イケメンと体が入れ替わってラッキーと思ったらそのイケメンがゲイだった

SAI

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10. たぶん好き

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ぐちゅ、ぐちゅう、ぐちゅう
「ああん、ああん……奥やだぁっ」
「そう? 気持ちよさそうだけど」

阿川がゆっくりと抜き差ししながら体を倒し俺の唇を吸った。唇を割ってナカに侵入した舌に口内を荒らされる。

阿川のキス、阿川の。

唾液と舌に溺れてしまいそうだ。ようやく俺の唇を解放した阿川は左手で俺の乳首の周りを優しくなぞる。

「他の男たちにも触らせた?」
「あ……わか、ら、ない」

「今日の男に触らせるつもりだった?」
「わか、ら……な、い」
「へぇ、否定はしないんだ?」

「いあっ!!」
突然胸を大きく噛まれて痛みで体が跳ねた。

「んふぁ……」

今度はまだヒリヒリするそこを舌が舐める。癒すように舌の真ん中で舐められ甘い疼きが生まれた。それから阿川はちゅ、ちゅっと音を立てながら体中にキスを落としていく。

「ねぇ、ナカに出していい?」
「ふあっ」

かき混ぜる様に動かされて時折前立腺に触れる。12時になると音が出る時計みたいに、快楽の波が来るたびに鳴いた。

「返事できないくらい気持ちいいんだ?」
「あっ……んっ……ふぁっ」

ずるっと抜ける感覚に体が震える。

「あ……いじ、わる」
「違いますよ。圭太が感じすぎて僕の声を聞かないから」

「こ、え?」

阿川がペニスからコンドームを引き抜くと投げ捨てた。薄い膜の無くなったペニスがアナルに迫る。

「このまま入れて欲しい? それともゴムをつけて欲しい?」

「あ……」

阿川の心が知りたくてその目を覗き込む。長めのサイドの髪の毛を耳にかけて顔を傾けた阿川が俺を見ている。

「シて。そのまま」

阿川が嬉しそうに笑った。それはいつか見たあの笑顔と同じ表情だ。

「あっ、あああああんっんっ」

入り口から奥まで一気に突かれて前立腺を押された。深く引き深く穿つ、俺の手を掴んで体を逃げないように固定したままパンパンと早いペースで貫かれ、唾液を飲み込む暇もない程嬌声をあげた。

「あ、がわぁっ、あっがわっ」
「気持ちいいでしょ。もう、僕のモノになったらいいよ」

「ひっ、ああっ、くるっ、くるっ」
「好きだよ、圭太」
「ひゃあっあああ」

キモチいい、おなかがアツイ、バチっ、バチっと体が跳ねる。

「いっ、いくううううううあああっ」
「好きだ」

激しく体を痙攣させながら俺は阿川と抱き合った。

「ハァ…ハァ…ハァ…なぁ…っ、お前って俺のこと好きなの?」

「……うん」
「……俺も好きだ、たぶん」
「多分って酷くないですか?」
「ん……そうか?」
「でもまぁ、振られるよりはいいか。良いですよ、今はそれで」

阿川が俺にキスをする。キスが深くなると中にある阿川のペニスがまた熱さを取り戻した。

「お前、またっ」
「そりゃあ、好きな人に好きだと言われたんだから当然でしょ。それに、この体にちゃんと教え込まないと」

「なっ、何をだよ」

阿川が俺の胸にくっきりとついている歯形を愛おしそうに撫でた。

「誰のモノかってことをね」

その日俺は散々鳴かされ、喘ぎ、意識がなくなるまで阿川を注がれた。










 阿川は今まで誰とも付き合ったことが無いらしい。女とも男ともだ。今までの阿川を見ればそれも頷けるわけだがそんな阿川に人生で初めて彼氏ができた。人生で初めて彼氏(彼女)が出来た時、俺にも覚えがあるけれど人は浮かれる。阿川も例外ではないらしい。

