イケメンと体が入れ替わってラッキーと思ったらそのイケメンがゲイだった

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3. 阿川家

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 この家に帰るのは二回目だ。
「お、圭太君おかえりーっ。武の体、エインジョイしてるかぁーい?」

クルクル回いながら玄関に登場したパンチパーマの男は阿川の父親だ。社交ダンスが趣味らしく、基本的に家の中では踊っている。阿川家に伝わる秘具だけあって皆その存在を知っていて、帰宅した当日に中身が違うことはバレてしまった。

「エンジョイ……」

咄嗟にお尻をさすりながら「これからっすね」と呟くと同時に、視界の隅に長い棒のような影を感じて避けた。避けた場所を通過したのは野球のバットだ。バットは鈍い音を立てて壁に激突して転がった。

あ、あぶねぇ……。

「なかなかやるのぅ。武より反射神経は良いな。良いか、今の様に油断するでないぞ。女は急に武器を持つ」

この目付きの鋭い60代後半の女性が阿川のおばあちゃんだ。隙さえあればこうして攻撃を仕掛けてくる。孫を危険から守りたいという愛情らしいが正直迷惑だ。家では緊張せずに休みたいというものだろう。

「ただいまぁー。あ、圭太さんおかえり」
「おかえり」

今、帰ってきたのは阿川の妹の咲子ちゃんだ。阿川の一歳年下で高校3年生だという。阿川があれだけのイケメンという事は咲子ちゃんも美人さんなわけで、可愛くて美人の咲子ちゃんは俺にとってのオアシスだ。

むしろ、俺と付き合ってくれないかなとすら思う。

「お父さん、今日のご飯は何?」
「今日は咲子の好きなビーフシチューだよ」
「わぁ、嬉しいっ」

ひゅっと飛んできたバットを素手で払いのけるところは流石に阿川家の人間という感じだが、嬉しいと微笑む姿はまさに白百合。

「圭太さん、大丈夫でしたか? 兄、あぁ見えて結構怖い性格をしているので被害が出てないといいけど。圭太さんは真っ直ぐそうだから心配……。何かあったら直ぐに言って下さいね」

「ありがとう。でも俺も男だし大丈夫だよ。ほら、反応の良さとかはおばあちゃんのお墨付きだしね」

まさかケツを掘られたなんて言えるはずもない。ましてや掘られたのは阿川の体ではなく俺の体だ。

「そうですか。でも、本当に遠慮しないで言ってくださいね。図々しくてしたたかな兄なので」

「わかった」

とまぁ、こんな感じだ。
可愛い咲子ちゃんにこうして心配してもらえるのも悪くはない。ここで男らしさを見せつけておけば咲子ちゃんが俺に惚れる可能性というのも0ではないはずだ。

なんたって咲子ちゃんは阿川のお陰でイケメンには免疫がありそうだし、イケメン顔になれない俺のような顔に惹かれる確率は一般的な女子よりは高い、はず!

後方からバサッと聞こえた音に前傾姿勢になると空中を分厚い辞典が横切る。振り返ってフッと笑うと俺は阿川の部屋に入った。


 阿川の部屋は意外にもちゃんと整理整頓されている。壁にいくつかの凹みがあるのにはゾッとするが(きっと阿川のおばあちゃんのせいだろう)、それ以外は几帳面な男の部屋と言えた。昨日は人の部屋の中を散策するのはプライバシーの侵害だと思い、なるべく引き出しなどは開けない様にしたが阿川のせいでケツを掘られた今日の俺は違う。

阿川の弱点を探し出してやる。
咲子ちゃんが言っていたしたたかな兄というのは本当にその通りだろう。阿川の弱点はひとつでも見つけておいた方が今後の為にいいはずだ。

 こうして部屋を漁ること1時間。阿川の秘密(たぶん)は簡単に見つかり、そのバッグの中身を見て俺は恐怖に打ちひしがれていた。

なんだよ、この大量のアダルトグッズ……。

ローターにバイブは勿論のこと、拘束具にチンコに巻きつけるような物、チェーンの先端にクリップがついているもの、とにかく沢山の種類のアダルトグッズが入っていた。

これ、阿川が全部使ってるのか? いや、童貞って言ってたから誰かと使ったってことはないだろうな。じゃあ、自分用か、いや待てよ。

俺はチンコの形をしたバイブを持って動かしてみた。あいつ、自分は突っ込む方だって言ってなかったっけ?ってことは、これ、誰かに突っ込むつもりかよ!!

