川はキツく抱き合ったまま、果てた。


「ハァ……っ、ハァ……あの、さ、このあと走って帰るの無理そうだから、始発まで眠らせて」

「だめ」
「え?」

「始発までじゃなくて、僕が家を出るまで一緒にいてよ」

そんなことを言う阿川が可愛くて、まだナカに入ったままの阿川を締め付けてしまった。


 翌朝、身じろぐ気配がして目を開けると阿川が俺の胸に頭を引っ付けて絡まっていた。目を閉じているといつもの阿川よりも少し幼い。寝ている時は天使だなんて言葉をよく聞くけど、こういう奴のことを言うのかもしれない。

昨夜の意地悪な阿川の面影は微塵もない。意地悪な……。
情事を思い出せば顔が火照り、恥ずかしくなって口元を覆った。

「朝から何て顔してるんですか。煽ってんの?」
「ばっ、何言って……」

恥ずかしさのあまりベッドから飛び降りた時、テーブルにぶつかってガチャンと何かが落ちる音がした。

「あ……」

瞬間、カチン、と聞きなれた音がした。そしてベッドから下りたはずの俺はベッドの上にいて、ベッドの脇に立って頭を抱えた自分が目に入った。

「入れ替わった……」

俺の姿をした阿川が呟く。

「悪い。ぶつかって落とした時にスイッチかなんか押されたみたいだ。でも、ほら、元に戻る方法が何かあるんだろ?」

「僕が嫌だって思えば戻ると思うんですけど、あくまでそうじゃないかって思うってくらいで確かなことは分からないです」

「やってみればいいんじゃん。ほら、嫌だって思ってよ」

「……何もなくて嫌だなんて思えないですよ。それに、ちょっとやそっとの【嫌】では戻らないと思うんですけど」

「じゃ、じゃあ、何か阿川のすげぇ嫌なことすれば……。何が嫌なの? む、虫でも食う?」

「なんでそうなるんですか……。それに僕、虫は多分食べられます」

「そうなんだ……」

虫……俺、絶対に無理。食べるどころか触るのだって厳しいっていうのに。

「圭太さん、そういう顔されるとムラっとするんですけど」

「は?」
ムラっと? イラっとじゃなくてムラっと?

「でもまぁ、自分の顔だからそうでもないか」

阿川の言葉が良く理解できない。俺たぶん、怯えたか、嫌そうな顔してたと思うんだけど……。

「はぁ、仕方ない。時間が無いのでこのまま俺の仕事に行きましょ。圭太さんは、今日は予定なしでしたよね?」

「そうだけど……って、俺が阿川の仕事すんの?」
「それしかないでしょ。休むわけにはいかないし……」

「そう、だよな。俺のせいでこんなことになったんだし、精一杯務めさせていただきます。阿川も来てくれるんだよね?」

「当たり前でしょ。俺が傍にいてナビしないと俺の仕事をこなすなんて無理だよ」

「だよな……ごめんな、阿川」

「いいですよ。ちょっと面白そうでもあるし、圭太さんと一緒にいられるのも嬉しいしね」

「あ、阿川~」


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