「これ買って来たんですけどつけて貰えますよね?」

阿川が俺に差し出したのは小さな箱に入った指輪だ。しかも二つ指輪が並んでいる。

「これってまさか、ペアリング」
「そうですよ。圭太さんが僕のモノになったという証です」

「これを身につけろと?」
「えぇ」
「やだよ」

言った瞬間、阿川の表情が曇ったのを見て俺は慌てて付け足した。

「だって俺たち男同士だしさ、お前と俺がペアリング付けてたら絶対におかしいって」

「僕は構わないけど」
「俺は構うんだよ」

阿川が拗ねてそっぽを向いた。大学の裏山、人があまり来ない俺の秘密の場所は、阿川にも教えて二人の秘密の場所になった。今では時間が合う時はここで二人で過ごすのが日課だ。

「そんな顔するなよ」
「しますよ。僕は圭太さんは俺のものだって皆に言って回りたいくらいなのに」

「あが、んんっ」

唇が触れて舌を絡めとられる。流れるように唇が動いて耳を甘噛みし、首に吸い付いた。

「あっ……だめだって。こんな」

こいつ、この間まで童貞だったなんて嘘なんじゃないか。なんでこんなに上手いんだよ。

「んっ、あがわぁ」

ゾクゾクっと体が震えた瞬間に阿川が離れた。そして満足げに微笑んだ。

「リングつけないなら、それつけといてくださいね。消えたらまたつけます」

「お前っ」
「僕の精一杯の妥協ですよ。だって圭太さん、最近モテてきてるでしょ」

「そんなことねぇよ。かわんねー、かわんねー」
といいつつ、俺の目はしっかりと泳いでいた。



 俺のアルバイト先は本屋だ。本屋と言っても新刊本の本屋ではなく中古の本や雑誌、ゲームなどを扱っている。

「橘君、その首の何?」
「え?あ……怪我です、そうだ、怪我して」
「この歳で首にバンソーコを貼るような怪我ってなによ……」
「ですよね……」

「ハァ、バレバレだね。ちょっと見せてみ?」

バンソーコを剥がして見せると美佳さんが、あーぁ、と呆れた声を出した。

「こりゃ、結構束縛系の彼女だ」
「束縛……そうなんすかね。メールとか電話とかあんまりしないですけどね」

「表には出さないタイプかなー。相手のことが好きならちゃんと気にかけてあげた方が良いよ」

「ちゃんと気にかけてますよぅ」
「とりあえず今日はコンシーラーで目立たなくしてあげるよ」

「あざーっす」

この本屋の仕事は大きく分けると販売、買取、陳列、加工の4つだ。その全部をオールマイティにこなす。

「橘君」
「はい? あ、村上さん。例の本ですか?」

村上さんは家のお店の常連さんで夢川学という作家さんの本を集めている。以前、会社に置いてある本を汚してしまい、絶版になっているというその本を探して大慌てでこの本屋に駆け込んできたのが縁で仲良くなったお客さんだ。

俺より5歳も年上だというのにおっちょこちょいというか、天然というかでなんとなく放っておけない。会社の本をうっかり汚したことだって俺がいる1年間に3回もあるのだ。

「ちゃんと取っておきましたよ。村上さんが持ってないやつだといいんですけど」

「いつもありがとう。それでお礼なんだけど」
「気にしなくていいのに。本当に、マジで」

こうして本を取り置くと村上さんは毎回ご飯を奢ってくれる。ご飯を驕るってことの方がお金がかかるから気が引けるが、その度に村上さんは「いいの、いいの」と言って聞いてくれない。

「いいんだ。橘君とご飯に行くのは俺の楽しみでもあるから」
「じゃあ、お礼とかじゃなくて普通に誘ってくださいよ」

「いいの?」
「勿論」
「じゃあ、急で悪いんだけど23日なんてどうかな」

「23日……」
「実はお店を予約してたんだけど振られちゃって。橘君が一緒に行ってくれたら嬉しいなって」

23日か……。バイトは休みだし予定はない。クリスマスまで一週間を切ってはいるものの阿川とクリスマスの話をしたこともない。きっと何か予定があるのだろう。

「いいですよ」
「本当? 良かったー」

村上さんが嬉しそうに顔を綻ばせた時、村上さんの背後に爽やかにほほ笑むイケメンの姿が見えた。

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