イケメンと体が入れ替わってラッキーと思ったらそのイケメンがゲイだった

SAI

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5. とうとう初えっち!!

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 今日は昨日デートしたさやかちゃんともう一度デートだ。阿川の話によると、映画を観てカフェでお茶して帰ったらしい。「当たり障りのないデートをしておきました」とは阿川の言葉だ。

「今日もデートに誘ってくれるなんて嬉しいな」

ふとした瞬間にさやかちゃんのシャンプーの臭いが鼻腔をくすぐってふわっとした気持ちになる。阿川もなんかいい匂いがするけどさやかちゃんもいいんだよなー。ってなんで阿川……。デートの最中だというのに昨日の阿川が脳裏をよぎって、うげーっとなった。

ファストフード店で軽くお茶をして、さやかちゃんが見たいという雑貨屋をめぐった。

「次はどこに行こうか」
「んー、二人きりでゆっくりできるところがいいな」

それってつまりホテルですか!? テンションがグッと上がりかけたところで昨日俺にがっついたイケメンを思い出しテンションをおさえる。がっついちゃダメだ、がっついちゃ。

「じゃあ、カラオケとか?」
「いいねーっ。でもさ、せっかくならカラオケもあってもっと密着できるところがいいな」

こ、これは正しくっ。そう思ったが、ここで「はいはい」となってはいかん。ここは余裕を見せないと。

「カラオケでも密着できると思うけど、さやかちゃんはもっと濃厚な方がいいんだ?」

「いじわる。……こういうのってはしたないって思う?」

思わん、思わん。思いませーんっ!むしろあのさやかちゃんがこんなに積極的に来てくれるとは驚きだ。
……まぁ、阿川になんだけどさ。

さやかちゃんには悪いけど、自分の体に戻った時にこの経験をしっかり活かして素敵な彼女をゲットします! そう心の中で平謝りしながら、俺は欲望のままにホテルに入った。


 と、とうとうこの日が来た。阿川は家で大人しくしていると言っていたから、急に入れ替わるなんてことはない。

「シャワー先に使っていいよ」
「ううん、阿川君が先にして。ちょっとまだ、恥ずかしいから」

あぁんっ、恥ずかしがるさやかちゃん、サイコーっ。俺はクールに微笑むと「じゃ、お先に」と言って風呂場に直行した。

やべぇ、やべぇっ。本当にこの日が来たよ。俺の股間はまさにギンギンのギュンギュンで……。って阿川のデカいな。いや、いい。阿川は俺より身長も高いんだ、チンコが大きくたって何の不思議もない。

「早漏って思われるのは嫌だから一回出しとくか……」

阿川のチンコに性的に触れるのはこれが初めてだ。恐る恐る触れ上下にゆっくりと抜き差しする。うわ、俺、勝手に阿川のチンコ、擦ってるよ。目の前の大きな鏡には風呂の熱でほんのりと上気した阿川の顔。

鏡を見なければ自分の体だと思えるのに、鏡を見てしまうとここにあるのは阿川の体だ。

「……っ」

少しずつ体が高まっていく。上を向いて粗い息を抑えるようにしてゆっくりと吐き出す。どうしても鏡から目が離せなくて、感じているのは自分なのに感じている阿川の顔に股間が震える。そのヤバさが理解できないまま、薄く開いた阿川の唇から見えた舌に欲情した。

「んっ……ふ……んんっ」

ビクビクっと体を震わせ精を放つ。俺……今、阿川で抜いた? いや、違う。断じて阿川で抜いたわけではない。あれは鏡に映った自分が案外エロかっただけで、阿川を意識したわけじゃ……。

あぁっ、もう、早く出よう。良く分からない考えに取りつかれる前にさやかちゃんと濃厚な接触を楽しむのだ。そうすれば今抱えた妙な気持ちも気のせいだったと証明できる。

そうだ、そっと風呂から上がってさやかちゃんを驚かせよう。着崩した姿で突然現れたらさやかちゃんのドキドキも高まるはずだ。


 俺は風呂からそっと上がるとバスローブの胸元を少しだけはだけさせて、髪の毛をサッと拭いて脱衣所を出た。そしてそっとベッドの方を見るとさやかちゃんがベッドの脇にある包をカサっと置いたところだった。

「阿川くん……」

俺を見てポッ顔を赤らめるさやかちゃん。お風呂に入って来るね、と急いで浴室へと消えたさやかちゃんを見て俺の作戦はバッチリだったと確信した。

浴室からシャワーの音が聞こえる。
やべぇ、さっき出したばっかりなのにまた起ちそう。あ、そうだゴムの位置を確認しておかないと。ゴムをつける時にまごつくのはカッコ悪い。

そう思ってベッド脇に置いてあるコンドームを手にした時、俺は気が付いてしまった。ゴムの真ん中に針で刺したような傷がある。そういえばさっき、ここにさやかちゃんが立っていた。

まさか……。いや、でも……。

阿川の言葉が蘇る。
避妊具は自分で用意したものを使ってくださいね。油断しないで。

え……マジかよ。急速に息子が萎えていくのを感じる。こんなんでセックスなんて無理だ。俺は急いで着替えるとホテルの便せんで『急用ができた。ごめん』とだけ書き記してダッシュで逃げた。


 翌朝、大学に行くとさやかちゃんが走ってきた。
「阿川君、あのさ、昨日」
「あぁ、ごめん。本当にごめん。昨日、どうしても行かなきゃいけない用事があって」
「そっか、そうなんだね。連絡も取れなかったから心配した」
「忙しくて。ごめんね」
「……私、今日も時間あるけど」

ひぃっ。
以前は可愛く思えていたさやかちゃんの上目遣いが怖い。

「お、俺、今日も用事があって」
「じゃあ、明後日は?」
「明後日もちょっと……」
「じゃあ、いつならいい?」

ひぃぃぃぃっ。

「阿川。ちょっといいか?」

救いの声に顔を上げるとそこに俺が立っていた。おぉ、助かった俺、イケメンっ。

「圭太さんっ」
「ちょっと手伝って欲しいんだけど」
「今、行きますっ」

俺はさやかちゃんを振り返ることもせずにしっぽを振って阿川について行った。


 二人でさやかちゃんが見えなくなるところまで移動してベンチに座る。

「阿川、助かったよ。マジで助かった」
「なんかありました? いつもは女の子に囲まれて鼻の下伸ばしてるじゃないですか」

「鼻の下って。阿川の顔だぞ?」
「そうですよ。俺の顔なのに鼻の下が伸びてて微妙な気持ちになりながら見てましたよ」

「うぞ……」
「ぷっ、嘘ですよ」

「このっ」
「阿川くーんっ、こんなところにいたんだ」
「あぁ」

見知らぬ一人が話し掛けてくると女子が次々と集まってくる。阿川になった頃はこの現象を面白がっていたけれど、毎回こうでは面倒くさい。

「じゃあ、俺、もう行くから。手伝ってくれてサンキュな」
「あっ、圭太さん待って。ごめん、俺、用事あるから」

女子に謝ると俺は阿川の手を掴んで歩き去った。


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