こ、こえぇええ。
俺、あいつの好みのタイプじゃなくて良かった……。


 

  俺の2度目のピンチは大学終わりに女の子とデートしている時に訪れた。下心満載で映画のチケットを購入し、席に座ってオープニングを観ていたその時、フラッシュのような光とカチンだ。


 またかよ……。
入れ替わった俺が目にしたのはトイレの個室だ。

「終わった?」

外から男の声がする。次にトイレを使いたい人が待っているのだろう。阿川が用を足したかどうかは分からないが少なくとも尿意は無い。

「あぁ、終わった。今出るから」

トイレのドアを開けて「どうぞ」と言うが、男は俺の言葉を無視して肩に手を回してきた。馴れ馴れしい……ってことはコイツもゲイか。俺と同じくらいの身長、黒髪、短髪、髭。この間の青年が中性的で可愛らしい顔をしていたことを思うと、今回の相手は随分とワイルド寄りだ。イケメンだということには変わりないが。

「ちゃんと入れてきたか?」

入れてってなんだ? しょんべんを零さずにちゃんと便器の中に入れたかどうかならそれならば入れた、だ。変な確認をする奴だ。

「あぁ、入れてきた」
「へぇ、じゃあ確認な」

男がそう言ってポケットに手を入れた瞬間、ブブブブブブブとアナルの奥にあり得ない刺激が生まれた。

「あっ、なっ……」
「いい反応っ」

男が俺の耳たぶを軽く噛み「ひっ」と声が漏れる。アナルの刺激が強さを増した瞬間、足がよろけた。

「あっ」
「っと、危ねぇ。くす、耳まで赤くして。お前、本当に可愛いな」

男は俺の顔を覗き込むとそんなおかしなことを言った。

俺が可愛いとか、目が腐ってるんじゃないのか……。それにしても下腹部がヤバイ。

ブブブブブブブと絶えずアナルの奥を刺激され、俺の中心は自由になりたいとジーンズの布を押し上げていた。

阿川の奴、今度は何をしたってんだよ……。

「さぁ、約束通りこのまま一杯飲もうか」
「飲もうって……っ言われても俺……未成年……なんすけど」

刺激を逃がしながら言葉を発するものだからどうしても途切れ途切れになる。そんな俺を面白そうに、そして欲情を孕んだ目で見ているこの男が恐ろしい。

俺もこんな目で女の子たちを見ていたのかな。そりゃあ逃げられるわ。狙われて初めて分かる真実、あぁ。

「オレンジジュースでもいいぜ」


 男に促されて席に座る。奥にあるローターが座った振動で更に奥に押し当てられ、俺は少し腰を浮かすことで何とか耐えた。

どうやらここはバーのようだ。周りに男しかいないことを見るとゲイのお店、なのだろう。

「まぁ、そんな顔するなって。まっとうな勝負だったろ? ジャンケンで負けた方がアナルにローターを入れる。お前が言い出したことだぜ?」

あんの馬鹿っ。

「刺激、足りない?」
「んんっ」

声が出そうになって慌ててオレンジジュースのストローをかじった。店内には音楽が流れているから気づかれることはないかもしれない。でも、こんなところでアナルにローターを入れられて股間を起たせていることがバレたら……。

恥ずかしい……なんだよこれ。

「も……止めて、くれ」
「何を?」


男はわざとらしく首をかしげながら酒らしきものを飲んだ。

「美味しいだろ? 甘く痺れて」
「なっ、何を……っ言って」
「オレンジジュースの話だよ。何の話だと思った?」

「ふぁっ」

声が出そうになる度にストローをかじるから先端がつぶれてボロボロだ。

「さて、次の勝負をしようか」

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